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〈問う 8月総選挙:2〉医療 「いざ病院」行き場なく

2009年8月9日

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 「1月=9万2166円、2月=9万8056円、6月=15万5799円……」

 広島市のパート女性(62)はこの7カ月、入院する元夫(62)の医療費など、病院に払った額を書き留めてきた。

 1月上旬の朝。7年前に離婚した元夫の家に行くと、元夫は倒れていて意識がなかった。119番すると救急車はすぐに来たが、40分間近く動けなかった。救急隊員が少なくとも四つの病院に電話したが「ベッドがあいていない」「対応できる医師がいない」。一度断られた救急病院に隊員が再び電話し、「何とかしてください」。叫ぶように頼むと、引き受けてくれた。

 診断は脳梗塞(こうそく)と腎不全。医師は「今晩がヤマ」と言った。病状はその後、持ち直したが、両足の指が壊死(えし)し、切断手術が必要という。その病院で手術を受けられると思っていた女性に医師は言った。「ここは救急病院なので、長くいることはできません」

 2月上旬、別の病院に移った。だがそこでもじきに、「長くは置いておけない」。

 国は、救急患者が入院した初日や14日以内などに医療機関が得る収入が通常より増えたり、平均在院日数が短い病院の収入が増えたりするよう診療報酬を設定。早く退院してもらい、救急患者の受け入れをスムーズにするとともに医療費の削減を図ってきた。

 女性は、負担が軽いところを、と月額約7万円の特別養護老人ホームに申し込もうとしたが「手がかかる」と門前払いされた。別の特養からは「空きがなく、長く待ちます」という返事だった。

 2カ所目の病院が見つけてくれたのは、県北部にある病院の療養型病床。車で片道1時間以上かかり、自己負担が月額15万円ほどに上がるが、他に選択肢はなかった。5月上旬、三つ目となる病院に移った。男性の年金は月7万4千円。女性は長男(34)と相談し家を売った。

 「いざという時、救急車を受けてくれる病院は見つからず、病院は移らないといけん。だのに行き場は見つからない。子どもに迷惑をかけたくないから、私は、ぽっくり逝きたい」と女性は言う。

    ◇

 広島市安佐南区の自営業、水野澄雄さん(77)は、後期高齢者医療制度に怒っている。07年度までは妻(72)と2人、国民健康保険に加入していた。2人合わせた年額の保険料は約6万円だったのに、75歳で線引きされ、澄雄さんだけが後期高齢者の制度へ移行。年額約10万円を請求された。国保のままの妻には約4万円の請求があり、2人で14万円。以前の倍以上だ。

 夫妻の年金は、月に約20万円。飲食店経営による利益は月数万円程度で、かつかつの生活をしている。今では衣類も買えなくなった。それでも病気になったときに支払う医療費や店の売り上げ減を心配し、毎月約2万円を民間医療保険に充てている。

 「年寄りが病気になり医療費がかさむのは当たり前。なぜ年寄りを差別するのか。医療費削減ありきでなく、どうやって捻出(ねんしゅつ)するのかを考えるべきなのでは」と水野さんは話す。

 (辻外記子)

 <医師不足> 08年に救急搬送された県内の重症患者のうち2.3%が3回以上断られていた。理由の21%は「手術や診察中」。06年末時点の県内の医師数は、04年末から81人減の6740人。2年で広島を含め6県の医師数が減った。県内23市町のうち10市町では、産科医不足などのためお産ができない。国は06年、年間2200億円の社会保障費抑制策を始め、病院が高収入を得る条件となる平均在院日数はさらに短くなる傾向にある。

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