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〈問う 8月総選挙:3〉郵政民営化 「しわ寄せ、みんな田舎」

2009年8月10日

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 庄原市中心部から北東へ約35キロの同市東城町千鳥地区。69世帯175人のうち約半数が65歳以上という中国山地の山あいの集落だ。

 2年前まで酒屋を営んでいた大谷英子さん(77)の家には、地区で唯一の箱形の郵便ポストがかかっている。

 大谷さんは「郵政民営化の前は郵便屋さんに何でも頼めた。通帳とはんこを渡して、いくらおろしてきてと言えば、翌日にお金を持って来てくれた」と話す。車のないお年寄りにとって、郵便配達の職員は頼りになる存在だった。簡易保険の掛け金を渡したり、切手やはがきの代金を渡して購入を頼んだりしていた人も多かった。だが、民営化後は事業ごとに4社に分かれ、郵便配達の職員は、貯金や保険の仕事ができなくなった。

 千鳥地区から一番近い簡易郵便局は、約5キロ離れている。歩いていくには遠すぎる。大谷さんは郵便局に用がある時は、バスで約30分かけ東城町中心部の東城郵便局まで出向く。「片道300円、その上1日4便しかない。ついでに買い物もするが、遠くて不便だ」

●減る簡易郵便局

 鳥取県境に近い庄原市西城町三坂の岡美智子さん(73)は、10年前に横浜市から夫婦で移り住んだ。自宅から約4キロ離れた八鉾(やほこ)郵便局(同市西城町小鳥原〈ひととばら〉)が担当していたこの地区の集配業務が06年10月、小奴可(おぬか)郵便局(同市東城町小奴可)に統合されると、それまで1日2回だった配達が1回に。小包の再配達なども遅れがちになった。

 岡さんは「都会なら銀行も近いし、コンビニでもお金を引き出せる。でもここは郵便局が頼り。郵政民営化といっても、横浜にいたら何も痛みを感じなかったと思う」と話す。筆まめな岡さんは封書やはがきを出すために、近くの三坂簡易郵便局まで毎日のように自転車で出かける。「もし、ここが閉鎖にでもなったら、本当に困る」

 だが、簡易郵便局は、減りつつある。県内で「一時閉鎖」となった簡易局は前回総選挙直後の05年9月末で4局だったが、今年7月末には14局に。再開した局も三つあるが、郵便局関係者らは「再開は難しいのが実情。それどころか、新たに閉鎖を考えている簡易局が、かなりの数に上る」とみる。

●忘れられる原点

 日本郵政は、傘下の「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命」の株式を10年度にも上場し、17年9月までに完全民営化する予定だ。郵便局の多くは収入の6割以上を金融2社からの手数料に頼っている。2社の株式が上場されると、株主の意向によっては、過疎地の郵便局への業務委託が縮小され、手数料収入の減る局が閉鎖に追い込まれる可能性もある。県内の郵便局長の一人は「(元首相の)小泉さんが必ず維持すると言った郵便局のネットワークが、地方から崩れてしまいかねない」と指摘する。

 3年前まで小奴可郵便局長を務めた堀田雅俊さん(69)は「都会の論理だけで利益と効率化を求めると、しわ寄せは、みんな田舎に来る。公平なサービスを提供するという郵便事業の原点が忘れられてしまっている」(長尾大生)

 <郵政民営化> 日本郵政公社が担っていた郵政3事業(郵便・貯金・簡易保険)が民営化され、07年10月に日本郵政グループが発足。政府が全株を保有する持ち株会社の下に、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険、郵便事業、窓口サービスを受託する郵便局会社の4社がある。政府・与党は「民営化後も郵便の全国一律サービスと郵便局網は維持する」としたが、過疎地を中心にサービス低下への不満は強い。民主、社民、国民新の野党3党が共同提出した郵政株式売却凍結法案は参議院で可決されたが、衆議院で昨年12月、自民、公明の与党の反対多数で否決されている。

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