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〈09総選挙〉「切るだけ赤字」 私有林8割、森どう守る

2009年8月10日

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 秩父市中心部から車で約1時間。小鹿野町藤倉の山あいの林道を入っていくとヒノキ林が広がる。県によると、埼玉の3分の1にあたる12万2千ヘクタールが森林だ。うち、秩父市・秩父郡5町村の森林が約7万8千ヘクタールで64%を占める。

 「切る向きが悪い。このまま倒すと向こうの木に引っかかってしまうぞ」

 玉川浩一さん(66)=皆野町=の声が響く。玉川さんは枝打ちなどの作業に携わって40年の秩父広域森林組合指導員で、10代、30代の5人に研修で間伐技術を教えていた。

 5人は林野庁の「緑の雇用担い手対策事業」で雇われた組合の技能職員で、研修では県のヒノキ林(2ヘクタール)に2〜3メートル間隔で並ぶ4400本のうち1300本余りを約2カ月で切る計画だ。

 玉川さんは皆野町で生まれ、中学卒業後、染色会社に就職。木材運搬業を経て、73年ごろ、当時の皆野町森林組合の職員となった。

 時代は高度成長。住宅建設などで全国的に木材需要は高かった。秩父も例外ではなく、数多くの製材所があり、活気に満ちていた。「大宮の問屋に材木を運ぶと、もう大工が待っていた。そのぐらい売れたもんだ。年に1千万円以上の稼ぎがあったこともある」

 ところが、安い輸入材が広がり、国産材の価格は現在、ピークの80年ごろの3分の1程度に下落。最近は、不況による木材需要の低迷も追い打ちをかける。「スギやヒノキなどの人工林は、手入れが欠かせない。でも、最近は荒れた私有林が目立つ」と嘆く。

 県の森林のうち、国や県などが持つ公有林を除いた私有林は8割。「切れば切るだけ赤字」(林業関係者)で、個人などの山林所有者は間伐などに費用がかけられないという。私有林を中心に森をどう守るかは大きな課題だ。

 人手不足も深刻だ。林野庁によると、県内の林業労働者は80年の1161人から05年には268人に減り、65歳以上が約3割。秩父広域森林組合も合併して組合ができた02年に98人いた技能職員は52人に。半数近くが50代以上だ。

 私有林の間伐作業などの請け負いだけではなく、県などの森林関係の予算も減り厳しい状況だった。しかし、「もっと若い担い手を育てなければ」と、08、09年度は「緑の雇用」で10代と30代の計8人を採用した。ただ、緑の雇用は最長で3年。間伐や枝打ちなどの技術を身につけ「一人前になるには最低でも5年はかかる」という。作業を見守りながら「木材の価格が上がり、国産材の利用が進まないと林業の将来は厳しい。でも、技術を受け継ぎ、辞めずに山を守ってほしい」と玉川さん。

 しかし、研修を受ける若手職員の一人、大塚康弘さん(34)は、地球温暖化が進む中で、林業の新たな可能性に目を向ける。「森林が二酸化炭素の吸収源として注目され、木くずなどを燃料にするバイオマスなどが普及してほしい。そうなれば産業として自立し、担い手も育つはずです」(平林大輔)

■主要政党が政権公約などで掲げる林業政策(要約)

 【自民】公共施設・住宅から紙・割りばしまで国産材の利用率50%を目指す。緑の雇用を推進。木材価格の安定化のための制度を導入

 【民主】間伐等の費用を森林所有者に交付する「森林管理・環境保全直接支払制度」を導入。木材自給率50%を目標として設定

 【公明】「木材利用推進法」を制定。木材自給率を12年に25%へ。住宅に一定量の木材を使った場合の税控除導入。緑の雇用で人材育成推進

 【共産】地元産の木材使用への補助、公共施設建設への地元産木材の優先使用などで、林業の活性化を図る

 【社民】森林整備の加速化と緑の担い手育成、森林吸収源の確保、地域材の利用拡大により林業振興、山村の活性化を図る

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