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〈問う 8月総選挙:4〉ETC割引 「政治は地方見てない」

2009年8月11日

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 「車が5台しか待ちよらん。考えられんね」。平日夕方の須波港(三原市須波西町)で8年間、フェリーの乗降客の誘導などをしている野竹弘一さん(68)がぼやいた。同港に発着する三原観光汽船のフェリーは、尾道市瀬戸田町の生口島にある沢港と結ぶ生活航路だが、3月に麻生政権が導入した高速道路の自動料金収受システム(ETC)割引制度の影響で利用者が激減した。

●地元客も陸路に 

 生口島は人口約1万人。平山郁夫美術館、瀬戸田サンセットビーチなどの観光スポットがある。99年、しまなみ海道(西瀬戸自動車道)が開通して以降、利用客は減った。ただ、フェリーは須波港と沢港を約25分と短時間で結ぶことから、何とか営業を続けてきた。

 ところが、3月以降、海道を利用してETC搭載の乗用車で尾道市の本州側から生口島に行く場合、様々な割引が適用されるようになった。通行料は5メートル未満車のフェリー運賃1630円を大きく下回ったため、観光客だけでなく、地元客も多くが陸路に移ってしまった。三原観光汽船によると、フェリーを利用する車両は月約5千台。1年前より約4割、10年前より約7割減った。

 昨年からの燃料費高騰も響き、採算は急速に悪化。「運行すればするほど赤字になる」状態が慢性化し、同社は5月、中国運輸局に11月末での航路廃止を申請した。

 生活航路の危機に、利用者からは存続を求める声が上がる。三原市の造園会社員の男性(56)は「フェリーは生活の足だった。25分で渡ってきたものを、11月以降は車で1時間以上かけて通勤しないといけん」と嘆く。同市の造船会社に勤める瀬戸田町の男性(57)は「車のない人やお年寄りはどうするのか。通勤できんから、仕事を変えざるをえん同僚もいる」と憤った。

 こうした事態に、三原市は港の利用料を減免することを決めている。だが、年間約5千万円に上るとみられる三原観光汽船の赤字には「焼け石に水」。同社はこれまで、度々三原市や関係団体などに追加の支援を求めてきた。山本勝美社長は「経営責任を言われるが、国の政策で追い詰められ、企業努力だけでは正直どうすることもできない。政治は地方のことをまったく見ていない」と話す。

●渋滞回数が増加

 ETC割引は、高速道路の渋滞も深刻化させた。NEXCO西日本によると、今年のゴールデンウイーク(GW)期間中、山陽自動車道の志和IC(東広島市)―広島東IC(広島市)間の1日平均交通量は7万6700台で、昨年より1万台以上増えた。5キロ超の渋滞回数は72回で、昨年より51回増。10キロ超の渋滞は31回増えて41回発生した。

 このため、広島空港(三原市)と広島市中心部を結ぶ空港リムジンバスは、4月29日から5月6日に計183便が運休。利用客をJR山陽線に振り替え、空港に近い白市駅からバス輸送するなどして対応した。

 バス会社の担当者は「例年、事故渋滞で突発的な運休はあったが、今年は激増した。お盆の時期も渋滞が激しそうで、売り上げへの影響が心配だ」と話した。(鬼原民幸)

 <県内の旅客船事情> 中国5県の旅客船業者が加盟する中国旅客船協会連合会(広島市)によると、県内では48業者が四国や瀬戸内海の島々などを結ぶ63航路を運航している。しかし、4月に竹原市と愛媛県今治市を結ぶ中・四国フェリーを運営していた竹原波方間自動車航送船組合が、6月末には呉市と松山市を結んでいた呉・松山フェリー会社が廃止。ほとんどの航路で車の利用が5割、人が3割程度減少しているといい、多額の負債を抱える船会社もあるという。同連合会の森藤幹二事務局長は「瀬戸内海から旅客船が無くなる可能性がある」と危機感を抱く。

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