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〈いま、何が 09奈良・衆院選:2〉建設業 公共事業減で亀裂

2009年8月11日

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 「我田引鉄(道)」。政権党が新幹線や高速道路の誘致で票を得る手法はかつて、「我田引水」をもじってそう呼ばれた。

 6月27日の自民党県連決起大会。4区の自民前職、田野瀬良太郎氏(65)は、約1200人を前に力説した。

 「民主党は道路は無駄だと言っています。京奈和道も民主党が政権につくとおそらく止まってしまう。その辺もよくお考えください」

 同じ4区の民主新顔、大西孝典氏(53)は今月5日、連合奈良の決起大会で反論した。「民主党は必要な道路は造る。奈良の道路改修率は43位で過去十数年変わらない。なぜか。田中角栄の新潟、竹下登の島根に予算が流れてるから。それを見直すんです」

    ■    ■

 「今時、脅しにだまされる業者はいない。田中角栄や竹下登がいた時代とは違う」。県内のあるベテランの自民県議が漏らす。「角栄がいた」70、80年代、県内業者は自民有力者を核に談合組織をつくり、公共事業を分配し、選挙では組織的な運動で自民候補のために働いた、という。

 「業界は自民の護送船団だった」。当時をそう表現するのは、00年まで自民党支部長を18年間務め、奥野誠亮元法相を初当選の63年からずっと応援していた建設会社会長(76)だ。

 会長は今、自民党籍を捨て、民主候補の支援に回る。

 なぜか。会長によると「誠亮氏は市町村にどんどん予算を引っ張ってきた。おかげで豪華なハコモノが次々にできた。いけいけの時代だった」。しかし「そのハコモノがもとで今、市町村が財政難に陥っている」。業者を潤した公共事業が、今や住民の首を絞めている、というのだ。会長の会社は「公共事業に依存していては危ない」と、65%だった公共事業依存率を15%に減らしたおかげで、同業他社が苦境に陥る中、好調を維持した。

 確かに、公共事業予算は減り続けている。00年度に1613億円あった県の普通建設事業費は、08年度727億円まで激減した。

 だが、それでも奈良は、自民党が最近まで強かった。00年総選挙では4議席を独占。03年で2議席に減らしたが、05年は3議席を回復した。

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 元衆院議員の斉藤淳・米エール大准教授(政治学)は近く出版予定の論文で、過去の自民党の得票率とインフラ整備との相関関係を分析し、「新幹線、高速道路の整備が遅れた地域ほど得票率が高い」と指摘。顕著な例として宮崎、和歌山、奈良の3県を挙げる。確かに奈良に新幹線はなく、自動車専用道路の総延長は全国最低レベルだ。

 一方、インフラ先進地で自民党が退潮傾向にあるのは「着工前には整備を遅らせる、中止するという脅しが有効だが、完成すれば、後援会はあえて選挙運動に参加する動機を失う」からだという。

 では、整備の遅れた県南部では、今も「我田引道」が有効なのだろうか?

 論文はこう指摘する。「次の選挙で自民党の勝利が確かだと、インフラ投資は有権者を引きつけるが、不確かだとその力は低下する。整備が遅れた地域でも、政権交代の可能性にかけて有権者が自民党を離れる余地が出る」

 公共事業の大幅減という「構造変化」だけでなく、「民主党が勝つのでは」という漠然とした「風」もまた、建設業界という厚い自民支持基盤の亀裂を広げる要因なのかもしれない。

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