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〈いま、何が 09奈良・衆院選:4〉郵便局 民営化で大樹転換

2009年8月14日

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 旧特定郵便局の御杖郵便局(御杖村)。犯罪防止のため6台の監視カメラが職員の作業の手元や、金庫をにらんでいる。1日15人ほどのお客さんしか来ないのに、読むべき業務マニュアルは6万ページに及ぶ。904世帯しかない村なので、局員は村人全員の顔を知っている。なのに、払い戻しや貯金のたびに健康保険証で本人確認しなければならない。

 07年10月の郵政民営化以降、「手数料を取らないならやめろ」といわれ、窓口でのゴミ袋や村営バス回数券の販売をやめた。道路損傷の情報提供も、局で発案し好評だった手作りの「木簡はがき」販売も、村当局との防災協定までもいずれも中止した。理由は「もうからないから――」。

 中嶌吉範局長(63)は「民営化後、局長の自由裁量は一切なく、監視強化とやってはいけないことばかり。サービスの質が落ち、局内の活気もなくなった」とため息をつく。「しんどすぎて、もう続けられない」。このまま状況が変わらなければ、来年3月で局長をやめる覚悟だ。

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 明治初期、郵便局網を全国展開するため地方の名士らに自宅や土地を提供してもらい始まった特定郵便局。その局長やOBからなる政治団体「大樹」(現・郵政政策研究会)は、長らく自民党の「集票マシン」といわれてきた。70年代、元首相の田中角栄氏(故人)が全国に張り巡らせた特定局は、津々浦々から集めた郵便貯金で土建政治を、票で田中派支配を支えたとされる。

 80年の参院選全国区(当時)で、全国特定郵便局長会が応援した元郵政事務次官は103万票を獲得した。07年参院比例で個人票トップだった公明候補が102万票だったことをみても、当時の局長会の実力がうかがえる。

 御杖村に郵便局はただひとつ。だから「村の郵政票はそのまま御杖局の票。つまり私が集めた票だ」と中嶌局長は胸を張る。たとえば01年の参院選比例区で47万票を集めた自民郵政候補は、村で122票を得た。このすべてが御杖局の票だという。局長会はいつも選挙後、郵便局ごとの得票数を1票単位まで集計してきた。それによると「このときの1郵便局平均獲得数32.6票。御杖局の得票122票は、県内郵便局トップ、近畿で2位」の成績だった。

 もちろん、苦労は多い。年賀状、暑中見舞いのはがきをこまめに送り、普段のつきあいを大切にする。何より「局長」は地元の名士。村人の信頼は厚い。それでも民営化騒動の影響で、集票力に陰りも出ている。07年の参院比例区では支持した国民新党の村内票は66票にとどまった。今回は比例区で国民新党、選挙区で民主候補を応援するが、「それぞれ120票は取りたい」。

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 「郵便局の存亡がかかった一戦。政権交代できなければ、終わりだ」

 次の総選挙をそう位置づける郵政政策研究会には、悲壮感すら漂う。会員約2500人という県内では、2、3、4区で民主候補を支援する。1区だけは、「郵政造反組」への義理から自民元職の推薦を決めたが、組織内には異論も出てきている。

 郵政研幹部は「これまでずっと自民党一本で応援してきたのに小泉さんと竹中(平蔵)さんにいっぺんに悪者にされた」と振り返る。かつて「自民党」に抱いた郵政一家の「情熱」は、根深い不信感に取って代わっている。

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