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〈いま、何が 09奈良・衆院選:5〉医師会 「小泉改革」で亀裂

2009年8月15日

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 50票が、奈良の医者の往診かばんに詰まっている――。

 県内の田園地帯。水田や農家に囲まれた病院で30年以上、開業医を続けるベテラン医師は言った。

 かつて「200票詰まっている」と、武見太郎・日本医師会長(故人)は豪語したというが、「そこまでは、いかないけどね」と医師は笑う。

 政治運動の場は、診察室。選挙ともなると自民候補のポスターを張り、診察に来た顔見知りの患者さん一人一人に、求めた。

 「この人を応援してるんで、あんたも応援したって」

 そういって、自民候補の後援会を紹介するはがきを渡し、その場で後援会に入ってもらうこともあった。断られることはまずない。

 「医師と患者は、信頼関係があるからね」

 自民党の強力な集票マシンだった、政治団体「日本医師連盟」。その下に位置する「県医師連盟」もまた、自民を応援してきた。

 県医師会の会員は、開業医を中心に約2千人。そのうちとりわけ熱心な約600人が県医師連盟に入る。

 選挙ともなると、自分が掛かり付け医を務める患者の名簿集めを競い、1人で千人分集める医師もいた。医師の名簿ほど候補者の陣営にとってありがたいものはない。名簿を元に電話をかけ、「○○先生(医師)の紹介で――」と告げると、効果は絶大だ。

 医師会が与党を応援するのは、発言力を維持するためだ。診療報酬引き上げ要求などで、実力をいかんなく発揮した。「お世話」になるのは政治的要求だけではない。「当時は自民にいた国会議員に病院用地を格安で用意すると言われた。その分、お礼に100枚や200枚じゃきかない(後援依頼の)はがきを書いた」(県内私立病院関係者)。

   ■   ■

 そんな県医師会の集票力も、最近は衰えが著しい。

 日本医師会が推す自民の参院選候補。参院選に全国区があった30年ほど前、県内得票は1万3千票に達したこともあった。07年の参院選比例区では、制度が変わったとはいえ、わずか294票だった。

 きっかけは、小泉政権が示した「骨太の方針」だ。「社会保障費の伸びを年2200億円ずつ抑制」に「後期高齢者医療制度の導入」。医師会が反発すると、改革に刃向かう「抵抗勢力」といわれた。

 「50票」を持つベテラン医師は今、診察室に誰のポスターも張っていない。

 「自民党は医療に市場原理主義を持ち込み、金持ちしか医療を受けられなくし、医師会は悪者にされた。民主党を信頼してはいないが、一度、政権は変えた方がいい」

 ただ、若手の「医師会離れ」も進んでいる。

 40代の開業医は冷ややかに言った。「医師会は『国民の健康』を盾に政府の首根っこをつかみ、うまみのある制度にしがみつく恐ろしい団体。若手は政治活動をする暇もない」

   ■   ■

 「医療界は社会保障費の引き下げで風前のともしび。それでも日本医師会は『自民党だ』と言う。おかしい」

 塩見俊次・県医師会長は、2月の民主党県連大会(奈良市)で、約400人の同党員らを前にあいさつした。県医師会長が、民主の大会に出るのは前代未聞。民主県連幹部は「自民の支持基盤にくさびを打ち込んだ」と喜んだ。

 期待通り、県医師連盟は今月11日、初めて1、2区で民主候補の推薦を決めた。1、4区では自民候補も推すが、2、3区は見送った。

 =おわり

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