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〈09総選挙@ふくしま マニフェストの現場から:1〉雇用 人員削減、暮らし脅かす

2009年8月20日

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 「最大で従業員600人を削減」。会津若松市の半導体メーカーに勤める30代の女性は6月下旬、朝食を用意していた時にふと目にした新聞の見出しに、手が凍りついた。

 勤め先の「スパンション・ジャパン」は、2月に会社更生法の適用を申請したばかり。人件費を減らすために勤務時間を抑えていたため、給与は前年から激減。それでも、「雇用は守る」と聞いていた。600人ならば、2人に1人が失業する計算だ。出勤すると、労働組合に報道通りの内容を伝えられた。「どうしよう……」。足元が崩れるような感覚に襲われた。

 約20年前に富士通に入社し、スパンション社の前身となった子会社に移った。社内結婚した夫は、今も富士通の市内の工場に勤める。半導体城下町と言われる町に暮らし、当たり前のように続けた共働き。ただ、人員整理の対象になれば9月に職を失う。

 夫の勤め先でもライン削減計画がある。今回は対象から外れたようだが、いつまで安心して働けるのか。中学生から保育園児までの子と、家のローンも抱えている。「自分や夫の仕事がなくなるなんて、想像もしなかった」。

    ◇   ◇    

 危機感は、行政も同じだ。

 会津若松市のある幹部は、6月に訪れた東北経済産業局の職員の言葉が忘れられない。市長との懇談の席上、半導体産業は国際競争にすでに敗れ、市としても次の産業に転換を図らなければならないと通告されたのだ。

 市は半導体産業を誘致し、工場団地も造って恩恵を40年以上受けてきた。今や、市の製造品出荷額の4割、従業員数の5割超を占める。しかし、昨秋以降の世界的な景気悪化が、市の屋台骨を支える産業を直撃。産業政策が問い直され、税収減などで共倒れの恐れすらある。懇談に同席した関係者からは「いわきの炭鉱閉山にあたる大変な危機。少しでもかじ取りを誤れば、(北海道の)夕張のようになる」との声すらあがる。

    ◇   ◇    

 会津地方では昨年末から企業の雇用調整が本格化し、当初は非正社員から始まった人員削減は、一家の大黒柱の正社員にまで広がってきた。会津若松公共職業安定所によると、会津地方の08年度の解雇などの人員整理数は1567人で、07年度の3倍超。今年度は9月までの半年間で前年度に匹敵し、その多くが正社員とみられる。

 スパンション社に勤める30代の男性社員は、リストラ対象になれば、会津を去る覚悟だ。実家には祖母、母、妹が残る。母と妹はJR駅前の大型スーパー「会津サティ」に勤めていたが、6月末の閉店に伴って職を失ったばかり。独身の自分が条件のいい都市部に出て、家計を支えるしかないとの思いからだ。

 男性の目には、ふるさと会津がもう沈みかけて見える。「田舎には家や畑、人間関係があり、都会みたいにすぐホームレスがあふれ出ない。でも、近いうちに支えきれなくなる。生まれた土地に住んで働いて、時にはおいしいものでも買うことが、こんなに難しいなんて」

 (足立朋子)

    ◇

 各党が政権公約(マニフェスト)を出し合い、政策論争を繰り広げる選挙戦。主な政策テーマについて、有権者はどんな現実に直面し、何を感じているのか。県内の現場から報告する。

<雇用政策> 規制緩和に伴って身分が不安定な非正社員が増えた。派遣労働規制の強化の是非、最低賃金引き上げ、雇用の安全網の整備、職業訓練のあり方などが争点となっている。正社員も含めた新たな雇用をつくる成長戦略や、地域の特性を生かした産業政策なども各党が訴えている。

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