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〈09総選挙〉公立病院もう限界 どうする医療、主な党の政策

2009年8月21日

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 東松山市内の飲食店で昨年7月、ある政党支部の会合が開かれた。市内の男性(83)も出席していた。夜7時ごろ、ベルトをきつめに締め、監査報告を聞いていたときのことだ。尿意を我慢していたら、急に息が苦しくなった。

 心臓病を抱えていた。救急車を呼び、呼吸困難になった男性と、妻(75)も乗り込んだ。しかし、飲食店から約4キロの東松山市立市民病院は診療時間外の急患を受け付けていなかった。熊谷市南部の病院も即応できなかった。

 さらに二つの病院に断られ、苦しむ夫の足をさすりながら妻は「もう駄目か」と不安を募らせた。間もなく、川越市の埼玉医科大総合医療センターで受け入れられた。

 東松山市立市民病院は07年12月以降、市と比企郡の5病院による時間外2次救急医療の輪番から離脱した。理由は医師不足。04年度から導入された臨床研修制度が一因とみられる。制度導入前の03年4月には31人いた常勤医が今は14人とほぼ半減したという。

 患者の体全体を診る力が弱くなっているとの指摘があり導入されたが、都市部の民間病院に研修先の人気が集中。大学病院が若手医師を各病院に出す余裕を失い地域の医師不足を招いたとの批判がある。

 市民病院では、医師不足から患者が減り、経営も悪化したという。08年度に市一般会計から過去最高の約8億7千万円を繰り入れた。

 総務省が07年12月に作った公立病院改革の指針は(1)病床数と経費の削減(2)近隣病院とのネットワーク化(3)民間譲渡など経営形態見直しの検討となっている。市は3月、当面、改革を(1)に限った。常勤医数の計画は「10、11年度は15人」。時間外の2次救急再開には、内科の常勤医数を現在の4人から8人に増やす必要があるが、メドは立っていない。

    ◆   ◆

 飯能市の山あいにある飯能市立病院も医師不足は深刻だ。5人いた常勤医が05年に2人に減り、外科は休診になった。今年度の勤務医はとうとう院長1人に。診療科は内科だけとなった。

 非常勤医8人と共にやり繰りするが「非常勤の医師が来られない日もあり、別の医師を探さなければならない」と須田恵司事務長。

 市は毎年、一般会計から約2億円を病院事業会計に繰り出している。赤字に悩む市は「自治体による直営はもはや無理」と判断。総務省の指針に応じて経営形態の見直しに着手した。経営を民間に委託する指定管理者制度の導入を目指し、6月、地元の医療法人との協議を始めた。まとまれば、県内の自治体病院で初のケースになる。

 市は委託に伴い、病床を50から19に減らし、残りを併設する老人保健施設に活用する縮小案を掲げる。

    ◆   ◆

 志木市立市民病院は、来年度からの小児救急に頭を悩ませている。というのも県南西部と隣接する東京都清瀬市の都立清瀬小児病院が来年3月に同府中市へ移転するため、小児病院を利用していた所沢、新座両市などの患者が来ると予想されるからだ。

 志木市立市民病院は06年度末に常勤医が8人に減ったが、素早い対応で今は14人に回復。小児科は常勤医5人と非常勤医に加え、朝霞地区医師会の協力も得て救急医療の24時間体制を守ってきた。清瀬方面からの患者の流入に「対応を間違うと小児救急が崩壊してしまう」と危機感を募らせる。

 志木市は、救急医療の充実や医師確保などのために国が今年度補正予算で3100億円を充てた「地域医療再生基金」の同市民病院への適用を県に打診しているが、見通しは不透明という。

 長沼明市長は「自治体病院はどこも経営環境が厳しく、一般会計からの繰り入れは市の重荷だ。自治体病院がもたなくなっていることから、地域医療崩壊の流れが生まれている」といい、国や県が対策を講じるよう要望するという。(村野英一、中野龍三)

◆主要政党が掲げる医療に関する主な政策

 【自民党】

 救急医療、産科、小児科、へき地医療の担い手の勤務医を確保。診療報酬は10年度プラス改定する。

 【民主党】

 医師や看護師らの増員に努める医療機関の診療報酬(入院)を増額。医師養成数を1.5倍にする。

 【公明党】

 医療従事者の処遇を改善。研修体制の見直しと医師派遣システムの強化で医師不足地域を解消。

 【共産党】

 医学部入学定員を1.5倍に。看護師の増員と労働条件の改善で、看護師200万人体制を確立。

 【社民党】

 診療報酬は人的配置や技術などで引き上げ。人口千人当たりの医師数を2.1人から3.1人へ。

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