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〈09総選挙@ふくしま マニフェストの現場から:3〉農業 減反政策に不公平感

2009年8月22日

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 静かな田園地帯が広がる白河市の東端、旧表郷村。一面の稲田に、まだら模様のように別の植物が育っている。滝田国男さん(52)は1メートルほどに青々と育った立派な株を前に、満足げだ。「大豆は湿気に弱いのに、元は水田でしょう。明渠(排水路)を作ったらうまく行ったんです」

 首都圏に近く農協以外の集荷業者の出入りが多い県中・県南地区は、県内でもとりわけ減反率が低い。県南では昨年、鮫川村を除く8市町村すべてで減反が未達成だった。

 滝田さんが住む深渡戸地区が大豆を作り始めたのは9年前。米価下落が続き、国が転作を進めていた。大豆栽培のモデル地域に、と役場にとりまとめ役を頼まれたが、反発は大きかった。

 コメなら10アールあたり12万円ほどになる売り上げが、大豆ではわずか4万5千円。だが国や県からの転作奨励金が7万2千円出た。収益は変わらないと説得を続け、10軒が立ち上がった。

 いまはメンバーの水田18ヘクタールのうち約4割が大豆畑だ。国の経営安定化制度に加入できるため米価下落時の補填(ほてん)がある。一昨年は1俵あたり1600円が支払われた。

 だが滝田さんには不満もある。コメが余っているのに自由に作る人との不公平感だ。国や県からの交付金も10アールで5万5千円に減った。一方で、新たに減反をする農家には今年度、国からだけで10アール8万円が交付される。

 「まじめにやっている人が相応の利益を得られない政策は間違っている。国はもっと関与を強めるべきだ」

 国の制度に加入する農家による大豆の作付面積は県内では1147ヘクタールで、宮城県のわずか10分の1。コメの過剰作付けは1万2千ヘクタール余り(昨年)で全国トップだ。売れるコメを作ろうと、商魂たくましい農家の多さを物語る。

    ◇    ◇

 須賀川市の稲田地区。15度に保たれた倉庫の中では、昨秋とれたコメが天井近くまで積み上がっていた。

 「買い手はすべて決まっています。減反をしていたら、お客さんの注文に応えられませんよ」。農業生産法人「稲田アグリサービス」の伊藤俊彦社長(51)に迷いはない。農家の経営を圧迫する高価な農業機械の共同利用を目指し、15年ほど前に法人を立ち上げた。

 70件の農家から機械作業を受託。一部の人に委託して賃金を支払う。コメはすべて受注生産で、大手通販会社などに販売。田んぼ一枚ごとにコメの買い取り価格は異なり、農家の研究意欲も高い。

 機械の所有負担から解放された農家は、余力でキュウリなどを大規模に栽培、コメに頼らない安定した経営を実現している。年収2、3千万円の世帯も珍しくない。

 30代で農協を退職した経歴を持つ伊藤さんは、作り手の意欲をそぐ減反政策には反対だ。「売れないものを作ったらつぶれるのは当たり前。農家自身も経営を真剣に考えるべきなんです」

 減反に協力してきた農家とそうでない農家。双方の思いは交わらない。(田玉恵美)

 <農業政策> 消費の低迷で米価は下落傾向にある。政府は減反でコメの供給量を減らし、下支えしようとするが歯止めになっていない。公的支援を大規模農家に集中させるのか、全販売農家に広げるか、農家の所得拡大の手法が争点の一つ。減反見直しには自民党農林族の反発が強い。

■福島のコメづくりの特徴

                 福島県    東北5県平均      全国平均

水田の転作率(07年)   22.85%    34.58%    35.30%

国からの減反交付金額   2億551万円 12億6999万円 31億4527万円

      (07年)

コメ価格センターの登録業者数     8       0.8       0.7

      (09年)

 (水田の転作率は、田の耕地面積のうち、主食用の米を作らなかった面積の割合。コメ価格センターは公設のコメ入札市場。全農を除く売り手業者数を載せた。)

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