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〈選択のとき 09総選挙〉争点を歩く:2 農業 価格低迷、枯れる担い手

2009年8月23日

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 茶畑の村を不安が覆う。

 滋賀県境に近い南山城村童仙房(どうせんぼう)。標高約500メートルの山あいの斜面に、茶畑や水田が広がる。7月に収穫した2番茶の出来はまずまずだったが、農業久保弘信さん(74)の顔色はさえない。

 「茶の値段は下がるばかり。いつまで茶畑を維持できるか」

 国内随一のブランドを誇る宇治茶もペットボトルの緑茶人気が一段落すると、価格が低迷。今年は1番茶で前年比1割、2番茶は同2割も値を下げた。半面、茶葉の乾燥などに使う重油は高騰。肥料や農薬も5割ほど上がった。

 数年前まで150アールあった茶畑は90アールに。妻(70)と2人でこなす農作業の負担は大きく、来年はさらに15〜20アールほど減らすつもりだ。

 茶とともに作る米やシイタケの価格も下がり続けている。近年増えたシカの食害を防ぐため、水田の周りに電気柵(さく)を設置するだけで10万円以上かかるなど、持ち出しも多い。「米は作るだけ赤字で、買った方がまし。それでも、田畑を草むらにはしたくないから……」

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 価格競争にさらされる農家に、後継者難が追い打ちをかける。

 童仙房の茶農家はいま十数戸。約20年前は2倍ほどあったが、後継ぎがなく廃業する農家が相次いだという。2年前、農作業を手伝っていた久保さんの長男が病気で急死。「わが家も継ぐもんがおらんから、わしの代で終わりだ」と寂しげに語る。

 約140年前から営々と守られてきた集落の農地は次々と耕作が放棄され、雑草や木が生い茂る場所が増え続けている。

 南山城村によると、村内の農地面積(農用地区域)は約400ヘクタール。昨年度の調査では、うち18%、72ヘクタールが耕作放棄地となっていた。府内全体の約3.5%に比べ、極めて高い。府内でほかに耕作放棄地が多いのは、福知山市や宮津市の山間部などだ。

 国はこれまで、耕作面積を増やせる意欲的な農家を「中核的な担い手」と位置づける一方、米価の下落を食い止めようと減反政策を続けてきた。しかし、耕作放棄地の分布図からは、高齢・過疎化が進む中山間地域で、農政の恩恵を受けられないまま「農地の荒廃」が進む実態が浮かび上がる。

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 今回の総選挙で、民主党は07年参院選に続き、農家への戸別所得補償をマニフェストに盛り込んだ。自民党も小規模農家の支援策や耕作放棄地の利用促進に対する助成拡大を打ち出す。

 しかし、童仙房区長の西村秀俊さん(56)は、各党の本気度をいぶかしむ。「将来にわたる財源は十分なのか。もはや農業では食っていけない現実がある。その悩みに応えてくれるのか」

 童仙房に住む約230人のうち、3人に1人は65歳以上。地区の小学校は3年前に廃校された。

 「これで茶(の栽培)がだめになったら、村は消えてしまう」。久保さんはこれまでの政治に不満を感じつつ、政権交代にも期待はしていないという。

 青々とした稲が広がる田んぼを前につぶやいた。

 「ここは米も野菜もおいしいものができるのに。政治家なんて結局、外国に車を売るような商売が大事で、百姓なんかどうでもいいと思っているんやないか……」(西江拓矢)

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