朝日新聞社「吉田調書」報道、PRCが見解
報道の原点に立ち返ります

取締役編集担当 西村陽一

 報道と人権委員会(PRC)から「読者の視点への想像力と、公正で正確な報道を目指す姿勢に欠ける点があった」と、報道機関の基本にかかわる厳しいご指摘を受けました。重大な誤りを引き起こした責任を痛感しています。朝日新聞はこの「見解」を真摯(しんし)に受け止めるとともに、東京電力福島第一原子力発電所の方々をはじめ、みなさまに改めて深くおわび申し上げます。

 調査報道として取り組んだ「吉田調書」報道の主眼は、原発の重大事故への対処がいかに難しいかを伝えることにありました。しかし、その最初の記事は「所長命令に違反して所員の9割が撤退した」ことを根幹としてしまったために国内外に誤った評価を広めてしまいました。

 正確で公正な記事は報道の生命線です。誤りを誤りと認めることなくして新たな出発はできません。9月11日に記事を取り消し、本日PRC見解の全文を掲載するのもこうした考えからです。

 事実と謙虚に向き合い、一つ一つの事実を積み上げることで真実に肉薄する。事実と論評を分け、読者の方々と取材を受ける方々がどう思うのかという想像力を働かせる。私たちはいま、こうした取材と報道の原点に再び立ち返り、毎日の記事をお届けすることに努めているところです。

 この記事をめぐっては、見出しや内容に社内から多くの疑義が出されたにもかかわらず、修正されなかったという問題点が指摘されました。情報共有の不備はあってはならないことです。社内の様々な声を編集現場で生かせるような相互批判とチェックを徹底します。

 PRCはまた、過信があったことや謙虚さを欠いていたこと、社外の方々の意見や批判、疑問を顧みようとしなかった体質、事後対応における上層部の危機管理意識の欠如についても指摘しています。

 私たちは読者のみなさまとの対話集会などを始めています。これから出される慰安婦報道や池上彰氏のコラム掲載見合わせなどをめぐる第三者委員会の検証結果も踏まえて、社外の方々の声に耳をすまし、それを新聞づくりに生かす仕組みを作りつつ、朝日新聞の再生プランを早急にまとめたいと思います。

 PRCからは、調書を入手し政府に公開を迫ったことや事故への対処に課題があることを明らかにしたことについては評価をいただきました。それとともに、調査報道について「より組織的に展開する」方向でなされるべきだとの提言もいただきました。隠されている事実を当局の発表に頼らずに独自の取材で掘り起こす調査報道はジャーナリズムの本質的な役割であり、より強化していく決意です。

 朝日新聞に対するみなさまの信頼を得られなければ、調査報道は成り立ちません。全社員が全力で信頼回復に努めることをお誓いいたします。