重く受け止め、公正な報道徹底 朝日新聞社社長・渡辺雅隆

 第三者委員会から本社の慰安婦報道に関する報告書を受け取りました。客観的な検証作業をもとに、朝日新聞社が抱えるさまざまな問題点を厳しく指摘していただいたものと、重く受け止めております。

 慰安婦報道をめぐる一連の対応では、みなさまの信頼を損ねてしまっただけでなく、新聞報道全体への信認も傷つけてしまいました。改めて深くおわび申し上げます。報道機関として、あってはならない事態を招いたことは痛恨の極みです。重大な危機にあることを自覚し、朝日新聞社を根底からつくりかえる覚悟で改革を進めることを約束いたします。

 問題は、はっきりしています。

 戦争中に済州島で朝鮮人慰安婦を強制連行したとする故吉田清治氏の証言を繰り返し取り上げ、証言が虚偽であるとの疑いが強くなったあとも取り消しませんでした。担当記者らの思い込みが強く、裏付け取材がおろそかになっていました。誤報を長年放置したのは、批判に正面から向き合わなかった結果であり、謙虚さに欠けていたと思います。何よりも事実を記録するという責務に忠実とは言えません。

 経営陣の責任は重大です。8月の慰安婦報道をめぐる検証記事では、出稿を担う編集部門の紙面作りに経営陣が危機管理案件として関与しながら、吉田氏の証言に関する記事を取り消したのに謝罪しないという誤った判断をしました。「過ちがあったら謝罪もするべきではないか」と指摘した池上彰氏のコラム「新聞ななめ読み」の掲載見送りも、「謝罪しない」という方針にこだわった当時の経営トップの判断の誤りでした。

 報告書では「編集(部門の紙面づくり)に経営が介入することは、最小限に、しかも限定的であるべきだ」と指摘されました。編集へのゆきすぎた関与は、会社の事情を優先する内向きの体質が招いた結果で、読者に公正で正確な記事を届けるという大原則が二の次になっていました。

 私は、こうした「体質」を一掃し、私たちの意識を変える改革を進めます。みなさまの声に謙虚に耳を傾け、多様な意見を紙面に反映していきます。

 公正で正確な報道を徹底するために、紙面づくりやチェック体制を見直すとともに、経営と編集の関係を明確にし、透明性を高める仕組みを再構築いたします。チェック体制の仕組みには、社外の人材を招くことも考えたいと思います。

 報告書を受け取ったばかりのため、少し時間をかけて検討しなければならない課題もあります。朝日新聞社としての見解と対応策をまとめたうえで、26日に記者会見を開いて説明します。対策を早急に実行し、みなさまからの信頼を取り戻せるよう全力を尽くします。

(朝日新聞 2014年12月23日 朝刊1ページ 東京本社)