「信頼回復と再生のための委員会」
第5回会合 主なやりとり

日時  2014年12月8日(月) 12:00~14:30
出席者 <社外委員>   江川紹子さん、国広正さん、志賀俊之さん
    <社内委員>   飯田真也委員長、西村陽一委員長代理、藤井龍也、高田覚
    <オブザーバー> 五味祐子さん、渡辺雅隆、後藤尚雄、長典俊、池内清(以下、敬称略)


【司会】 第5回会合を開催します。前回話題に出た、イギリスにおける紙面サイズの変更について。

【西村】 前回の議論で古市さんが「日本の新聞はどうしていつまでもこのサイズのままなのか」と言われたことを受けて、江川さんから「イギリスではサイズを変えている、その結果を教えてほしい」というリクエストがありましたので、報告します。ご存知のように、タブロイド版に切り替えた新聞はインディペンデント。その後、タイムズが追随しました。デジタルの世界を席巻しているガーディアンは、タブロイドと一般紙の中間サイズ。テレグラフ、サンデー・タイムズ、フィナンシャル・タイムズは従来のままです。紙のサイズを変えたことの効果を知るうえで一番参考になるのは、インディペンデント。当初、部数の激減を止めたという趣旨の報道がありましたが、それは最初の数年だけで、現在の部数は6万部と低迷しております。長期低落傾向に歯止めをかけられなかったというのが結論でしょう。なぜタブロイドに変更したかということですが、古市さんはこの委員会で何度も「紙の新聞って一体どこで読むのですか」と言っておられた。「電車の中でしょうか、車の中でしょうか、どこでしょうか」と。イギリスの場合は、通勤電車の中で読みやすいことを理由にタブロイドに変えました。理由がいくつかあります。ロンドンの場合は地下鉄構内や車内で携帯電話が通じないこともあって、新聞を読む人が日本よりも結構多いです。ただこれは、前回の委員会でもご説明しましたが、読まれているのは圧倒的に無料紙、フリーペーパーです。一般紙を読む人を見かけることはめったにありません。タブロイドの無料紙が非常に多いという中で、タブロイドサイズにして切り込みをかけたのがインディペンデントの実験です。もう一つ、これも前回、江川さんの質問にお答えさせていただいたが、もともと一般紙は、イギリスの場合、タブロイドに比べると著しく部数が少ないのです。最新の数字ではないかもしれませんが、一般紙の場合、最大のテレグラフで50万部強、タイムズで40万部弱、ガーディアンで約20万部、インディペンデントが約6万部。一方で、ザ・サンやデイリー・メールなどのタブロイドは100万、200万という部数規模なので全く違います。ただガーディアンはデジタルにものすごく力を入れています。英語のニュースサイトではニューヨーク・タイムズと並んで世界に非常に大きな市場を持っています。結論を申し上げると、一番多い部数のテレグラフが従来と同じサイズであるということ、ビジネスモデルとして最も成功しているフィナンシャル・タイムズという経済専門紙は、デジタル版にも非常に力を入れている新聞ですが、これも従来のサイズであること、タブロイド版の先陣を切ったインディペンデントは低迷していることから、日英の比較は簡単にはできませんが、英国の場合タブロイド移行が新聞生き残りの鍵とはいえないようです。前回江川さんに申し上げたのは、私たちも日曜版のGLOBEはタブロイド版移行に踏み切って若い世代にも浸透しており、タブロイド効果も多少はあるのかなと思っておりますが、印刷工程の問題で全体を切り替えることは難しいという制約条件があって、現在の状況になっているということです。

【江川】 ありがとうございました。つまり、最後におっしゃった印刷工程の問題ということで、駅・コンビニで売っているものだけをタブロイドにするということはお金もかかるし、大変だということだろうか。

【藤井】 新しい新聞を一つ作るようなことなので、それは大変なことです。もう一つ、この間言い忘れましたが、広告原稿は基本的に大きい新聞用につくられていますので、極端な話をすると、サイズを半分にすると、小さい文字が見えにくくなるという問題が起こります。やるとしたら駅売りだけを特別に、夕刊フジと同じような、新しい商品を作るというようなコンセプトでやらなければいけません。もう一つ、宅配の場合は、折込の問題もあります。折込チラシはブランケットに挟み込む前提で作られています。タブロイドには折り込めないという問題がありますので、ビジネス的には大きなチャレンジになると考えています。

【江川】 そういうことであれば、むしろ、そういったものをやらずに、デジタル面を強化するということが大事だ、ということは理解できた。

【国広】 私も江川さんと同じ感想だ。

【司会】 訂正記事について、議論を進めている現状をチーム員より報告します。

【チーム員】 訂正のあり方については、委員会の議論と並行する形で編集部門の現場でも進めています。投稿フォームなどで社内から募っている意見でも、前向きに変えていく方向で提言が寄せられているジャンルです。その中には、この委員会で江川さんからご提言いただいた、訂正欄、あるいは反論欄を設けるといったようなこともありました。例えば、訂正欄を設けるとなると、どこのページに、どんな体裁で載せていくのかを検討し始めると、なかなかすぐに実施することができなません。時間をかけて議論をすることと、すぐに始めることに分けて議論を進めています。ちょうど本日、12月8日組みから、訂正記事の書き方が一部変わるので、そのご報告をさせていただきたい。まず一つは、文言が変わります。これまで訂正の記事は、どこが誤っていたかを示したうえで「訂正します」と書いていましたが、これを「訂正してお詫びします」に改めます。それから、訂正とお詫びという二つのものがあります。お詫びについては、これまでは「お詫び」というカットを冒頭に付けていましたが、今後はお詫びのカットを付ける形ではなく、それぞれ見出しを付けます。その見出しには、お詫びしますという言葉を含むようにするということを、本日組みから始めようとしています。誤った事情や経緯についても、場合によっては丁寧に説明することも徹底させたいと思っています。

【国広】 訂正記事とお詫びはどう違うのか。

【チーム員】 「訂正」は誤った情報を読者に発信したこと、「お詫び」は関係者に多大な迷惑をかけたことを読者並びに関係者にお詫びして間違えた個所をただすことを目的とする。この定義で考えています。

【長】 訂正については「訂正します」という文言だけではなくて、理由についても書きます。お詫びについては、これまで「お詫び」のカットでやっていたものを、しっかり見出しを立てて書いて、誰にどういう形でご迷惑をかけたか、あるいは権利を侵害したかということをきちんと示して書くという意味合いでの体裁、という形でご理解いただきたい。中身についてはこれから一件一件の事例について訂正にするかお詫びにするか、訂正についてはどう理由を書くか、あるいは書かないのか、ということも含めて検討していくというようなものになります。

【国広】 それでも区別がよくわからない。単に誤植の類以外は、書かれた側に立つと、お詫びしてもらわないと困るのではないか。ここを二つに分ける必要があるのか。単に誤植のときのみ「訂正」とし、それ以外の場合は「お詫び」にするというのをデフォルトスタンダードにすべきではないか。単純に「数字の間違いだから」といって「訂正」にしていたのが以前の話だったのだろうが、それは「書かれた側」に対してはとてつもなく大きなダメージになることが多いと思うので、原則「お詫び」なのではないかと私は思う。そして「お詫び」は枠で囲っているが、「訂正」は囲っていない。これは「訂正」を目立たなくするということだ。何ゆえにこの違いがあるのか。「訂正」はカッコ悪いからあまり目立たせたくないのかな。ここのへんはどういうことか。

【長】 議論はまだ途中経過ですが、基本的には、訂正の場合は"てにおは"の直しや、単純に語句の間違いなどで、読者に対してということはあるが、当事者に対しての人権を、あるいはいろんな形の権利を侵害したという部分とそうじゃない部分ということで、現在の段階では、訂正とお詫びを分けようと思います。第二段階としては、江川さんが主張されていたように、訂正欄を設けることや、訂正とお詫びの区別、訂正を載せるのはそれぞれの面でいいのか、それとも一か所にいろんな面の訂正を載せるのか、という議論に入っていくことを考えています。

【国広】 人権だとお詫びをするけど、企業だとお詫びしない、という姿勢はおかしい。でも企業も傷つくし、そこには傷つく社員がいる。配付資料で「訂正記事の具体例(事例1)」として挙げられているもの自体、朝日新聞の間違った姿勢のあらわれだと思う。これは、「JR北、数値改ざんまた」の記事で「270カ所での改ざんを公表」としたのが元の記事であり、これを「33部署での改ざんを公表」の誤りであったと「訂正」するものだ。これはレールの数と部署の数を取り違えたものだが、「書かれる側」「記事を読む人」からすると「270カ所の改ざん」と「33部署での改ざん」は文字通り桁違いであり、とんでもない改ざん会社というイメージを振りまくものだ。これは書かれた側に対する想像力が完璧に抜けている。これを単なる数字の訂正だとする感覚が信じがたい。この感覚、意識を変えないと、いくら訂正欄を作るとか、訂正ページを作るとかと言っても、たぶん形だけの話になると思う。この例は、マインドから変えるということがいかに難しいのかを示している。JR北海道はすべてのマスコミがバッシングをしているから、どうせ改ざんするような企業だから少々間違っても構わない、という感覚があるのではないかと疑ってしまう。なお、私(国広)はJR北海道の「再生委員会」の委員をしていますので、立場をフェアにするため明示しておきます。朝日新聞もJR北海道と同じように全部のマスコミからぶったたかれているのだから、そのつらさや根拠のない記事による「痛み」を体感しているはずなんだけど、どうして他社(取材対象)に対してはこうなってしまうのかなあ。

【西村】 このケースについては、今後お詫び・訂正の基準を議論するとき、ケーススタディーの一つにとりあげてみたいと思います。

【江川】 今国広さんがおっしゃったのは、原発の問題で言うと、"東電だから"というのにつながっているのかな、という感じもするので、きっちり議論していただきたいし、こういうサンプルを作ったときには、一つの形式的な事例だと言っても、たぶん現場はこれをかなり参考にすると思うので、そういう意味でも適切なサンプルを作って現場におろしてほしいと思う。あと一つ質問だが、この訂正なり、お詫びなりはどこの欄に掲載されるのか。今までは、載った面に載せるということになっていたんじゃないかと思うが、私が提案したのは訂正のコーナーをちゃんと作って、そこに訂正と反論を2社面でも3社面でも、固定したところに入れた方がいいのではないかということ。これはまだ過渡期ということで、最終的な変化ではないと思うのだが、今日から変えます、というのはどこに載るのか。

【西村】 載った面になります。これは第一歩の試みです。コレクション欄のように一括するとか、パブリックエディターを作ってGEとのやり取りも全部透明性を持って開示しようとか、いろいろな議論が出ているので、そういったときには今の訂正の基準の問題も合わせて第二段階ということになります。今日ご報告した内容は、すぐに、できることからやろうという第一歩であることでご理解下さい。

【江川】 ちなみに読売新聞は、社会面で一括してやるということを宣言したようだ。こうやって訂正報道のあり方が新聞業界全体で変わってきつつあるのはいいことだと思う。

【司会】 では次に進めさせていただきたい。続いて、弊社の新体制が5日に発足しました。株主総会で決定したわけです。渡辺新社長から新体制についてご説明させていただきます。

【渡辺】 12月5日の臨時株主総会とそのあとの臨時取締役会で、新体制が正式に発足することになりました。飯田が会長で、社長が私、お手元の資料には以下3常務と取締役の担務が書かれています。いろいろご審議いただいて、ご指摘もいただいていた顧問の問題ですが、私は業務等の引き継ぎの必要性があって顧問の就任を委嘱するという判断をしていたわけですけれども、その経緯も含めて、当然記者会見等々でも聞かれるだろうと想定していました。業務を執行していくうえで、これまでの経緯を把握して、情報を得る必要があり、その限りにおいてやってもらうんだという説明をすることにしていたわけですが、株主総会前の臨時取締役会の場で、木村前社長から、「この間のご指摘を真摯に受け止め、朝日新聞社がスムーズにスタートを切れるようにということを考えて、顧問については辞退したい」という申し入れがございました。それを受けて、私どももその思いを了承したということです。株主総会の場で、一連の問題で責任をとるというくだりを説明する中で、前社長についても、顧問への就任を辞退するということを伝えて、株主の皆さんにもご説明しました。したがって木村前社長は、12月5日をもって朝日新聞社との関係はまったくなくなりました。ただ取締役会でも申し上げましたが、まだ引き継ぎが残っておりますので、引き続き会社に出入りすることはありますが、そのレベルです。

【司会】 前回、ご意見を頂戴した件ですけれども、何かございますか。

【江川】 こういうふうになるには、恐らく飯田さんや渡辺さんも相当がんばられたのではないかと推測する。新体制のリーダーシップを感じてもらうために、社員の人たちに、いきさつがある程度伝わった方がいいのではないかという感じはする。

【司会】 今後のスケジュールについて。次回は12月12日午後3時から第6回委員会を予定。危機管理、江川委員からメディアの将来像についてご提案があると聞いています。あわせて再生プランの原案、今までの議論を踏まえた素案のようなものをまとめて提示し、ご説明します。第三者委員会の結論が出たら、その次の委員会で、第三者委員会の結論・提言も整理して、原案・素案に盛り込ませて、もう一度ご説明します。
 年明けぎりぎりですけれども、25日にこれまでの当委員会の審議の総括、そして再生プランの目指すところの精神をまとめて公表し、さらに年明け、1月9日をめどに再生プラン全体を発表するというスケジュールで進めさせていただきたいと考えております。いかがでございましょうか。

【国広】 本来、年内に我々は最終報告をするのということで準備してきたが、それが最終は年明けになるということはどうなのかなという感じはする。ただ第三者委員会の報告を踏まえて12月中に完璧なものができるのかというと確かにしんどいと思う。日程的にはやむを得ないが、ただし、その間、しっかり審議をする。12月19日に社員総会があると聞いている。仮に来年の1月にするならば、この委員会でのさらなる、しっかりとした審議を1回なり2回なり入れるということにしないといけない。

【司会】 第三者委員会の結論がどういうものかに左右される部分があると思います。整理も難しいこともあろうかと思っています。出てこないと何とも言えませんが、もう1回なり2回なりやるとすると、事務的には事前に設定をしないといけませんので、できれば、一旦引き取らせていただいて、社内委員のスケジュールもあるので、あわせてタイミングを図りたいと思います。

【国広】 前回申し上げたが、原発吉田調書の問題であれば、PRCの見解は出たが、真の原因の部分、どのようなマインドで特報部がやったのか、特報の中での総括があるのか、ないのか。私は江川さんとともに、特報の人と議論して突き詰める必要があるのではないかと思っている。再生プラン的に目次は出ているが、一番根底のところをどう考えるのかの議論は十分にできていない。そのつど、設定されたものをこなしていくところで我々が意見を述べたり、提案、提言はしているが、それがきちんとした形に総括、統括されていないと思う。そういう意味で、議論なり真因なりの追求に対する不十分感を持っているので、逆に言えば、もう一回徹底的に議論をして、原案をつくる期日を設けるべきだと思っている。

【志賀】 少し国広さんと意見が違うかもしれないが、信頼回復と再生のための委員会の社外委員の役割にかかわるが、最初私が申し上げた通り、社外委員の役割は、外からの目で見て、作られる再生プランが外からの目とずれていないか、社内だけではなかなか踏み切れないところの背中を押す、あるいは、より社内の議論が活性化するような刺激をするとか。社外であるがゆえの役割はそういうところにある。再生プランそのものをつくる責任、実行する責任は、執行側、経営側にある。どこでバトンタッチをするというか、フェーズを変えるのかは非常に大事なところだ。国広さんがおっしゃったのは、まだ、その骨子が見えていないので、社外委員として頼まれた以上、そこまで見たいというご意見だと思う。私は、徐々に社内にフェーズを移して、皆さん方で責任をもってプランをつくったらいいと思う。もう1回年内にやるというのはやぶさかではない。これなら社外委員として引き受けた価値があったと納得ができるというところと、社外の人にやらされたプランではなく、自分たちのプランとしてつくったという自覚、実行していくための意欲、熱意が伝わってくるところが大事なのかなと思う。結論を言うと現時点では、まだそこまで行っていない。もう1回委員会をやることで、そこまで詰められるかどうかということだが、基本的には、徐々に新体制の方にシフトさせていって、社長の強いリーダーシップの下で、それが実行される。再生プランをつくることは業務全体の5%で、95%は実行だと以前申し上げた。そこへフェーズを移していくことが非常に大切だと私は思う。

【江川】 まずは質問。20日の日程は決まっていると。そちらで考えているのは、20日までは社外委員も加わって検討し、後は社内で色々議論してまとめると。それを25日と1月9日に分けて発表する。9日には私たちもいるということか?

【司会】 概略はそういうことです。25日は、今までの審議の経過、取り組みの内容をざっと総括する、プラス再生プランの精神、つまりこういうことを目指すというのを公表していく形を考えています。全体のかっちりしたものを1月9日に出していこうと考えています。

【江川】 2段階になるというのが、私はもったいないと思う。第三者委員会で相当激しいものが出てくることもあり得る。その後に新社長が会見する。それは決して朝日新聞にとってプラスになるものはない。マイナスをどの程度食い止めるかの作業になると思う。その後で再生プランを発表し、この間までは色々な指摘を受けたが、それを生かしてこうやりますよというプラスの方向のメッセージ。それは一発でドカンというものにならないと、ちょっとずつというのは非常にもったいないような気が今でもしている。それが一点。私も志賀さんがおっしゃるように、自分たちでつくったものだという納得感は大事だと思う。ただ12月20日で終わりで、その後何も機会がなくて、できあがったもので会見やるから来いというのは、何かちょっとな、という感じがする。社外委員の立場ではあるが、一緒につくってきた。これが本当にいい形で実行されていくように、という気持ちで出られるのかなと思う。その2点が引っかかっている。

【司会】 25日の段階では、今までの総括と取り組みと、再生プランの精神的なものを出します。再生プランの具体的なものを出すというわけではありません。再生プランの具体的なものは、全容を1月9日に出すと整理しています。

【国広】 そうであれば反対する。12月20日まで我々議論して、その後に精神を出して、全貌は1月9日だとするならば、我々が2週間以上漠然と待っている理由はない。私が1月9日でもありうべしと言っているのは、まだ議論が不十分であり、20日の議論では尽くせないからであって、20日までの通りで、それをただ2回に分けて出すというのなら反対する。

【西村】 20日から1月9日の間に全く接触がないということはあり得ません。何らかの形で接触、協議はしていただかないとなりませんので、何らかの形でさまざまなご相談、協議があることは言うまでもありません。

【国広】 単なる接触ではなくて、委員会としての議論が必要だと言っている。なぜかというと、逆に20日までの議論では、私は責任を持った議論ができないと考えているからで、個別意見を聞けば済むという話ではなく、委員会としてもきちんとやるべきだ。本来は、きちんとした議論を年内やって一発勝負で1月9日に出すというのが本当の筋だ。基本的には12月20日に終わっているが、後は出し方の問題ですというのではなく、内々に社外委員の意見を聞くなどという不透明なことではなくて、きちんとした形で委員会を開催すべきであると思う。

【西村】 皆さんの日程次第です。予備的な日程は今日セットしましょう。総選挙日程が決まる前、第三者委がずれ込むという前に事務局が設定した日程ですから、当初の想定にはなかった要素が入ってきたことに伴って、予備的な日程は当然作りますし、20日以降に何も接触がないということはありえません。

【江川】 第三者委員会の後に社長が会見するというと検討しないといけない事項もあると思うので、発表の翌日というわけにはいかない。そうすると、総選挙の後、15日の週のどっかで第三者委員会が発表し、社長の会見はその翌週の頭くらいと想像するが、それを受けて、もう一回最終的に議論して、それを反映させてまとめていただくということではダメなのか。

【司会】 わかりました。

【志賀】 私も本当ならば1回で、と言っていた。精神の部分だけは25日で後は1月9日と。この1月9日のやり方だが、社外委員が出てくるのには、個人的に違和感を持っている。1月9日に発表されるプランは、朝日新聞の再生プランだ。あるところまで社外委員がやっていて、それを受けて社内委員、あるいは新執行部の方々が真摯に議論してプランを出すのがいいと私は思っている。それに対して途中で、自分たちとしては、こういうプランにしたいという説明があり、それに対して甘いとか納得できないとか十分ではないなどの意見は社外委員としてあろうかと思うが、あくまでプランとして出していくものは、私は個人的には、社長が一人で発表すべきであると思う。会長が同席してもいいが…。社長が再生プランを切々と話をする席に、社外委員がいるというのは、どうもピンとこない。仮に質問を受けた場合、実行責任はないし、プランそのものは最終的には社内でつくられている、執行部がつくっているプランだから、質問に答えようがない。厳しい質問を受けたとき、「いや、私は言ったんですけども、朝日さんはなかなか、それが…」とか、ぐちゃぐちゃになり、すごくみっともないことになる。それぞれ立場がある人間なので、それぞれの立場に基づいて発言するから、「このプランで社外委員の方は納得されたんですか?」と聞かれて、プロフェッショナルとして「いや、実は私はこう言ったけど…」と何だかんだ…みっともなくて仕方がない。私は社外委員をその場に本当に出すのかなと。これは極めて日産的だが、日産は、記者会見は一人でやる。私がCOOのときは、私かカルロス・ゴーン。カルロス・ゴーンがいるときはゴーンさん。必ず一人でやる。担当役員も後ろに並べないで、前の席にいる。自分が答えられないものは、そこから引っ張りあげてくる。自分が会社を代表していると、全ての責任は自分にあるんだと。今回、私がすごくリコメンドしているのは、顔の見える社長。渡辺社長の顔を全面に出して、渡辺さんの顔が信頼回復再生の象徴であるというムード作りをするのがいい。シナリオ的にも、第三者委員会の後の会見、再生プラン発表の会見を、どういう形でうまく読者の人たちの注目をポジティブに集めるか…。「そこまで言っているのだから、朝日のお手並みを拝見しよう」と、攻撃をしている他社の新聞社も含めて、「少しウオッチしよう」ということで、矛先を収めるようなところで精一杯だろう。だれも拍手なんか送らないと思う。拍手なんて期待したって無理だ。ただ、あれだけ誠実にやるやると言っているのだから、ちょっとお手並み見てあげようかなという形で矛先を収めるあたりで、再生プランの会見は「やったな」という状態だ。そういう会見に持っていく一番いいステージは、いろんな議論をして、こういうことで信頼回復を目指すのだと、ご自身の言葉でしっかりと世に訴える。それが一番アピール力がある。たぶん我々がいると、我々にも気を使って、皆さんからこういうご指摘をいただいたがああだこうだと、すごくみっともない。イメージ的に言うと、年を明けたら、朝日は毅然とやることはやる。どっかで切り替えて、毅然として、こういう形でやるんです、と。本当に信頼回復再生ができなければ、全て私が責任をとりますくらいのことをピシッと言って、やっていくのがいい。

【国広】 今の志賀さんのお話をお聞きして、危機管理の専門家として考えると、社長が一人で出るというのはいいかもしれない。この再生案作りでも、こっち(社外委員)は言うことは言うけど、でも、そっちが決めることだよねという形にし、かつ社長が一身に自分で決めて実行責任も負うと。このような姿勢も再生にとって大事なところ。社員も見ている。もちろん他のマスコミから拍手喝采は得られないが、これまでと違うよねという感じを出すのもいいのかなと思う。この再生委員会の社外委員の役目は何なのかというのが明確ではなくて、委員会の委員である以上、再生案の作成責任も負うという考え方もあるが、作成責任は社内で、こちらは言うべきことを言うのがメーンだと突き放してみる考え方もあるという気もしてきた。いま志賀さんのお話を聞いて共感を覚えた。

【志賀】 その上で、前回も提案があったように、それ以降、実行ベースのところでまたズレがでていないかを社外が監査することがあってもいいと思う。とりあえず、プランのところは、刺激を与え、ズレを明確にし、背中を押していく。そして、ご自身のプランとして出していく。また、このチーム以外のチームで、あるいは国広弁護士に引き続き監査員を引き受けてもらう。

【国広】 私は引き受けたくない。

【志賀】 ズレが生じないように厳しく監査するというなら納得感がある。いずれにしても、渡辺新社長の晴れ舞台を期待している。

【江川】 私も志賀さんの話を聞いていて、渡辺さんが一人でやった方がいいと思った。対外的にだけではなく、社内の人たちに向けて。第三者委員会のようなきつい所にも社長が一人で出て行ってちゃんと答える。そして新しい再生のことも社長が出て行って一人で出て行ってきちんと説明する。体を張って、自分が矢面に立って行く社長の姿を見ると社員は、この人を信じてもう一回頑張ろうという気になるのではないか。朝日新聞の中って編集の人はあっち向いたりこっち向いたりしているところがあるが、そういう人たちをまとめていくという意味でも渡辺さんに頑張ってもらうのがいいと思った。

【渡辺】 ありがとうございます。いろいろ伺って、自分が矢面に立って体を張るというのはどういうことなのか、だんだん腹に落ちてきている感じがしているので、精いっぱいやります。その後、プランをどう進めていくのかについては改めてご相談させていただきますが、当然のことながら、これから一歩ずつやっていくことですから、どこかで社外の目に触れてさせることは必要なことだと思っています。その仕組みについても再生チームに引き続き検討してもらうつもりです。

【藤井】 社内のスケジュールで私が担当しているところを説明すると、明日、経営会議で信頼回復再生についてここまでの報告をしてもらい、役員全員の共通認識をしっかりつくります。14日に集中討議を入れていて、16日に経営会議でもう一度やって、ある程度の共通認識がつくれれば19日に社員集会を開き、ここまで考えていますと説明するようなことをやろうと考えています。ただ、まだまだ色々な要素が入ってきますので、その後のスケジュールは、新しくつくっていく段階にあると考えています。私は前回から委員になって今日が2回目ですが、意識の面については踏み込みが足りないという印象を持っています。まだ時間がありますので、その辺は踏み込んだ論議をしたいと思っています。


<休憩>


【司会】 前回の委員会で積み残した再生プランの発信について。

【チーム員】 この年内は当面、読者の対応であるとか、クライアントの対応であるとか、またお客様、社会の皆様に対するいろんな応急処置的な対応がメーンになっております。年明けからは発信をどうしていくのかが大事になります。優良な固定読者数を多数失い、それに対応しながら、今後は未来の固定読者をつくっていかなければいけないと思っているところです。大事なポイントだと思われるのは、書き手と読み手、社会とのズレ、距離。お客様目線の不足、顔が見えないという点もあります。ずっと議論していますが、朝日新聞社の社員の危機感を継続させていきながら、意識を変えていかなければなりません。再生プランはインナー向けだけではなく、外にも発信していかなければなりません。自己満足で終わってもいけません。一番の解決策は、お客様とどんどん対話していくことだと思います。
① その最初となるのが、再出発の日(仮称)の創設です。今いろんな形でお客様と対話をしていこうとしていますが、ともすれば時間とともに風化してしまいます。9月11日なのか、1月25日なのか、日を決めて、社員が読者に向かって動いていく日を想定できたらいいと思っています。車座集会をこの日程にあわせて全国で展開していくとか、記者が止め読者を訪問するとか、街頭で見本紙を配って受け取ってもらえないことを体感するとか。これを月間のスケジュールに入れていくのはどうか。朝日新聞が社会に対して発信する日にしたいと考えています。
② 次に、社長記者会見を毎月1回定例化することを提案します。朝日新聞の顔としてお客様に語りかける、象徴として見える。それが今までの距離感、ズレをなくすことにつながると思います。大きなカネを使ってCMするよりも、これが一番刺さっていく発信方法ではないでしょうか。再生プランの進捗報告であったり、紙面改編であったり、営業施策、事業催事の紹介などを、ぜひ定期的に発信していってもらいたい。
③ 3つ目は、社内への情報発信をしっかりやるということです。社内が固まった上での社外への発信でないと、空回りになります。いろんな手法を駆使しながら様々なターゲットに対して、計画的に自然に地道に謙虚に、どう伝えるかということです。かっこよさは必要ありません。お客様へ、社会へ「見える」再生プランをどう発信するかが大事です。
 こういったことで、失った読者の回復と、未来のコア読者づくりの両方ができていければ、ということです。社長会見では「くらしに、社会に役立つ新聞」と発信しましたが、今からも伝わっていけばいいと思っています。車座集会に来ていた方からも、社長・会長のスピーチを楽しみにしているとの声がありました。トップの話は興味を持たれていますので、メッセージの部分とどうつなげながら発信していくかが大事になろうかと思います。様々な発信のイメージがありますので、事例として2社のCMをご紹介します。私どものこれからの社会への発信は、ブランド推進本部としっかり検討して進めて参ります。


<CM紹介>


【志賀】 社外に対して色々とやるのは非常に大事で、そこには違和感はない。朝日新聞は変わります、というメッセージを流すのは、その道のプロの支援も含めていると思うので、どういうメッセージが心に刺さるのか等々を考えてもらいながらやればいい。私が特に気になるのは社内、問題の深淵の部分だ。タクティクスやシナリオ的にプロデュースしたコミュニケーションをしていくことによって信頼回復をしていくのは多くの企業がとるやり方なので、それはそれでやっていけばいいが、深淵の部分が変わらないとまた同じ事を起こすと思う。そういう意味で私は、社内の対話、特に社長と従業員の方々との対話は非常に重要だと思う。ぜひお願いしたいのは、イベントごとに必ず調査を行うということ。私どもの例を出すと、11月8日に上期の決算発表をした。それに伴う社内の受け止めをすぐに集約する。今回の決算に対して自信を持てたかとか、毎回聞く項目は一緒だが、その経時変化をずっと追いかける。従業員の人たちが会社の方針を信頼している、会社の方針に従って業務に携わっていることに満足感を感じる、あるいは強い自信を持っている…などだ。それが今回少し、我々の達成に対する不安が起きたので、カルロス・ゴーンが出て行って、タウンホールミーティングを開催した。本社と各事業所をテレビでつないで、千数百名が参加した。それをやった結果、コンフィデンスが増えた、中期計画を達成する自信が湧いたのが何割だとか、落ちたのが何割とかをまたモニターして、自信がない部署に対しては担当役員がまた同じような対話集会をやる。このサイクルをずっと回している。なんでこんなことをやっているかというと、一体感のためだ。社員がそっぽ向いていたりシラケていたりすると目標は達成できないし、そういうところから綻びが出て同じようなことが起こってしまう。朝日新聞社は、今回社外委員になって社員の皆さんと話をしていて、会社としては非常にいい会社なんだけど、どうも縦の風通しと横の連携が悪いという感じが否めない。西部本社で貴重な意見を聞いたが、やはり風通しの悪さ、自分の意見が言えない、言っても仕方ない、言ったってもう何も会社は変わらねえよなという、そういうムードが強い。今度、社長と会ったときにぜひ渡そうと思って、社長に期待することをみんなに書いてもらったのだが、その中に「西部本社へ来てください」という意見があって、あれ、今までの社長は行ったことがないのかな?と思った。私はコミュニケーション戦略として朝日新聞の信頼回復と再生をうまく伝えていくことと同時並行的に文化改革、企業文化をしっかり変えていくこともやっていく必要があると思う。そのために対話をして、ぐるぐるPDCAを回していく。日産自動車は高い目標にチャレンジする会社だが、高い目標にチャレンジすることに対してトップが大丈夫だと言ったら、こういうことを考えているから大丈夫なんだと言ったら、社員はエンカレッジされる。良い回転が始まる。その良い回転をつくるドライバーは社長だ。社外とあわせて社内も同時に相当がんばってやってほしい。特に、調査しながらPDCAを回すことを。「あ、変わってきたな」という思いが、社内的なスコアが上がってくると、結構社外とも連動する。もしかしたら社外より社内の方がシニカルで厳しいかもしれない。それを経時変化的に追いかけるのもいいかなと思う。

【国広】 発信プランは、社外がどうこういう話ではなく社内で決めていく話だが、やりっぱなしではなく、しっかりモニタリングをしていかないと、自己満足になってしまう。モニタリングの仕組みをしっかりつくった上で、という志賀さんに全く同感だ。一連の問題で「読み手と書き手のズレ」「お客様目線の不足」とあるが、「書かれる側」というのがない。書かれる側という視点が社内全体で抜けている。書かれる側に痛みが伴う記事を書かねばならないことはもちろんあるし、だから書かないというわけではないが、それに対する想像力を持たずに書いていると、至るところで感じる。全体において、書かれる側がどう感じるのか。事実をつまみ食いされた人の気持ちや批判される企業側もそう。ここを意識的にとり上げていかないと、今までも抜けてきたし、これからも抜けるのではないかと思う。大きな問題あるいは隠されている問題にチャレンジをしていくのは、調査報道のみならず新聞の使命だとは思うんだけど、そのことと書かれる側に対する想像というのは決して矛盾するものではないし、この点の重大な欠落があると私は感じる。
 毎月定例日に発信するのではマンネリ化する可能性がある。例えば、1カ月1回で1年限定というふうにしないと、2年目からは惰性になっていく。期限を区切って、そこでさらにやるのかどうか判断する形にしないと。年に1回なら行事化するし、月に1回だとルーチン化する。緊張感を保たせる工夫がいる。
 細かい話だが、車座集会というと何となく政治家を連想してしまう。結局支持者しか集まらんのでは?という感じがする。わざわざ足を運んでくれる、新聞を止めてもそれでも出てきてくれるというのは、ある種、愛してくれている人だ。誰をターゲットに再生を図るのかというところからすると一つの重要なステークホルダーかもしれないけど、出てくる人がコア層に限定されがちになるという自覚がないと、車座集会でたくさん出てきた意見が信頼回復につながるという誤解、俺たちは現場で聞いているだ!みたいな話になってしまう恐れがある。車座がいかんというわけではないが、そういう古典的なコア読者を中心にした対応策で大丈夫なのかな、ということ。車座の限界を十分に認識した上でやる必要があると思う。

【江川】 社長の定例会見は私もやればいいと思う。朝日叩きをしているメディアの人から聞いたが、以前朝日は広報の人が口頭で取材に応じてくれたこともあるが、今は紙ばかりだと。紙だけではなくて、顔の見える関係があるといい。再出発の日は、やり方は検討するべきだが、いつにするかというなら、9月11日よりは再生プランを発表する日にした方がいい。再生プランが今どうなっているのかを確認する日にした方がいい。9月11日だと、あの屈辱の日、みたいな感じになってしまう。むしろ、再生に向かって再出発した日と位置づけた方がいいんじゃないかな。
 対外的に発信する時、CMや一人ひとりの営業の動きというのももちろんあるが、一番大きな発信媒体は新聞そのものだ。質問だが、目に見えるような紙面の変化は、1月に予定されているのか? そうでなければ4月1日向けて全面的な紙面改革をやるとして、変えるべきところを凝縮しましたと打ち出せるように紙面改革委員会みたいなものをつくるべきではないか。ブランディングをやるのはいいが、再生プランを踏まえた新たな新聞になりますのような、訂正欄と反論欄を設けましたというように。あるいは後の9月にデジタル部門でものすごい大きな変更を行うなどが必要。お客様の声を聞くというのはいいが、それを咀嚼して、次に打つべき手は何かを新聞社の側で考えるべきだ。お客様の声って、正しいとは限らないし、本音とも限らない。あるファストフードチェーンが、ヘルシーメニューを食べたいとアンケ-トで言われて、そういうのをつくって出したが全然売れないという話を聞いた。だから言われたことをやりますじゃなくて、咀嚼した上で、「本当はこういうものを見たいんでしょ」というものを出す。「あ、実はこういうものを読みたかったんだ」と言われるような、読者の声の先を行く紙面づくりには時間がかかると思うので、それをいつやるという目標をつくればいいと思う。

【長】 紙面改革について、現段階での私の考えをお話しします。年内は一個一個の記事そのものをきちっとする、公平で正確な記事をきちっと出すことを優先します。事実と論を分けるというような、基礎固めをしっかりやろうということで進めています。年末から年始にかけては、切り替えの時期だと判断しています。大きな改革は、工程上の問題もあるので、新年すぐからはできません。当面できるものとして、大阪が先行していますが、読者の疑問・異論・批判に答えるコーナーをつくります。それから、一個一個の記事に関しては今まで「解説」だけでしたが、対論・異論がある場合は紹介していくなど、多様な意見を載せていこうと考えています。三つ目は、新年から読者のページを月に1回あるいは2回つくっていこうと思っています。新聞記者が、普段は記者がいない地域に行って、販売店と一緒になってその地域の声を聞き、記事を掘り起こしていくという試みを今やっていますので、例えばそういうものも紹介しながら、読者と対話する、あるいは読者と双方向でやっていくページをスタートさせようかなとも思っています。本格的な紙面改革については4月か、統一選明けの5月になるかもしれません。もうちょっと読者の声を聞きながら、社会の声を聞きながら、チームを立ち上げて進めていこうと思っています。

【国広】 再生には2つの再生がある。経済的な意味での再生と、信頼の再生だ。劇的に部数が落ちていて基盤が揺らいでいることからの再生と、言論機関としての信頼が揺らいでいることからの再生だ。2つを分けるのではなく、常に一体で考えないといけないが、この2つが必ずしも同じ方向とは限らない。コア読者の意見を聞くのは経済的な再生にとっては大事かもしれないが、コア読者はまさに朝日の応援団であり、「あの原発記事はよかった」「慰安婦記事もよかった」「取り消す必要はない」という人もいるだろう。社内にも頑強にいる。その人たちとどう対峙していくか。単に「お客様は神様なのでお客様の言うことを聞きます」というのでは、真の再生はできない。悩ましい部分があるが、その悩ましさにどう対峙していこうとしているのかが、見えにくい。きれい事ではない、もがき苦しむところだが、まさにここの内容が非常に大事になってくる。
 それから新聞を一部買ってくれるお客様はみんな同じお客様だというのはその通りだが、私が強く危惧しているのは、ここ数年、社会のオピニオンリーダーと言われている人たち、経済界の影響がある人、政治家、学者とかそういう人たちが、「さすがに朝日はダメだよね」と離れていくのを周りでよく見かけることだ。例えば企業経営者たちは必ずしも朝日新聞の論調に賛成するわけではないが、バランス的に存在すべきだと言い続けた人たちがいた。しかし、ここ数年、「もうさすがにダメだ」となっていた。今回、原発と一連の不祥事で突然そうなったのではなく、加速されただけだ。ここについてどう考えるのか、内容や編集記事そのもので一回離れた人をどう取り戻すのか妙案はないが、言論機関として、日本社会のオピニオンリーダーに対する影響力を決定的に失いつつあるという危機意識はぜひ持ってもらいたい。

【西村】 最後の点は、私たちが8月以来社内で議論してきた大きなテーマの一つです。自分は朝日の論調とは相容れない、朝日の社説と立場は違うが、朝日を読む、読む必要があるという人たちが多かったのが、朝日新聞の強みのひとつでした。この委員会、それから社員集会でも議論になりましたたが、自分たちの報道に取り入れる意見を狭めていないか、視野が狭くなっていないかという点検作業が始まったところです。日々の取り組みの中で紙面を鍛えていく、紙面を鍛錬していくということが大事です。これはひとつのスローガンや一編の改革リポートでできるもののではなく、本来メディアとして目指すべきものは何だったのかということに絶えず立ち返ることを意味しています。一人ひとりの意識の問題として取り組んでいきます。自分たちの主張と違う人、多様な意見を数多く取り入れて、議論のフォーラムの土俵をより広くつくる、紙面を狭量にしないということです。なるべく多くの判断材料を読んでいただくということを紙面とデジタルで同時にやっていきます。かつて朝日新聞はそういう強みを持っていましたが、いつの間にか消えていないかと反省しながら紙面をつくっていきます。

【国広】 営業的に考えると、一定の宣伝戦も必要かもしれないが、やはり言論機関だから。発信におけるレベルの高さ、言論機関として、一定の知的水準のある人に深く分かってもらえるような発信、そういう発想も必要なのかなという感じがする。

【西村】 インテグリティー、誠実さ、潔さということにつながると思います。そういったものはジャーナリズム本来の精神で、これはデジタル時代も、50年前も変わらない精神だと思います。我々はここを忘れていなかったかということで、この言葉も、もう一回大事にしていきたいと思っています。

【司会】 第3回の会合で議論された外部指摘、特にパブリックエディター(PE)について。編集局内でも議論が進んでいるので、現段階で整理したものを説明します。

【チーム員】 11月15日の委員会でプレゼンいたしましたが、江川さんから事前関与のイメージが湧かないという話がございました。ご意見を踏まえて編集局内で議論を促したところ、十あまりの部門から職場討議の結果が我々に届きました。さらに、一番大きい所帯である東京の編集局で有志のデスクが勉強会を持って、これまでに3回、13~14時間集中的に議論して、のべ60人くらいが参加しました。その結果も踏まえ、前々回のプレゼンの修正という形でプレゼンいたします。何のためにPEを置くのかというと、社外の目を入れて、皆さんの不信感を少しでも払拭していただくためです。つまり、自分たちだけでやっているから独善的なんですと。我々は常に読者・社会に説明責任を持つということを、PEの存在で象徴的に示します。外部の声に編集部門が立ち止まって耳を傾ける、常にPEを意識することで掲載前の取材や編集作業に緊張感を持つという意義もあります。これらに関して、およびPRCの見解について、11の職場から討議結果が上がってきました。それによると、社外の人が事前チェックに携わることには慎重であるべきだとのアレルギー反応がありました。我々としても、これは簡単ではないなと思いました。ですがその後も東京編集局で議論を進めた結果、各デスクの間から、よく考えたら事後と事前は本質的には切り分けられないとの意見も出てきました。毎日の紙面デスク会は無理かもしれないが、週1回の各出稿部のデスク会ならPEに座ってもらうことが可能で、社内でどんなことが考えられているかがわかってもらえるという意見も出ました。これには今のところ、それほど大きな反発がありません。掲載前の関与は限定的にするが、我々のことはPEに知っていただく。意見交換を進めながら場合によっては相談に乗ってもらうこともできるのではないかと思っています。掲載後については、PEが社外からの色々な意見を踏まえて、この記事についてはきちんと調査した方がいいと思うようなものがあれば声をあげて長GEに説明を求めるというような仕組みがいいのかな、と考えています。またウェブでPEとしての見解を発信していくことも考えています。

【江川】 やっぱりPEはどうしても作りたいのか? さっき不信感を払拭するために、自分たちだけだと独善的になるからとのことだが、新しい人たちの声を入れていますという形づくりのためにPEというのを無理につくる必要があるのか。池上さんコラム一時不掲載問題については、ツイッターで社員が一斉に反対した。これはPEに聞かなくたって、社内ほとんどの人が反対と言ったと思う。そういう「形づくり」が必要なのか、理解できない。そういうことによって編集の人たちの意識が変わるのか。既存の紙面審議会、読者モニターの役割は? 既存のそういったものを、オンブズマン的に機能を果たせる形にできないのか。

【司会】 紙面審議会については、年4回の開催です。読者モニターの意見は配信していますが、受け手の意識の問題が大きくて、それが十分に生かされていません。読者の意見を生かして紙面をつくるという思想は変わりませんが、もう少し装置として、読者やさらに外側の声を反映できるような仕組みを設けたいと思っています。

【江川】 モニターの声が反映されていないなら、それを反映される仕組みにするとか、頻度が少ないなら、もっとやれるような人にお願いするとか。あるいは外部委員で当番を決めて、月に一回は編集の人たちと議論する機会を設けるとか、そういうことで十分ではないか。「事前」には、編集の人たちには抵抗があると思うし、私も、新聞社が責任を持って記事をつくるのがよいと思う。それに対する反応、出た後の色々な議論を活性化する形の方がいいのではないかと自分では思っている。どうしてもPEがいるということであれば、どうしても反対するものではないが。

【国広】 私は、このような外部のPEというのはあってもいいし、今回はあった方がいいのかなと感じている。編集の独善というか思い込みというか、そこに対するある種の外の意見を入れる窓という意味合いにおいて、常勤でチェック、専属的な品質管理をする機能は、私はあった方がいいと考える。じゃ、誰がなるの、ということ。見識みたいなものを考えれば誰でもいいわけではなくて、人選が重要になる。「事前」の部分には、ある程度慎重にならざるを得ないと言えるが、デスク会で感想を述べるということで最終的にはGEの判断で決めるのなら、一つの見解を聞く制度としては、多様な見方ということでいいと思う。編集局の中で、社員・記者でPE的な観点のある人を入れるという考えもあるが、デスク会を見ていると活発に議論して多様な意見が出ているが、質的に違う意見は出にくいという感じがした。より客観性を保つためのある種の安全装置という意味合いで、違う弾なり空気なりが入ってくる制度は、事後はもちろんのこと、事前にもあってもいいのかなという感じがする。ただし最終責任は自分たちが負うということで。

【志賀】 私はどちらかというと江川さんの意見に近い。製造業でいうと、品質管理は従業員一人ひとりがつくりこむもの。ときどきリコールの届け出が遅れたとかで批判を浴びて、第三者委員会をつくるというケースはあるが、我々の会社はそういうことをしたことがない。一番大切なのは、いい品質を従業員一人ひとりがつくりこんでいくことだ。そのための啓蒙活動と、いかにお客様と開発・生産が近づいていくかがカギだ。アメリカで売っている車を栃木から出しているときは、栃木工場とアメリカの販売店で毎朝会議をやって、お客様にこういうことでクレームをもらったというのを工場が直接聞いていた。極力、従業員一人ひとりが品質やお客様のことを考えるというのが、物づくり的に言うと本来の姿だ。第三者を通じてではなく、外部からの声に編集が立ち止まって耳を傾けることを、日常の仕事の中で謙虚に行う。ただ、再生やっていますというポーズが必要なだけで、それを一つのツールにしたいだけなら、お好きにどうぞという感じだ。

【江川】 今までいくつか起きた出来事で問題だったのは、社内の声が十分に反映されなかったこと。外の声にこだわるべきではない。朝日新聞は社内の言論が自由だと思っていたが、十分な意思疎通ができていない。社内でものを言うより週刊誌にものを言ってしまう人もいる状況だ。社内の声をどうやって拾って生かすのか、そして、社内で声をあげれば変わるかもしれないという思いを社員が持つことが大事ではないか。紙面で問題があるなら、投書とかメールとか、お客様センターにも色々来る。モニターから来る、電話も来る、審議会がある、とバラバラになっているものをちゃんと統合して、問題提起ができれば社外の人でなくともよいのではないか。

【国広】 議論が整理されてきた。PEが社外の人でなければいけないのかという問題だと思う。私は社内でできるのかよ、というところがあるから社外から持ってこなきゃという発想だが、人選によって強い力を持ってしまう。結局、本来は自分たちでやらなければならないこと。そこが社外だと副作用もある。どういう権限規定で、何まで言えて何まで参考意見なのか。仕組みさえガッチリつくれば、社内でも社外でも同じかもしれない。独立性と権限がはっきりすれば社内でもいい。例えば社内の監査役でも、場合によっては取締役の行為を差し止めなきゃいけないと思えば、そうする。ただ、それがだめだから、社外監査役じゃなきゃいけないよねというのがコーポレートガバナンスではあるわけなんだが、コーポレートガバナンス的に見れば、このPEというのは外なんだろうね。ただ、編集の中のガバナンスをどうするのか考えたときには、どっちかわからんなと、考えが揺らいでいるところだ。

【江川】 PEという言葉が必要であれば、例えば紙面審議会の社外委員を1カ月に1回集まってもらうか、もしくは毎月当番を決めて、その人にPEという称号を与えて色々意見を言ってもらうとか、今ある仕組みの活性化をもう少し考えては。

【西村】 PEに対する幻想は全くありません。私たちに欠けているものは何なのかというところからスタートした、多くの課題のうちの一つです。池上さんコラムの問題はこれで解決できるものではありません。全部踏まえた上で、外からの声を代弁する形でGEと向き合うようなものを置いて緊張感を持たせてみようという考えです。紙面審議会、紙面モニターなど色々なものと抱き合わせて、こういうものをやってみようという試みの提案です。紙面審議会の一人に外部の代表としてやってもらう手はあると思います。既存の組織をもう少し内実あるものにする事と合わせて考えます。

【渡辺】 私、広報でずっとお客様の声を聞いていて、そのころからお客様の声を編集現場に入れようとしていましたが、なかなか社内が動かなかった経験がありました。例えば読者モニターからは結構いい意見が来ていました。江川さんがおっしゃるように、それを編集のメンバーがどう意識していくのかの仕掛けができない限り、PEを作ってもうまくいかない気がします。日常的に読者モニター、広報、お客様オフィスから上がってくる声、販売からのお客様の声をどうやって編集に届けたらいいのかというルートと、そういう声を現場でどう生かしていくのかについて、もう少し議論した方がいいように思います。目新しいものをつくると、それでうまくいくという幻想にとらわれてしまうことがあります。

【志賀】 西部本社で記者の方と話をしていたら、今回もいろんなルール、新しい規制ができて、手足を縛られていく、記事を書くのにどんどん不自由になっていく、そんなことにならないようにしてほしいと。手足を縛っていくというよりも、一人ひとりの記者が、朝日としての記事を書く立ち位置、公正公平な記事を書くんだということをしっかりと啓蒙、教育していくことが大事だ。外から圧力をかけて、あんな記事ダメこんな記事ダメではなく、そういうところが大事。過去にもいろんな事件があってやり方を変えたけど、それが機能していないのであれば、また新たな規制をはめても同じことが起こってしまう。陥りやすいのが、ものすごくたくさんのプロセスをつくってしまうケース。朝日新聞らしさをみんなが共有して中立公正な記事を書いていく、それを堂々とやっていくことの方が大事だと私は思う。

【司会】 デスク会や紙面企画会議等に出て行って意見を述べる権利、訂正が必要な時に訂正を出しなさいと言える権利の2つを、PEが持つことを考えています。そう考えると危機管理の役割を持つ存在にもなってきます。次回の議論のなかで整理して話したいと考えています。

 以上