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2010年(第20回) 受賞団体





The Osu Children’s Library Fund:第二のわが家(ガーナ)

コンテナを活用した図書館でお気に入りの絵本を開く子たち。中央奥は責任者のジョアナ・フェリーさん=アクラ(ガーナ)

コンテナを活用した図書館でお気に入りの絵本を開く子たち。
中央奥は責任者のジョアナ・フェリーさん=アクラ(ガーナ)

 子どもたちと本をつなぐ草の根活動を支援する国際児童図書評議会(IBBY)・朝日国際児童図書普及賞が、20回目を迎えた。節目の年に受賞したガーナの「オス子供図書館基金」の現場を訪ねると、子どもたちが人懐っこい笑顔で迎えてくれた。

 ギニア湾に面したガーナの首都アクラ。コンテナを活用した奥行き約12メートルの細長い平屋をのぞくと、色とりどりの絵本が目に飛び込んできた。子どもたちがじゅうたん敷きの床に所狭しと座り、お気に入りの本を広げている。蔵書は約5500冊。ここが、オス子供図書館基金がつくった最初の図書館だ。

 「みんなの好きな本は?」と現地の責任者、ジョアナ・フェリーさん(43)が尋ねると、「おさるのジョージ!」「レッド ブック!」と、次々手が挙がった。米国の絵本に、アフリカの物語……。中でも人気なのは、基金オリジナルの写真絵本だ。

 かつて、国内で出版される子どもの本はほとんどなく、地元の子ども向けに基金が作り始めた。その一つ、「マイ ハッピー ブック」は、7歳の女の子が幸せに感じる瞬間を収めた。お母さんに頭をごしごし洗ってもらったり、友達と歌い踊ったり。ABCや数を学ぶ写真絵本など、出版した本は25冊になる。



 第二のわが家

 図書館は、子どもたちにとって第二のわが家のようだ。顔を出すと、「よく来たわね」とジョアナさんが抱きしめる。読み聞かせに加え、ビンゴゲームやカルタ、クイズの時間もあり、楽しみながら言葉を学ぶ。6歳から14歳ぐらいまでの子どもが中心だが、時にはよちよち歩きの妹や弟も。おなかをすかせた子が多いため、パンや豆スープなど軽いご飯も出る。

 はじまりは20年前。一家でアクラに住んでいたカナダ出身の看護師キャシー・ノースさん(54)は週に1度、庭の木の下で我が子や近所の子に読み聞かせていた。すると、誘い合って耳を傾ける子が150人にまで膨らんだ。ほとんどの子にとって本といえば教科書だけ。物語の世界が、子どもたちを引き寄せた。

 ノース家で家事や子守の手伝いをしていたジョアナさんとともに、「読書の喜びを伝えたい」という一心で本をそろえ始めた。キャシーさんは1993年の帰国後も毎年のように訪れ、ジョアナさんと二人三脚で活動を続けた。

 2人は、200を超す地域や学校に足を運び、図書施設を充実させた。専門家ではなかったが、タンザニアやジンバブエなど他国にも図書館員としての経験を伝えている。

 運営費の8割は寄付頼み。昨年はカナダを中心に26万USドル集まった。「たくさん失敗しながら、図書館の運営の仕方や自尊心を育む教え方を確立した」とキャシーさん。IBBYは「資格を持った司書たちがねたむほど、実りある活動ぶりだ」と評価する。



 人生の基盤に

 図書館は、街中の貧困地区や漁村など7館になった。どこでも、外には手洗い場、入り口にはげた箱がある。読む前にはせっけんで手を洗い、読み終えたら元の棚に戻す。ホコリよけの布を本棚にかけてから閉館する。本を大事に扱う姿勢が染みついている。

 子供図書館とはいえ、大人向けに公用語の英語の読み書きを教える識字教室もある。この8月から通うビルの管理人、ヨセフ・アサビアさん(51)は、「銀行や病院に行ったとき、読んだり、書いたりできないのはつらい」。子どものころ貧しく、学校に通えなかったのだという。終業時刻になると、「もう時間? 短すぎる」と惜しんだ。

 かつて図書館に通った子どもが、スタッフとして支えることも多い。基金から奨学金を得て高校に通ったマーティン・アジェイ・レジェンドさん(26)は「図書館が人生の基盤を作ってくれた」と振り返る。いまは、ニマ地区の図書館に併設された小劇場で、約50人の子どもたちとガーナの伝統的な踊りや歌を交えた劇を作り上げている。

 図書館では、何度も「静かに!」と注意されるほど、弾むような子どもたちの姿が印象的だ。別れ際、「サンキューは、日本語で『ありがとう』」と伝えると、「ありがとう!」「ありがとう!」と、こだまのように響かせながら帰っていった。



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Taller de las Letras Jordi Sierra i Fabra Foundation :
  麻薬の街で「本の出前」(コロンビア)

授賞式であいさつするジョルディ・シエラ・イ・ファブラ財団のエルナンデスさん=サンティアゴ・デ・コンポステラ(スペイン)

授賞式であいさつするジョルディ・シエラ・イ・ファブラ財団のエルナンデスさん=サンティアゴ・デ・コンポステラ(スペイン)

 コロンビアで活動する「ジョルディ・シエラ・イ・ファブラ財団」も受賞した。公立図書館司書だったファン・パブロ・エルナンデスさん(38)が、活動の中心を担っている。

 麻薬売買の拠点として知られるメデジンで暮らす。子どものころからギャング同士の抗争を見てきた。使い走りをさせられ、投獄された友達もいる。6人きょうだいの中で、末っ子の自分だけ麻薬に手を出さなかったのは「本が麻薬の代わりになってくれたから」という。

 図書館には近所の子しか足を運ばないので、街角や公園、山間地など様々な場所へ「本の出前」をしている。「本と無縁の暮らしをしている子どもに、ただ与えるだけではダメ」と言い、サッカーやお絵かきなどを通して本とかかわりを持たせた。「読んであげると物語の世界に入っていきやすい。そこから少しずつ、自分から読みたい、という気持ちが生まれます」









◆ 第1回受賞「活動に弾みがついた」 ベネズエラ「本の銀行」◆

ベネズエラの「本の銀行」のマリアさん。賞を説明するポスターの前で。

ベネズエラの「本の銀行」のマリアさん。
賞を説明するポスターの前で。

 IBBYの活動に朝日新聞社が賛同し、88年に始まったIBBY朝日賞の1回目の受賞団体は、ベネズエラの「バンコ・デル・リブロ(本の銀行)」。今年9月にスペインで開かれたIBBY世界大会には、ここのエグゼクティブディレクターのマリア・ベアトリツ・メディナさん(61)も参加していた。

 識字率が低かったベネズエラで、60年から女性が中心となってミニ図書館を設立し、移動図書館を運営する。「国際的な賞を得て活動に弾みがついた」とマリアさん。学校図書館のネットワークをつくり、先生や司書の教育を担った。子どもの本に関する資料をラテンアメリカ各国から集め、資料センターも設けた。

 最近は、自然災害や紛争に巻き込まれた子どもに本を与える活動に力を入れる。「毛布や食糧と同じように、凍り付いた子どもの心をとかすには本が必要」。メキシコなど各国にノウハウを伝える。

 世界大会の会場の入り口には、賞の歩みを伝える大きなポスターが張られていた。通りかかったルワンダの女性が「私たちの団体は2年前に受賞したのよ!」と誇らしげに語りかけてきた。

(佐々波 幸子)
[ 2010年10月19日 朝日新聞朝刊より]




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