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2012年(第21回) 受賞団体



◆ 子どもの心に本の栄養

 子どもたちと本をつなぐ草の根活動を支援する第21回国際児童図書評議会(IBBY)・朝日国際児童図書普及賞に、カンボジアのNGO「SIPAR(シパー)」と、アルゼンチンの「おばあちゃんの読み聞かせ計画」が選ばれた。IBBYと朝日新聞の主催で、受賞団体にはそれぞれ賞金1万ドルが贈られた。読書の喜びを伝えようと、続けられてきた活動を紹介する。




SIPAR:図書館の設置や出版活動など長年の読書推進活動(カンボジア)

 移動図書館や作家の育成

気に入った本を借りて読む女の子たち

気に入った本を借りて読む女の子たち
=プノンペン近郊

 8月29日午前9時半。クラクションが鳴り響くと、絵本を大事そうに抱えた子どもたちが、村長宅の庭に集まってきた。SIPARの「移動図書館」がやってきた合図だ。

 カンボジアの首都プノンペン中心部から北に約28キロ。ロンドゥル・ボロング村には、稲作農家約150世帯が暮らす。

 移動図書館のスタートは2000年。ワゴン車に約3千冊を積み、図書館のないプノンペン近郊の村を1カ所につき週1回のペースで巡回する。

クメール語の絵本を読むボッティさん(右)=いずれもプノンペン近郊

クメール語の絵本を読むボッティさん(右)
=プノンペン近郊

 この日は、生後7カ月から13歳の75人が集まった。まずみんなで手を洗い、司書のボッティ・ビボロアッさん(31)が手品をして、集中力が高まったところで絵本を読み聞かせた。その後、車座になり、思い思いに好きな本を読んだ。

 本は1週間で3冊まで貸し出す。エリャスマイ君(8)は、ボッティさんが読んでくれた「小さなカエル」を借りた。「お姉ちゃんに読んでもらうんだ」

 図書館部門コーディネーター、シン・ソティアさん(31)は「本を届けるだけではなく、読書の楽しみ方を伝えるのが目的。農閑期は大人も来ます」と話す。

 SIPARは82年、カンボジア難民の支援のためにフランスで設立。91年に拠点をカンボジアに移し、教育支援に力を入れてきた。活動を支えるのは国外からの寄付だ。カンボジア政府の協力を得ながら、小学校や病院、刑務所に約230の図書館を作ってきた。

 図書館と並ぶ活動の柱は、現地のクメール語の出版事業だ。代表のホック・ソティックさん(43)は、70年代以降の政治の混乱と内戦で本は焼かれ、作家や司書、本の編集者らの多くが殺されたと話す。「20年間、生きるのに必死で、読書の習慣もなくなった。1世代が丸々死んだようなものです。本を出版することは、カンボジアでは特別な意味があるんです」

 当初は外国から輸入した本に手作業で紙を貼り、訳を書いていった。00年から出版事業に乗り出し、作家や編集者、イラストレーターを育てる講座を開いている。歴史や地理を学ぶシリーズや世界地図など、これまでに85冊を出版した。

 新しい図書館が建つたびに、SIPARが出版した本を寄贈している。採算が取れないため、1冊ごとに企業や個人のスポンサーが必要だ。出版部門コーディネーターのフオット・ソチェッターさん(31)は「いずれスポンサーなしで出版できるようになれば。読書が楽しいと知って、本を買ってもらえるような環境を作りたい」と話す。

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Abuelas Cuentacuentos:おばあちゃんの読み聞かせ計画
 (アルゼンチン)

 失業女性が読み聞かせ

Mempo Giardinelli, representative of the Mempo Giardinelli Foundation (FMG).

アルゼンチンの受賞団体代表のジアディネリさん

 アルゼンチンのメンポ・ジアディネリ財団が、99年から始めた「おばあちゃんの読み聞かせ計画」。失業中の女性を読み聞かせボランティアとして養成、貧しい地域の子どもが文学に触れる機会を作ってきた。作家で財団代表のメンポ・ジアディネリさん(65)は8月23日、授賞式のスピーチで活動を紹介した。

 ジアディネリさんは76年から9年間、メキシコで亡命生活を送り、帰国後、読書を推進する財団を立ち上げた。「長期の独裁政権で、多くの国民が読書の喜びを忘れてしまっていた」

 計画を始めたのは、お年寄りに小説や詩を読むボランティアを、ドイツの病院で見たのがきっかけ。今では50~70代中心に約3千人の「おばあちゃん」が、国内60カ所のほか、南米7カ国でも活動。幼稚園や障害者施設、孤児院で、毎週延べ10万人以上に本を読む。

 「同じ女性が何年も同じ子どもたちに本を読むことで、子どもの知的な成長を促し、女性たちの自尊心も高まります。愛情と上質な文学は、栄養価の高いカクテル。読書文化を築くことが、差別のない将来につながると信じています」

(見市 紀世子)
[ 2012年9月8日 朝日新聞朝刊より]




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