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2014年(第22回) 受賞団体



◆ 本の楽しさ 多くの子に

 子どもたちに読書の喜びを伝える活動を支援する第22回国際児童図書評議会(IBBY)・朝日国際児童図書普及賞に、南アフリカのNGO「PRAESA(プライサ)」とカナダの市民団体「チルドレンズ・ブック・バンク」(子どもの本バンク)の2団体が選ばれた。各団体の代表らに、取り組みについて聞いた。


PRAESA: 母国語に基づく多言語教育 (南アフリカ)

 母語で読書教材

英語とコーサ語、二つの言語で書かれた物語を読む南アフリカの子どもたち=キャロル・ブロックさん提供

英語とコーサ語、二つの言語で書かれた物語を読む南アフリカの子どもたち=キャロル・ブロックさん提供

 南アフリカの「PRAESA」は、子ども向けの読書クラブの立ち上げや、運営ボランティアの育成を進める。英語と、母語であるアフリカの言語の両方で書かれた読書教材も開発している。

 ケープタウン郊外・ランガ地区の小学校からは、土曜の午前10時になると、子どもたちの歌声が聞こえてくるという。週1度の読書クラブの始まりを告げる、コーサ語の歌。楽しげな響きにひかれて立ち寄った子も含め、クラブには幼児から10代まで、50人以上の子どもたちが集まる。

 8月末のある日、同NGOのヌトンビザネーレ・マホベさん(40)が、子どもたちに「今日の気分はどう?」と英語で聞いて回ると、11歳の女の子がひときわ大きな声で「ハッピー!」と答えた。思わず理由を尋ねたら、「今日は土曜日。本が読める日だから」と目を輝かせたという。

 2時間の読書クラブで子どもたちは、木陰でボランティアに絵本を読み聞かせてもらったり、教室で一緒に読み書きの練習をしたりと、思い思いの活動をして過ごす。

 同NGOが支援した読書クラブは約180。南アには英語を含め11の公用語があるが、アフリカの言語で書かれた本が少ないため、出版社と協力してアフリカ言語訳の絵本や児童書も作っている。

 NGOの設立は1992年、アパルトヘイト(人種隔離)関連法が廃止された翌年だ。

 キャロル・ブロック代表(55)は「アフリカの言語は長年、教育現場から排除されていた。ビジネスには英語の方が有利なので、今もアフリカの言語が軽視される傾向は続いている」と説明する。

 「どんな子どもにも母語を尊重される権利がある。なじみのある言葉で読むからこそ物語の楽しさを肌身で感じられ、好奇心がかき立てられる。学ぶことへの興味も自然にわいてくる」と話すブロックさんは、英語と母語の両方を身につけられる環境づくりを目指す。

 PRAESAは2012年から地元新聞社と提携し、英語とアフリカの言語の両方で書かれた物語を新聞に付録として挟み込む取り組みも始めた。付録を切り取って折りたためば、誰でも簡単に絵本がつくれる。付録は読書クラブや学校にも配られる。

 ブロックさんはある読書クラブで、コーサ語を話すのに、読み書きは英語しかできない10代の女の子に出会った。「コーサ語で付録を読みたいんだけど、手伝ってくれない?」。そう持ちかけると、女の子は英語の文章を参考にしながら、アルファベットでつづられたコーサ語の文章を読み始めた。次第にすらすら読めるようになったという。

 「読める、書けるという経験が、子どもたちに自信と喜びを与えてくれる」。今後は家庭内でも本を楽しむ文化を育てていきたいという。

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The Children's Book Bank:
  リサイクル児童書無料配布など読書推進活動(カナダ)

 移民の子らに無料配布

お気に入りの本を掲げる子どもたち=キム・ビーティーさん提供

お気に入りの本を掲げる子どもたち=キム・ビーティーさん提供

 カナダの「チルドレンズ・ブック・バンク」は07年、弁護士のキム・ビーティー代表(55)が設立した。家庭や出版社から不用になった本の寄付を募り、子どもたちはバンクに立ち寄るたびに、好きな本を一冊ずつ無料で持ち帰れる。

 幼い頃から「本の虫」だったビーティーさんは「カナダには、困窮している人に物資を配るフードバンクや衣類バンクはあったが、子どもの本を配る活動はなかった。私にできる社会貢献はこれだと思った」と話す。

 バンクがあるのは、トロントの低所得者の多い地域だ。周辺には、様々な国の移民が暮らす。英語が堪能でないために、給料の高い仕事に就けない人も少なくないという。

 「初めて本を持ち帰った移民の子どもの一言を、ビーティーさんは今も忘れられない。カウンターで本の整理をしていた時、10歳くらいの男の子がおずおずと近づいてきて、「この本はいつ返せばいいの?」と質問した。「返さなくていいの。その本は永遠にあなたのものよ」と答えると、男の子は「永遠! 僕、天国にいるみたい」とはしゃいだという。

 「家計が苦しく、本を買う余裕がない親もいる。でも、好きな本を枕元に置いて、ドキドキしながら何度も読み返す経験は、豊かな人生を育む」とビーティーさん。本棚には0~12歳児向けの絵本や児童書が並び、1日に平均約250人が訪れる。

 最近では、以前ブック・バンクに通っていた高校生たちがボランティアとして運営を手伝うこともある。「この本は面白いよ。僕も君くらいの年の頃に読んだんだ」と声をかけると、自然に興味を持つという。

 ビーティーさんは「読書への愛を育み、大人になってブック・バンクに戻ってくれる。そういうつながりを誇りに思うし、大切にしていきたい」と話した。

(伊藤 舞虹)
[ 2014年9月26日 朝日新聞朝刊より]




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