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2016年(第23回) 受賞団体



 

◆ 本に親しみ、笑顔の輪

 子どもたちに読書の喜びを伝える活動を支援する第23回国際児童図書評議会(IBBY)・朝日国際児童図書普及賞に、ラオスとイランの2団体の取り組みが選ばれた。それぞれの活動を報告する。


 

  Big Brother Mouse:ビッグ・ブラザー・マウス(ラオス)


【動画】ラオスの村の学校で、子どもたちは読み聞かせに聴き入り、読書を楽しんだ=松川希実撮影


 2,000校以上で「パーティー」

 市民団体「ビッグ・ブラザー・マウス」は、教科書以外の本を読んだことがない子どもが多いラオスで、2006年から児童書を出版。ラオス人作家を育て、これまでに370種類以上の絵本や翻訳本を作った。学校に本を届け、本を読む楽しみも伝えている。

 ビッグ・ブラザー・マウスの拠点があるルアンプラバンは、首都ビエンチャンから北に約220キロにある世界遺産の街だ。8月、市街地から車と船で約1時間の村の学校に本を届ける活動「ブックパーティー」に同行した。

 段ボール2箱分の本を車に積み、船でメコン川を渡り、でこぼこ道を上って村に着いた。小学校は5年制。夏休み中だが約40人が学校に集まっていた。

 パーティーの始まりだ。まずは歌と踊り。「本の中には知識があるよ 楽しさ 読み書き 何でも学べる」。軽快なリズムと身ぶりに子どもたちも笑顔になる。

 「私は誰でしょう」という絵本を使って、ヒントから動物の種類を当てるゲーム。「カメ!」「イヌ!」。ページをめくるたび歓声が上がる。最後に一人1冊好きな本を渡した。

ブックパーティーでは本のページをめくるたびに笑顔がはじけた=ラオス・ルアンプラバン
ブックパーティーでは本のページをめくるたびに笑顔がはじけた=ラオス・ルアンプラバン

 活動は、カムラ・パニャスックさん(33)、シフォン・ウィティサクディさん(31)、米国人のサーシャ・エリソンさん(64)の3人が立ち上げた。

 ラオスは第2次大戦後も長引いた内戦などの影響で、親や教師世代に読書の習慣が根付かなかった。出版社もほとんどない。米国で出版会社を経営していたサーシャさんが、ラオスで本を全く見かけないことに驚き、知り合った師範学校生のシフォンさんとその友人のカムラさんに「ラオスの本を作ろう」と提案した。

 2人は物語を書こうとしたが、教科書しか読んだことがないので苦労した。海外の児童書を研究し、祖母から聞いた民話などをもとに本を書いた。絵画コンテストを開き、挿絵画家も発掘。若いスタッフに物語を書く研修をして、作家として一から育てている。

 本の面白さを教えたいと始めたのがブックパーティー。2,000校以上で実施した。教師にも読書の指南書を配り、「授業前の15分を読書に当てて」と呼びかけている。

 だが農村部ではまだ教育の質は低い。同行したブックパーティーでも、ページをめくっただけで本を閉じた3年生の男の子がいた。「読めないの?」と聞くと、黙ってうなずいた。

 今年、郊外の農村に校舎を建てた。読書を中心に読み書きを学べる全寮制の無料の学校を作ろうとしている。カムラさんは「昔はラオスのために良い本を作りたいと思ってきたが、今は読まれるためにどうするかを考えている。1歩ずつ読書を広めたい」と話した。


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 Read with Me :リード・ウィズ・ミー(イラン)

 読み方、教師に指導

車座で子どもたちに本を読み聞かせる=IRHCLI提供
車座で子どもたちに本を読み聞かせる=IRHCLI提供

 児童文学の研究者らで作るイラン児童文学歴史研究所のプロジェクト「リード・ウィズ・ミー」は、国境やスラムに暮らす子ども1万3千人以上に本を届けてきた。500人超の教師・ボランティアを対象に読書のワークショップも開いた。2010年から国内約半数の州に活動を広げた。

 イラン児童文学歴史研究所(IRHCLI)の代表、ゾーレ・ガイニさん(62)に、授賞式があったニュージーランドで話を聞いた。

 へき地では国境を接するアフガニスタンからの難民が多く、都市部でも貧困のため働く子どもたちがいる。「戦争や飢えや暴力を身近に感じて生きる子どもたちから、悲しみや怒りを取り除く効果的な方法が読書だ」とプロジェクトを立ち上げた。

 へき地では学校、都市部ではストリートチルドレンの保護施設などに、専門家たちが選んだ優れた本を送った。しかし、大切なのは子どもが読みたくなるようなしかけ作り。そのために教師やボランティアのためのワークショップに力を入れた。

 まず最初の4日間で、「すべての感情を込めて読むこと」「車座になって子どもと目線を合わせること」など、読書の意義や本の読み聞かせ方を指導。その後も専門家がフォローし、1カ月後には教室を訪ねてアドバイスする。取り組みは2年間。教師自身が続けられるように見守る。

 ゾーレさんはある対象校で、傷ついたハトを助けた子どもの物語を読んだ後、ハトをおもちゃの鉄砲で撃って遊んでいた子どもたちがその遊びをやめた、という話を聞いた。「本当に良い本は『平和は大切』とただ言う以上に、子どもの考えを変え、運命を変えられる。その意義を理解してもらい、支援者を増やして、国内全体に広げて行きたい」と話した。

(松川 希実)
[ 2016年9月1日 朝日新聞朝刊より]



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