手塚治虫文化賞

第15回マンガ大賞

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直球の娯楽 実験的作画で

「竹光侍」松本大洋さん、作・永福一成さん(小学館)

 江戸の長屋に住み着いた浪人、瀬能宗一郎。子どもやチョウと戯れる変わり者だが、じつは凄腕(すごうで)の剣客。刀がもたらす魔を恐れて竹光を差しているが、出生の秘密によってある藩に付け狙われる。

 松本さんにとって初めての時代劇。「自分にはできないまっすぐな娯楽を」とこれまた初めて週刊連載作品で原作者を起用した。

 永福さんと松本さんは、大学の漫画研究会で先輩、後輩の間柄だった。一足先にデビューした松本さんのアシスタントを、永福さんが務めた時期も。自宅も近く、気のおけない仲だ。

©松本大洋・永福一成/小学館

 捕物帳、お家騒動、腕利きの浪人――小説の形でつくった原作には「大洋が絶対書かないような、時代劇の定番を取りそろえた」と永福さん。「でも直球で投げ込んでも、必ず松本節で返ってくると分かってた」

 明快な筋書きを得て、作品ごとに変化する松本さんの作画の実験性は遺憾なく発揮された。スクリーントーンでなく墨を、ケント紙でなく画用紙を用いて、和の味わいを醸し出した。背景のゆがみ具合や、目の位置が独特な顔の構図など、細部まで見逃せない。

 週刊連載だったが、妻で漫画家の冬野さほさんと2人だけで絵を仕上げた。「背景をアシスタントに任せるなんてもったいなくて」。筋金入りの絵師である。


松本大洋さん(写真右)、永福一成さん(同左)

《まつもと・たいよう》

 1967年、東京都生まれ。「竹光侍」を06〜10年に週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載。ほかに「鉄コン筋クリート」「ピンポン」など。

《えいふく・いっせい》

 1965年、東京都生まれ。「竹光侍」で初めて原作を担当。代表作は「ライトニング・ブリゲイド」など。