手塚治虫文化賞

第17回短編賞

第17回 | マンガ大賞 | 新生賞 | 短編賞 | これまでの受賞の記録

ロボット通じ描く自己犠牲

「機械仕掛けの愛」(小学館) 業田良家さん

 女の子とその母との楽しい記憶をいつまでも忘れまいとする「リックの思い出」や、政府と反政府グループらの敵対関係にほんろうされて自爆を選ぶ「クロスの戦場」。主人公は心を持ったロボットたちで、その愛情や葛藤が心にしみるオムニバス作品だ。

 作者自身が気に入っているのは、刑事のロボットが貧富の差を解消するために偽札作りに手を染め、最後は「虫」にされてしまう「罪と罰の匣」という社会正義を巡る話。「精神や知識、生き方が(虫の姿という匣の中に)閉じ込められてしまった『人』の悲しさがあらわせた」

©業田良家/小学館

 基本1話20ページのアイデアは「打ち合わせで二転三転」するほど毎回苦しむそうだ。作品群に共通したテーマとは? 「自己犠牲の話が多いんじゃないかなと思っている。そこを描くには人間だとうそっぽくなる気がして、ロボットのほうが純化されると感じる」

 もともと1990年代の作品「ゴーダ哲学堂」でもロボットは描いていた。ロボット「アシモ」のニュースを見て衝撃を受けたのがきっかけだ。

 人に近いロボットマンガといえば、手塚治虫さんの「鉄腕アトム」が代表例だ。今作の表紙を描いているときから、手塚さんが描きそうな絵だなと気づいた。「すごく影響を受けていると改めて思った」


《ごうだ・よしいえ》

業田良家さん

 1958年生まれ、福岡県出身。代表作の「自虐の詩」と「空気人形」はいずれも映画化された。「機械仕掛けの愛」は、2010年からビッグコミック増刊号(小学館)で連載中。