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怪獣対決、小説で花盛り 前島賢

村井さだゆき他著『日本怪獣侵略伝』(洋泉社・1836円)

村井さだゆき他著『日本怪獣侵略伝』(洋泉社・1836円)

 「パシフィック・リム」に「GODZILLA」と続く「海外産」怪獣の上陸。そして「エヴァ」の庵野秀明と「平成ガメラ」の樋口真嗣による日本版新作「ゴジラ」の発表などで活気づく特撮界。文学で怪獣を描く小説アンソロジーが相次ぎ刊行された。

 東雅夫編『怪獣文藝の逆襲』(KADOKAWA・2052円)は、13年刊行の『怪獣文藝』(メディアファクトリー・品切れ)の続編。怪奇ホラーを志向した前作に対し今度は怪獣との大戦争がテーマ。前述の樋口をはじめ、有栖川有栖、井上伸一郎、大倉崇裕、太田忠司、梶尾真治、小中千昭、園子温、山本弘らが怪獣決戦を描く。

 一方『日本怪獣侵略伝―ご当地怪獣異聞集―』は全国の名所名産等を怪獣化する「ご当地怪獣」プロジェクト発の小説。浅草十二階怪獣ジューニガインや巨大大阪おばちゃんヒョウガラヤンなど地元密着型怪獣が大暴れ。前掲書にも登場の小中をはじめ、村井さだゆき、中野貴雄、會川昇、井口昇、上原正三ら特撮監督、脚本家が豪華イラストレーター陣とともに参加した。

 どちらもバラエティー豊かだが、怪獣映画の華と言えば、「VS.」もの。ぜひここは両者を読み比べてほしい。映画監督の園子温と井口昇の「ダメ男と怪獣」対決、梶尾真治と中野貴雄が強き母を描く「かあちゃん怪獣」対決、小説初挑戦となるKADOKAWA代表取締役専務・井上伸一郎の怪獣元寇と、會川昇の怪獣八犬伝による「怪獣伝奇」対決と名カードが目白押しだ。

 そんななかであえて一作選ぶなら「帰ってきたウルトラマン」の「怪獣使いと少年」などで知られる特撮界の重鎮、沖縄出身の上原正三が『侵略伝』に寄せた「ヒーカジドン大戦争」だろう。大自然の象徴たる台風怪獣ヒーカジドンを沖縄で抹殺せんとする傲慢な人類に対し怪獣は70年前の歴史を呼び覚ます。戦艦大和や疎開船対馬丸を連れ、日米問わず蘇(よみがえ)る沖縄戦の犠牲者。怪獣との「総力戦」は、死者と生者が邂逅(かいこう)する、恐ろしくもどこか愉快な鎮魂の宴(うたげ)に変わる。過去も現在も最前線にある沖縄を、怪獣を通じて描いた傑作。多くの方に読んで頂きたい。

(ライター)


 ▼プロフィール
 まえじま・さとし  82年生まれ。『セカイ系とは何か』


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