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戦後史にみる超人への憧れ 前島賢

會川昇著『超人幻想 神化三六年』(ハヤカワ文庫JA・799円)

會川昇著
『超人幻想 神化三六年』
(ハヤカワ文庫JA・799円)

 スーパーヒーローたちの活動が法律で禁止され、あるいはそのうちの幾人かは政府によりベトナム戦争へと派遣される……アラン・ムーア原作『ウォッチメン』(小学館集英社プロダクション、3672円)は、マンガのヒーローたちが本当にアメリカ合衆国に実在したら?という視点からもうひとつの冷戦時代を描いたアメリカンコミックの名作だ。自分がこの作品を知ったのは遅まきながら2009年のザック・スナイダー監督による映画化がきっかけだったが、その際、この作品の日本版が見たい、と強く願ったのをおぼえている。

 現在放送中の水島精二監督の「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」はその願いに応えてくれたアニメだ。昭和でなく神化が年号となった神化41年と46年を舞台に、変身ヒーローや魔女っ子や妖怪が実在した戦後日本史を描く。脚本はアニメ「機動戦艦ナデシコ」や「鋼の錬金術師」のシナリオで知られる會川昇。小説『超人幻想 神化三六年』は彼がみずから描く今作の前日譚(たん)である。

 超人が実在する神化の世界では、彼らについて語ることはタブーであり、皮肉なことに、ヒーローが存在したからこそヒーローもののマンガやテレビ番組が希少になってしまっている。テレビディレクターの木更嘉津馬は、それでも少数の同志とともに超人の物語をなんとか世に問おうと奮闘するひとりだ。そんな彼が奇妙なタイムトラベルによって、太平洋戦争を戦ったひとりの超人にまつわるミステリーに遭遇していく。

 『ウォッチメン』が世界の警察として戦い続けるアメリカを描いたのに対し、『超人幻想』は敗戦と占領の戦後史を描く。黎明(れいめい)期のテレビ業界を舞台にしたSF推理としても読み応えのある一冊だが、やはり本書の肝は「超人が存在したという歴史を守ろうとする者」と「超人が活躍するフィクションを創造しようとする者」との思いが交錯していく物語だろう。なぜ我々はこうもスーパーヒーローたちに憧れ、スーパーヒーローたちの物語を求めるのか? そんな問いを読者に投げかけてくれる一冊だ。ぜひ、アニメとともに、このもうひとつの現代日本史に触れていただきたい。

(ライター)


 ▼プロフィール
 まえじま・さとし  82年生まれ。『セカイ系とは何か』


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