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仕事術から見える出版界 前島賢

三木一馬著『面白ければなんでもあり』(KADOKAWA・1,296円)

三木一馬著
『面白ければなんでもあり』
(KADOKAWA・1,296円)

 鎌池和馬『とある魔術の禁書目録』、伏見つかさ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』、川原礫『ソードアート・オンライン』などの大ヒットライトノベルが、ひとりの編集者のもとで生まれたと知ったら、驚く人は多いだろう。そんな担当累計部数6000万部の編集者、三木一馬がその仕事術を語るのが『面白ければなんでもあり』だ。

 人気作『俺妹』の誕生秘話から、ほぼ小説を読まない青年が電撃文庫の名物編集者になるまでの自伝、「ミスをプラスに変える」という人生訓、そしてとある人気キャラはなぜスカートの下に短パンを穿(は)くのかなんて裏話など、いささか雑多な内容だが、たとえば作者の個性を読者のニーズと合致させる方法を語る第一章などは作家志望者には大変有意義な内容だ。また、タイトルやイラストを決め、アニメ化などメディアミックスを主導し、と具体的に語られる仕事の内容は、そのまま「ライトノベルって普通の小説と何が違うの?」と疑問に思う人への答えになるだろう。ライトノベルの編集とは、単に1冊の本を出版して終わるものではなく、そこからいかに作品を人とメディアに広げていくかまでが仕事である、ということもわかるはずだ。

 エンターテイメントの舞台裏を語る本として、一緒に読んで頂きたい新刊が今月はあと2冊。同じく編集者で、三田紀房『ドラゴン桜』や小山宙哉『宇宙兄弟』などの大ヒットコミックを手がけた佐渡島庸平が、みずから設立したエージェント会社コルクの目標を語る『ぼくらの仮説が世界をつくる』(ダイヤモンド社・1404円)と、ベストセラー「S&Mシリーズ」の作家・森博嗣が、「編集される側」の作家の金銭事情を赤裸々に語った『作家の収支』(幻冬舎新書・821円)だ。佐渡島は著書において編集者を、作家の本ではなく、作家本人を「パブリッシュ」していく職として再定義し、森もまた電子書籍が全盛化する今後の時代において「作家のプロモート」をする職業の需要を論じている。

 出版不況が言われるなか、3冊はともに、「紙の本をつくる」という枠を超えた、新たな編集者・出版社の姿を描き出そうとしているように読めた。

(ライター)


 ▼プロフィール
 まえじま・さとし  82年生まれ。『セカイ系とは何か』


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