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カエルに相撲指導、驚く展開 前島賢

城平京著『雨の日も神様と相撲を』(講談社タイガ・778円)

城平 京 著
『雨の日も神様と相撲を』
(講談社タイガ・778円)

 近年、メディアワークス文庫や新潮社文庫nexなど、キャラノベやキャラクター文芸とも呼ばれる、一般文芸とライトノベルの中間的なレーベルが相次ぎ創刊している。昨年10月創刊の講談社タイガもそのひとつ。ラインナップには森博嗣や西尾維新ら人気作家の書き下ろしが並ぶ。今月の新刊『雨の日も神様と相撲を』『スパイラル~推理の絆~』(ガンガンコミックス・全15巻・421円~463円)などでマンガ原作者としても有名な作家・城平京(しろだいらきょう)のカエルと相撲と推理の物語だ。

 両親を事故で失った中学生・文季が親戚を頼り引っ越した先は、カエルを神様として崇(あが)め、相撲が盛んに執り行われる奇妙な田舎だった。もともと両親の影響で幼い頃から相撲漬けの文季だが、女の子に間違えられそうな容姿や体格と力士にまるで不向き。これを補うため徹底して理論的な取組を身につけていた彼は、それを評価され村の相撲コーチとなり、やがて意外な相手から指導依頼を受ける。この村には立って喋(しゃべ)って相撲を取る「カエル様」が本当に暮らしていたのだ……。

 カエルに相撲を教える。まるで昔話のようだが、文季が最初に考えるのは人間とカエルの骨格の違い。どこまでも真面目で理詰めの姿勢がかえっておもしろい。さらに彼のロジックの冴(さ)えは土俵上に留(とど)まらない。この奇妙な神様にまつわる伝説や風習の真実を民俗・神話の観点から説き明かし、巫女(みこ)として村に縛られた少女に手をさしのべ、また近隣で発見された奇妙な刺殺死体の謎を解く。相撲に伝奇に殺人事件と盛りだくさんの内容を、鮮やかな論理の快楽で一冊の本にまとめている。そこに加え、相撲を愛しながら体格に見放された少年が、自分なりの相撲を見つけるまでの恋と青春の物語でもあるのだから見事だ。

 講談社ノベルスの姉妹レーベルとして創刊した講談社タイガ。なるほど確かにミステリーだけれど同時に「こんな小説今まで読んだことない」と驚かせてくれた本書には、ミステリーにおける新本格ムーブメントの総本山として、数多くの名作や話題作を生み出した講談社ノベルスの遺伝子を感じた。これからも、そんな驚きに満ちたレーベルであり続けてほしい。

(ライター)


 ▼プロフィール
 まえじま・さとし  82年生まれ。『セカイ系とは何か』


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