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創作と市場、ネットで新形態 前島賢

飯田一史著『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房・1,620円)

飯田 一史著 著
『ウェブ小説の衝撃』
(筑摩書房・1,620円)

 「ウェブ小説は、いまや日本の小説市場の中核に位置している。/少なくともビジネス的には、確実に。」

 飯田一史の『ウェブ小説の衝撃』はこうした断言から始まる。本書によれば、すでに日本の文芸作品の売り上げの半分近くが、インターネット上で公開された作品を書籍化したウェブ小説が占めるようになったという。旧来の小説に親しんでいる方は驚くかもしれないが、確かにライトノベルでは近年、ウェブ小説が旧来の新人賞に代わる勢いで、新たな人気作、人気作家の供給源となっている。一般文芸で40万部を突破した住野よる『君の膵臓(すいぞう)をたべたい』(双葉社・1512円)も、もともとはネットに掲載された作品だ。ウェブ小説が日本の小説市場の中枢を占めている、という言葉は、けっして大げさなものではないと思える。こうした流れを受け、2月には株式会社KADOKAWAも株式会社はてなと共同で小説投稿サイト「カクヨム」をスタートさせた。

 このように文芸市場に大きな変化をもたらしているウェブ小説というムーブメントを、その弊害も含めて概観するために、この『ウェブ小説の衝撃』は最適な一冊だろう。

 本書によれば、従来の文芸業界では新人育成とプロモーションの役割を雑誌が担っていた。だがその雑誌の売り上げが低迷したため、文芸業界は自前の宣伝、作家育成能力を失い、実写ドラマ化や芸能人の作家起用などでそれを外部に委託するほかなくなってしまった。それに対し、ウェブ上で作品を無料公開することで自力で多数の読者(書籍版を購入するのがそのうちの一部でも数万の部数に達するような)を獲得できる新たなメディアとして現れたのがネットの小説サイトだ。

 そして本書では、何よりも更新頻度が重視され、あるいは読者の反応が時に明確な数字として即座に表れるウェブという環境で、小説・物語の作り方がどのように変化していったのかも描かれる。

 従来の小説に慣れ親しんだ方には本書の記述は違和感も大きいと思う。しかしだからこそ、インターネットという場所で生まれた新たな創作やビジネスの形を知るために、ぜひとも読んで頂きたい一冊だ。

(ライター)


 ▼プロフィール
 まえじま・さとし  82年生まれ。『セカイ系とは何か』


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