朝日新聞社 どくしょ応援団朝日新聞社 どくしょ応援団
朝日新聞社: カジュアル読書~10代から20代向けの本や、著者によるイベントを紹介します。
作家LIVE エンタメ for around20 キャンパス発 気になる新刊 ブックマーク

 

バックナンバーはこちら
エンタメ for around 20

 

悪党たちの死に様を見よ 前島賢

江波光則著『ボーパルバニー#2』(小学館ガガガ文庫・660円)

江波光則 著
『ボーパルバニー#2』
(小学館ガガガ文庫・660円)

 恐怖の首切りバニーガール再び。対するは日本刀を持った巫女(みこ)にプレートメイルの騎士にカウボーイハットの女ハンターに……と説明すると、ファンタジーかコメディーだと思うだろうが、本書『ボーパルバニー#2』の舞台はれっきとした現代。とある傭兵(ようへい)部隊がアフリカの内戦のドサクサで手に入れた時価30億円のダイヤモンドをめぐって、和・洋・中の犯罪組織が争う悪漢小説である。

 著者の江波光則は『ストレンジボイス』(小学館ガガガ文庫・617円)や『ストーンコールド』(星海社FICTIONS・1404円)などで知られるライトノベル作家だ。司法の目の届かない密室で陰湿ないじめが横行する、教室という名の無法地帯を舞台にして、そこで生きぬく10代の姿を硬質な文体で描き出す、学園ハードボイルド小説とでも呼ぶべきユニークな作品を手がけてきた。昨年には「終末に備えるため」に作られた奇妙なマンションを巡る年代記『我もまたアルカディアにあり』(ハヤカワ文庫JA・907円)を刊行、SFにも進出した。そんな彼が悪党どもの本気の殺し合いを描いたのが本書だ。

 謀略と裏切りを幾重にも重ね、悪人たちは対立関係を二転三転させながらクライマックスの決闘へとなだれ込んでいく。銃弾もきかない無敵のバニーガールが巫女装束の女剣士と戦う、なんて冗談のような光景を、迫真の描写でひたすらカッコよく見せてくれる筆力は素晴らしい。そろいもそろって破滅的な悪党たちの死に様を、ぜひ、前作とあわせてお読み頂きたい。

 ところでタイトルで気づかれた方も多いだろうが、本作はコンピューターゲームの古典的名作「ウィザードリィ」を下敷きにした作品だ。名もなき冒険者たちが財宝を求めて真っ暗闇の迷宮に挑む、というシンプルなゲーム性が逆に書き手の想像力を刺激するのか、先日、Kindle版が刊行されたベニー松山『隣り合わせの灰と青春』(幻想迷宮ノベル・600円)など、このゲームからは多くの名作小説が生まれている。ファンタジーRPGを現代劇に換骨奪胎した本書は、そこに加わる新たな一冊だ。ゲームファンにもオススメしたい。

(ライター)


 ▼プロフィール
 まえじま・さとし  82年生まれ。『セカイ系とは何か』


▲このページのTOPへ

 

朝日新聞 インフォメーション 通常版 ベルマーク版