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恋は心で?体で?悩む少年 前島賢

森橋ビンゴ著『この恋と、その未来。 二年目 秋冬』(ファミ通文庫・702円)

森橋ビンゴ 著
『この恋と、その未来。 二年目 秋冬』
(ファミ通文庫・702円)

 三人の姉から奴隷のように扱われる家庭環境から逃れるため、広島の全寮制高校に入学した松永四郎。ところが彼と同室になった織田未来は、女の体に男の心を持った性同一性障害の当事者だった。最初は戸惑う彼だったが、そんな四郎を誘って入学早々、クラスの女子とデートに出かける、積極的で多才で女好きな未来と次第に打ち解けていく。そうしてある時、彼は男の心を持ったルームメイトに恋をしていると気づく……。

 ライトノベルレーベルのファミ通文庫は、その名の通りゲームのノベライズなどを得意とする文庫だが、一方、等身大の男女を描いた青春小説の傑作を数多く世に送り出してきた実績を持つ。直木賞作家・桜庭一樹の『赤×ピンク』(角川文庫・555円)や『荒野』(文春文庫・全3巻・453円~473円)などはもともと本レーベルから刊行された作品。また近作には高校生男女のリアルな同居模様を描いた久遠侑『近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係』(ファミ通文庫・616円)などがある。

 森橋ビンゴもそんな青春小説の名手で、女子高生作家の初恋を描いた『東雲侑子』シリーズ(ファミ通文庫・全3巻・626~648円)が話題となった。本作『この恋と、その未来。』はそれに続く作品だ。男として接してほしい、と願う親友に恋をしてしまった少年は、みずからの想(おも)いを隠し別の女の子と交際を始め、あるいは親友の恋を応援する。「恋は、心でするのだろうか? それとも、体でするのだろうか?」と悩み、時に安易な選択に流され、そしてさらに悩む少年の姿が、広島の景色や方言を交え綴(つづ)られる。

 完結の際には是非、本欄で紹介したいと考えていたのだが、先月発売の最新5巻(「二年目 秋冬」)によれば、売り上げ不振により最終巻となる6巻が刊行されるかどうかは「分からない」とのこと。未完となるにはあまりに惜しい作品だが、著者によれば「今は作品を発表する場が世にあふれている」と商業出版以外の形での完結も視野に入れているようだ。答えのない問いに真摯(しんし)に向き合った青春小説、今からでも遅くはないので是非、手にとってほしい。

(ライター)


 ▼プロフィール
 まえじま・さとし  82年生まれ。『セカイ系とは何か』


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