朝日新聞社 どくしょ応援団朝日新聞社 どくしょ応援団
朝日新聞社: カジュアル読書~10代から20代向けの本や、著者によるイベントを紹介します。
作家LIVE エンタメ for around20 キャンパス発 気になる新刊 ブックマーク

 

バックナンバーはこちら
エンタメ for around 20

 

「混ぜるな危険」の合わせ技 前島賢

宮内悠介著 『スペース金融道』(河出書房新社 1,728円)

宮内悠介著
『スペース金融道』
(河出書房新社 1,728円)

 こんな題材の組み合わせ、どうやって思いついたのかと驚くほかない作品に、ネットではしばしば「混ぜるな危険」なんてタグが付く。囲碁や将棋など盤上遊戯を題材にしたSF短編集『盤上の夜』(創元SF文庫・886円)で第33回日本SF大賞を受賞。直木賞候補にもなった同作の後、民族紛争や精神疾患など様々な題材に挑んできた宮内悠介が次に選んだのは消費者金融。しかも宇宙SFとの合わせ技というまさに「混ぜるな危険」な新作が、連作短編『スペース金融道』(河出書房新社・1,728円)だ。

 地球から17光年離れた惑星・二番街。「宇宙だろうと深海だろうと、核融合炉内だろうと零下一九〇度の惑星だろうと取り立てる」がモットーの新星金融の社員ケイジは、横暴だが有能な上司ユーセフに振り回される借金取りだ。しかも債務者は宇宙人やロボット程度ならまだマシな方。仮想空間内の人工生命やら人体内部のナノマシンなんて存在から取り立てねばならない。人間の常識なんてまるで通用しない相手との駆け引きの中で「金融取引が光速に近付くと相対性理論の影響を受けてブラックホール解が出現する」などなど、本気なのか冗談なのか、トンデモない理屈が次々に飛び出して、毎度毎度、大騒動が巻き起こる。精緻(せいち)な論理がウィットに富んだ笑いを生み出す、大変楽しいユーモアSFだ。

 「混ぜるな危険」な本と言えば、前野ひろみちのデビュー短編集『ランボー怒りの改新』(星海社FICTIONS・1,296円)もおすすめ。表題作はタイトル通りの内容で、飛鳥時代、泥沼化したベトナム戦争から帰ってきたランボーが、蘇我氏に対して怒りの改新を引き起こす。こう書くと意味不明だが、本当に20世紀ベトナムと7世紀の日本が平然と融合しているのだ。実際に読んで確かめてほしい。他にも、作家志望の青年と不思議な少女との邂逅(かいこう)を描く青春小説「満月と近鉄」など奈良をテーマに粒ぞろいの作品が並ぶ。奈良出身の作家森見登美彦が「悔しいが傑作と認めざるを得ない」と絶賛するこの作家は、一体何者なのか?

 いずれにせよ、気軽に読める短編集2冊、ぜひ一緒にお求め頂きたい。

(ライター)


 ▼プロフィール
 まえじま・さとし  82年生まれ。『セカイ系とは何か』


▲このページのTOPへ

 

朝日新聞 インフォメーション 通常版 ベルマーク版