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巨匠の続編で大胆デビュー 前島賢

筒城灯士郎著『ビアンカ・オーバーステップ』上下(星海社FICTIONS・1,458円)

筒城灯士郎著
『ビアンカ・オーバーステップ』上下
(星海社FICTIONS・各 1,458円)

 人気作品の続編やスピンオフが、原作者とは異なる書き手によって書かれることは、最近では珍しくなくなってきた。しかし、それが新人賞受賞作となると、なかなか例のない「事件」と言えそうである。星海社FICTIONS新人賞を受賞した筒城(とうじょう)灯士郎のデビュー作にして、筒井康隆の『ビアンカ・オーバースタディ』(角川文庫・691円)の続編、『ビアンカ・オーバーステップ』上下(各1,458円)がそれだ。

 「前作」「原作」である『オーバースタディ』は、2012年に日本文学の巨匠が77歳(当時)にして刊行したライトノベル。学校一の美少女ビアンカが男子生徒の体液を搾り取りながら生物実験にいそしむうちに未来人を巻き込んでの大騒動に発展するスラップスティックだが、この作品のあとがきで筒井は、続編の構想はあるが書く根気がないと言い、「『ビアンカ・オーバーステップ』というタイトルのアイディアがあるから、誰か続篇を書いてはくれまいか」と記していた。これを目にし「ほんまに書いてくるやつが現れたらウケるんちゃうかな」と思ったという筒城が、実際に書き上げて星海社の新人賞に投稿したのが本作『オーバーステップ』だ。それが星海社の編集長・太田克史以下編集部の目にとまり、なんと筒井の許可を得た上で刊行とデビューが決まったという。

 続編の主人公はビアンカの妹であるロッサ。天体観測の最中に消滅した姉を追って、時空を越えたSF冒険劇を展開する。エロありグロありと実にハチャメチャな展開が続くのだが、それは原作から受け継いだものに他ならない。一見、めちゃくちゃに見えて、すべて計算ずくというのが大変したたかだ。広げに広げまくった風呂敷をアクロバティックな論理でたたむ終盤の手つきは、筒井康隆だけでなく、山田正紀や神林長平といった作家も彷彿(ほうふつ)とさせ、日本SFの後継者とも言える書き手では、と思わされた。

 新人賞に続編を投稿する、という行為に出た著者の肝の太さも相当だが、編集長・太田と原作者・筒井の懐の深さが受賞の理由だろう。良くも悪くも話題のデビュー小説、いちはやく読んで頂きたい。

(ライター)


 ▼プロフィール
 まえじま・さとし  82年生まれ。『セカイ系とは何か』


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