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朝日新聞社: 好きな作家が特別授業!オーサービジット2016

 

20歳までに何を知るべき?
作家・森絵都さん@済美平成中等教育学校(愛媛)


作家・森絵都さん

 授業を行う図書室に作家の森絵都さんが大きな袋を抱えて入ってくると、生徒たちの目が輝いた。みんな本好きの図書委員。憧れの作家の言葉を聞き漏らすまいと、気合十分だ。

 学びのテーマは「20歳になる前に知っておくべきこと」。じつはこれは、森さんに来て欲しいと願って、図書委員たちが送った応募色紙に書かれていた森さんへの質問だった。中高一貫校で幅広い年齢の生徒が集うからこそ「今の自分が20歳になるまでに何を知るべきかを考えておくのは大事なこと。みんなで話し合いたい」と、森さんはこの質問にこたえたのだ。班に分かれ"知りたい課題"を挙げる共同作業が始まった。

 さて、何を知るべきか。森さんは袋から板状の紙を何枚も取り出し、ボードにペタペタ貼り始めた。紙には「職業」「人間関係」「政治経済」など、課題を探すヒントが手書きで記されている。それに触発されたのか、生徒たちの話し合いも活発に。瞬く間に各班、十数個の課題が出そろった。

 「原発」「地球環境」といった社会問題から「友だちの作り方」など身近な話題、中には「大富豪を射止めるには」などクスッと笑える課題まで様々だ。「短い時間でこれだけ出るなんて、常に社会にアンテナを張っている証拠」と、森さんは問題意識の高さに感心しきり。

 いよいよ授業の本題、班で一つ選んだ課題について自分の考えをエッセーや小説にまとめていく。「人生のパートナーの見つけ方」「SNSの利用法」……、「サギ師の見分け方」などというのもある。じつは最初から「書く」作業に入らず、みんなで「考える」ステップを踏んだのは森さんの計らいだ。一人で原稿用紙に臨む前に多くの意見を聞くことで、自分にはなかった視点に気づく。その気づきが考えを深め、書くきっかけとなる。

 実際に、生徒たちがペンを動かす手は速い。小説型、論文型と自由なスタイルで自分の思いを次々とつづってゆく。その姿を見た森さんは、最後にこう語りかけた。

 「みんなが難なく書けるのは、ふだん本を読んでいるから。他人の考え方を取り込んでいるので"想像力"があり、ピンチにも強い。これからも本を味方につけて人生の糧にしてね」

 20歳になる前に知っておくべきこと、その答えは本にある。森さんの言葉に、みんな大きくうなずいた。

(ライター・吉岡秀子 写真家・白谷達也)


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★ 授業を終えて ★

 ◆ 坂本歩美さん(2年)
 「意見を出し合うことで自分の考えがまとまった。今後、長い文章を書くときの参考になると思う」

 ◆ 田中健介さん(6年)
 「本を読む大切さに改めて気づく貴重な授業だった。受験のための勉強で終わらせず、本を通じて視野を広げたい」


 ◆ 森さん
 「生徒たちが幅広い分野に関心を持っていることに驚いた。
  情報に対する感度の良さは、さすが図書委員だとうれしくなりました」


 【済美平成中等教育学校】
 松山市、全校774人、窪田利定校長。授業を受けたのは1~6(中1~高3)年の図書委員42人。担当は玉井喜久子先生(昨年11月開催)。

 

★ 森絵都さんの本 ★

カラフル

『カラフル』        
[出版社] 文春文庫
[価 格] 583円

DIVE!! 上・下

『DIVE!! 上・下』
[出版社] 角川文庫
[価 格] 各596円

風に舞いあがるビニールシート

『風に舞いあがる
 ビニールシート 』     

[出版社] 文春文庫
[価 格] 605円

クラスメイツ

『クラスメイツ』(前期・後期)
[出版社] 偕成社
[価 格] 各1,404円

みかづき

『みかづき』     
[出版社] 集英社
[価 格] 1,998円

 

 

森絵都(作家)

森絵都(作家)


もり・えと 1968年東京都生まれ。著書に『つきのふね』(野間児童文芸賞。講談社)、『カラフル』(産経児童出版文化賞。文春文庫)、『DIVE!! 上・下』(小学館児童出版文化賞。角川文庫)、『風に舞いあがるビニールシート』(直木賞。文春文庫)、『クラスメイツ』(偕成社)など。大震災での原発事故後の福島の実話を元にした絵本『希望の牧場』(イラスト吉田尚令、岩崎書店)がある。ビジットでは「書くこと、想像することを一緒に楽しみましょう!」(森さん)。

 

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