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朝日新聞社: 好きな作家が特別授業!オーサービジット2014

 

読む子の年齢、まず考える
 翻訳家・福本友美子さん@名古屋市立緑高


 直訳すれば「好奇心の強いジョージ」(Curious George)も、翻訳家の福本友美子さんの手にかかると、日本の子どもたちにも広く愛されている絵本『おさるのジョージ』に変わる。「訳す時にまず考えるのは、本を手にする子どもたちの年齢です」

 授業に先駆けて生徒たちは、原作の英文と福本さんの日本語訳を読み比べ、翻訳のコツを探っていた。絵本の作者が読者の対象年齢を指定することはまずない。それだけに、福本さんの「絵の隅々にまで目を凝らし、何歳くらいから楽しめる本か考える」という解説が腑(ふ)に落ちたようだ。

 4人ひと組で翻訳に挑戦する。福本さんが用意した絵には、2軒の家の窓際で、「What is your name?」と尋ねる犬と、「My name is Nyao.」と答える猫が描かれている。

 たちまちワイワイガヤガヤ相談が始まり、「犬は身を乗り出していて積極的」「猫は窓を閉めたままで気どっている」……意見が飛び交う。発表も「おなまえなあに?」「ニャオっていうの」など、「読者の年齢や登場人物の設定をよく考えている」と、福本さんを感心させる訳が続いた。

 続いて、英文は同じで登場人物を変えた絵の訳。刀を手にすごむ侍のやりとりに、「この絵に『おなまえなあに?』は似合わないよね」。確かに!と笑いがはじけ、「おぬし何者だ」「せっしゃは○○と申す」など、時代や場面を考えた訳が挙がった。

 「原作が伝えたいことをできるだけ正確な日本語にするのが、翻訳の仕事」と福本さん。それには普段から多くの日本語に触れることだという。

 最後に福本さんは、年に一度は「日本に紹介する絵本を探しに」訪れるアメリカでの写真や、「刷り紙」と呼ばれる製本前の印刷を見せ、一冊の絵本も様々な職業の人との交流によって作られていると説明。将来の参考にと結んだ。

(ライター・安里麻理子 写真家・吉永考宏)

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★ 授業を終えて ★

 ◆ 長崎結愛(ゆうあ)さん(2年)
 「翻訳は頼まれてする、受け身の仕事という印象が、がらりと変わりました」

 ◆ 細谷しおりさん(2年)
 「図書委員は小学校での読み聞かせに力を入れているので、年齢を意識した言葉選びのお話が響きました」


 ◆ 福本さん
 「皆さんの訳がどれも巧みで驚きました。世の中にはいろいろな職業があり、どんな仕事も一人ではできないことを知ってもらえたらうれしいです」


 【名古屋市立緑高】
 名古屋市、全校1070人、山本俊一校長。1~3年の図書委員と有志の36人が授業を受けた。担当は杉山泉先生。

 


★ 福本友美子さんの本と翻訳した本 ★

世の中への扉 図書館のトリセツ

『世の中への扉 図書館のトリセツ』     
共著
[出版社] 講談社
[価 格] 1,296円

ないしょのかくれんぼ

『ないしょのかくれんぼ』
B・ドノフリオ著
[出版社] ほるぷ出版
[価 格] 1,728円


としょかんライオン

『としょかんライオン』           
M・ヌードセン著
[出版社] 岩崎書店
[価 格] 1,728円

アマンディーナ

『アマンディーナ』
S・ルッツィア著
[出版社] 光村教育図書
[価 格] 1,512円


りこうすぎた王子

『りこうすぎた王子』           
A・ラング著
[出版社] 岩波少年文庫
[価 格] 691円

 

 

福本友美子 (翻訳家)

福本友美子 (翻訳家)


ふくもと・ゆみこ 1951年生まれ。
図書館に勤めた後、児童書の研究、翻訳などで活躍。
「おさるのジョージ」シリーズ(岩波書店)、『としょかんライオン』『ないしょのおともだち』など訳書多数。

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