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朝日新聞社: 好きな作家が特別授業!オーサービジット2014

 

『「当たり前」通じない所へ』
 写真家・石川直樹さん@湯沢市立須川中(秋田)


 写真家の石川直樹さんの授業は、校歌の合唱による歓迎で始まった。須川中の生徒数は全校で20人。今年度いっぱいでの閉校が決まったこともあり、皆が心を一つにできる合唱に例年以上に力を入れている。

 「歌がうまいね。僕は音痴なので、みんなすごいなぁ」。石川さんの言葉に教室の空気が和んだ。

 極地やヒマラヤを旅してきた石川さん。冒険を志したのは中学時代だ。当時と同じ年ごろの生徒たちに世界の広さを伝えたいと、スライドとビデオを使って旅の思い出を語りはじめた。「当たり前だと思っていたことが通じない。文化が違えば常識も違う」

 南極の真っ白な平原にポツンと見える石川さんたち一行の姿。標高8848メートルのエベレストでは慎重さと大胆さ、体力の温存が登頂の成否と生死を分ける。過酷だが圧倒的な美しさを誇る大自然。スクリーンを見つめる生徒たちの瞳がきらきらと輝く。

 石川さんは、秋田県男鹿半島などの年中行事なまはげの写真も披露した。地域によってお面の形が違うこと。似た行事が日本海側の他県や沖縄にもあること。郷土独特と思っていた風習が広がりをもっていることに驚かされる。

 「17歳で初めて行った海外は怖くなかったですか」「死に直面したことは」「次に行きたい所は」。質疑応答では生徒たちから次々と手が挙がった。自分も石川さんのように知らない世界を見てみたい。そんな心の声が聞こえてくる。

 「驚くことは怖いことでもある。見慣れた場所にいるほうが楽だよね。でも、一歩踏み出す勇気をもって欲しい。いろんなものにアンテナを張り巡らせれば、生きていくことが楽しくなると思うよ」。来春、通い慣れた校舎を後にする生徒たちに、石川さんはエールを送った。

(ライター・角田奈穂子 写真家・石野明子)


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★ 授業を終えて ★

 ◆ 伊藤映里香さん(2年)
 「私と同じ年で一人旅に挑戦したと聞いて驚きました。私もパラグライダーや登山に挑戦してみたい」

 ◆ 金子颯馬(そうま)さん(3年)
 「南極や北極、富士山に行ってみたい。自分の中にいろいろな選択肢があることを教えてもらいました」


 ◆ 石川さん
 「来年から新しい世界へ踏み出す生徒たちなので、話が実感として伝わったようです。何事も自分の体で感じることを大切にして欲しい。どんな一歩を踏み出すのか、とても楽しみです」


 【湯沢市立須川中】
 秋田県湯沢市、全校20人、鈴木美津子校長。授業を受けたのは2年生5人と3年生12人。担当は赤平律子先生。

 


★ 石川直樹さんの本 ★

富士山にのぼる

『富士山にのぼる』           
[出版社] 教育画劇
[価 格] 1,404円




いま生きているという冒険

『いま生きているという冒険』
[出版社] イースト・プレス
[価 格] 1,512円


全ての装備を知恵に置き換えること

『全ての装備を知恵に置き換えること』  
[出版社] 集英社文庫
[価 格] 605円

バングラデシュ

『バングラデシュ』
[出版社] 偕成社
[価 格] 1,944円





国東半島

『国東半島』
[出版社] 青土社
[価 格] 5,400円

 

 

石川直樹 (写真家)

石川直樹 (写真家)


いしかわ・なおき 1977年生まれ。
2000年、地球縦断プロジェクトに参加し、北極~南極を人力踏破。
作品のテーマは旅。人類学などへも関心が深い。著書に『いま生きているという冒険』(イースト・プレス)など。

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