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朝日新聞社: 好きな作家が特別授業!オーサービジット2014

 

何かになりきって詩を書こう
 詩人・工藤直子さん@池田町立池田小(福井)


 池田小からの色紙には、子どもたちが学校になりきって作った詩が書かれていた。題名は「しあわせ」。「いつも一人でさみしくないかって?/一人じゃない 八十五人の仲間がいるんだ」と始まる。詩人の工藤直子さんはこの詩が気に入って教室にやってきた。

 「とてもすてきな詩だね。みんなの宝物だから、これからも大切にしてあげてください」と工藤さん。子どもたちの目が輝く。

 前日、池田町は大雪に見舞われた。雪に覆われた校庭を見た工藤さんは、生まれて初めて雪を見たときのことを話し始めた。台湾で生まれ育ち、戦後、日本に来て雪と出会った。やはり小学校の校庭だった。「夜になるとキラキラしてきれいだった。雪をひとすくい取ったら、あんまり軽くてびっくりしたよ」。雪国の子どもたちは幼い工藤さんの驚きを想像しながら、うっとりと耳を傾ける。

 現実に戻って、今度は工藤さんが次々と自作の詩を読む。「からすえいぞう」や「きりかぶさくぞう」、「あげはゆりこ」など、野原に住む生き物たちのつぶやきが、子どもたちの心をつかみ愉快に弾ませる。

 「自分が何かになって詩を書いていると、自然に生き物の気持ちがわかるよ。みんなも詩で遊んで」

 授業も終盤。「私はみんなと同じくらいの頃から、どんな用があってこの世に生まれたのか知りたかった」と語り、その思いを詩にした「あいたくて」を暗唱した。しーんと教室が静まり返る。まっすぐに工藤さんの顔を見つめる子、何かを考えてじっとうつむいている子、心なしか目が潤んでいる子もいる。

 6年生は春には中学生。新しい出会いを思い、最後に工藤さんは「また あいたくて」を読んだ。そして、「『こんにちは』があるように『さようなら』もあるね」という言葉を残して、教室を後にした。

(ライター・大平佐知子 写真家・石野明子)

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★ 授業を終えて ★

 ◆ 長谷川朋香(ともか)さん(6年)
 「直子さんは子どもの頃、雪を見ていなかったというのに驚きました」

 ◆ 谷美里さん(6年)
 「それぞれの詩に直子さんの思いがこもっているのが分かりました。もっと読んでみたくなりました」


 ◆ 工藤さん
 「小学校になりきって詩を書く。いいところに目を付けたと思います。詩は自分でも気がつかない気持ちが言葉になるのが面白いですね」


 【池田町立池田小(福井)】
 福井県池田町、堀口修一校長。全児童85人が授業を受けた。担当は山田智子先生。

 


★ 工藤直子さんの本 ★

のはらうた

『のはらうた』1~5     
[出版社] 童話屋
[価 格] 各1,350円

あっぱれのはらうた

『あっぱれのはらうた』
[出版社] 童話屋
[価 格] 1,944円


工藤直子詩集

『工藤直子詩集』           
[出版社] ハルキ文庫
[価 格] 734円

てつがくのライオン

『てつがくのライオン』
長新太絵
[出版社] 復刊ドットコム
[価 格] 1,728円


ともだちは海のにおい

『ともだちは海のにおい』  
長新太絵
[出版社] 理論社
[価 格] 1,296円

 

 

工藤直子 (詩人)

工藤直子 (詩人)


くどう・なおこ 1935年生まれ。
野原の花や動物たちの思いをつづった詩集「のはらうた」シリーズ(童話屋)が代表作。
85年、『ともだちは海のにおい』でサンケイ児童出版文化賞。2004年に巌谷小波文芸賞。

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