どくしょ応援団

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オーサー・ビジット

オーサー・ビジット校外編

◆本読み友達、広げよう 佐藤多佳子さん@福岡・ダーラヘスト・カフェ

 大好きな作家を囲んで読書会をする「中高生のための読書講座 オーサー・ビジット校外編」(主催・朝日新聞社、出版文化産業振興財団)。第2回は福岡市のカフェで開かれ、『一瞬の風になれ』などで人気の佐藤多佳子さんと、九州の各地から集まった中高生24人が語り合いました。


佐藤多佳子さんを囲み、お気に入りの場面について語り合う

 参加者はまず五つのグループに分かれ、佐藤さんの作品のなかで、自分の心にもっとも響いたフレーズを披露し合った。引用した人がいちばん多かったのは、『一瞬の風になれ』。高校陸上部を舞台にした青春スポーツ小説だ。

 「僕も陸上部員。『勝負は走る時だけじゃない。そこまでの全(すべ)ての時間、瞬間にランナー達(たち)はもう戦っているのだ』という部分を読み、試合だけじゃなく練習のときだって勝負なんだと感じました」「私は運動が苦手。でも、この作品を読んでスポーツっていいな、って」

 体育会系も文化系も、男子も女子も、大好きな一冊について心ゆくまで語り合う。初対面の緊張が薄れ、場がなごんでくると、登場人物の男子陸上部員の中でだれがいちばん好きか、という話題で盛り上がる女子たちの声も聞こえてきた。

 熱気冷めやらぬまま、後半へ。全員で佐藤さんを囲む質問コーナーだ。

 「なぜ陸上を書こうと思ったのですか」と聞かれた佐藤さんは、「スポーツが題材の小説って、スポーツそのものというより、人間模様を描く作品が多い。けれど、私は練習や試合を徹底的に描く、スポーツ漫画みたいな小説を書きたかった」と前置きし、こう続けた。

 「たとえばサッカーの試合だと同時に22人が動く。それを文字にするのは大変。でも、陸上のレースなら走っているときは1人だし、リレーでも4人ですむなあ、なんて」

 会場がどっとわいたところで、「陸上は、とても魅力あるスポーツ。特にリレーは、1本のバトンをつないでいくという部分にドラマを感じ、書きたいなと思ったんです」。

 生徒たちは、「作家」という仕事にも興味津々。「物語はどんなときに思いつくのですか」の問いに「ボーッとしているときに、ふと。浮かんだアイデアは、長いと20年や30年、平気で考え続けています」。人気作の『しゃべれども しゃべれども』『黄色い目の魚』もそうして生まれたと聞き、会場からは驚きと感嘆のため息がもれた。

 最後は、佐藤さんからみんなに質問。「読んだ本について、友達と話すことはある?」

 「気に入った本は友達にも読ませて語り合います。意外な反応があるとうれしい」「話すけど、意見が食い違うとケンカしちゃうことも……」。活発に読書を堪能している姿に、佐藤さんは感心しきりだ。

 「『好き』なものだけじゃなく、『嫌い』についても話せる友達がいるってステキなこと。これからも本読み友達をどんどん増やして、とことん本について語り合ってください」とエールを送った。

 (文・中津海麻子 写真・御堂義乗)

宮原裕明くん(中3)

「同じ作品のファン同士でも、人それぞれ感じ方が違っていて、とても新鮮でした」

野崎菜央さん(高1)

「意見交換することで本の世界が広がると実感。今回、思いっきりそれができる〈本読み友達〉が増えたので、これからが楽しみ」

山本和子さん(高3)

「佐藤さんの構想期間の長さにびっくり。そんなに長い間、気持ちが薄れないなんて、さすがだなと思いました」