どくしょ応援団

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オーサー・ビジット

オーサー・ビジット校外編

◆最後は挫折も生きる 森見登美彦さん@大阪市・スタンダードブックストア

 「中高生のための読書講座 オーサー・ビジット校外編」(主催・朝日新聞社、出版文化産業振興財団)の第3回は、『夜は短し歩けよ乙女』などで人気の作家、森見登美彦さんを迎え、大阪市の書店スタンダードブックストア内のカフェで開かれました。関西だけでなく、東京や岡山などからも集まった41人の中高生たちは八つの班に分かれ、読書会からスタート。後半は森見さんを囲んで、熱のこもった質疑応答が交わされました。


参加者の中高生を前に、緊張しながらも真剣に受け答えする森見さん

 高校生5人の班は、『夜は短し歩けよ乙女』の中から好きな文章を発表することに。

 富山県から参加した長谷川みちるさんのお気に入りは、主人公の男性が夜の京都でズボンと下着を奪われた後に口にする「薄暗い路地にて、下半身のただならぬ解放感にどぎまぎしていた私だ」というセリフ。その場面を思い浮かべたほかのメンバーもクスクス。「下ネタなのにおしゃれで、その上おもしろいってスゴイ」と、長谷川さんはほおを赤らめて話した。

 続いて大阪市の福山穂乃佳さんが「私は『おともだちパンチ』の部分。『堅く握った拳には愛がないけれども、おともだちパンチには』……」と読み始めると、「『愛がある』!」と大阪府吹田市から来た多田知央(ちひろ)さんが最後の言葉に声をそろえた。「すごーい!」「暗記してるんや〜」。みんなから感嘆の声があがった。

 会は後半の質疑応答へ。どんな子どもだったかと問われた森見さんは、「かわいくて愛想のいい子でした。でも、フワフワの栗毛が中学に入ったら突然くせ毛に。そのころから知らない人と話すのが苦手になり、なんだかおかしいなってきて」。会場がどっとわく。「ねじくれた気持ちが髪に現れたのかなぁ」とボソッとつぶやくと、さらに大きな笑いが起こった。

 森見作品には「猫ラーメン」「京大の詭弁(きべん)論部」「パンツ番長」など、摩訶(まか)不思議な人物や団体、事柄が、物語の垣根を超えてあちこちに出没する。若い愛読者たちは、それらが実在するのか、どんなふうに考え出しているのかがとにかく気になるようで、質問が集中した。

イベントの前半は各班に分かれての読書会。森見作品への思いを語り合った

 「京大出身の父が学生時代に通った『猫ラーメン』という屋台は猫でダシをとっていたとか。真偽は定かではありません」「父は弁論部でした。議論をする男たちを書く自信はないけれど、ひねくれたことばかり言う『詭弁論部』なら僕でも書けるかも、と思って」

 森見さんは「ネタ元」を明かし、「実は、友達や家族とくだらない話をしているときに見つけたアイデアの種みたいなものをふくらませ、登場人物やエピソードを作ることが多いんです」と打ち明けた。

 作家を目指す人も少なくない。「様々な経験が、たとえ挫折であっても、最終的に書くことに生かせたりする。遠回りに思えても、できるだけ色々な体験をしたほうがいい」。大好きな作家の一言一句を逃すまいと、中高生は真剣なまなざしでノートにペンを走らせていた。

 (文・中津海麻子 写真・御堂義乗)

立野真鈴(たてのまりん)さん(高1)

「くせ毛のエピソードに大爆笑。森見さんにも作品にも、今まで以上に親しみを感じました」

松岡大輔くん(高2)

「読書会で女の子の意見を聞き、同じ作品でも男の僕とは違う見方、感じ方があるんだと、新鮮な驚きがありました」

島崎まりんさん(中3)

「横浜から参加しました。最初は緊張したけれど、みんな本好きという共通点があったので、心から楽しめました」

森見登美彦さんの著書紹介
『夜は短し歩けよ乙女』
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