どくしょ応援団

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オーサー・ビジット

オーサー・ビジット校外編

◆背伸びした作品、挑戦を 万城目学さん@東京・ブックファースト新宿店

 「中高生のための読書講座 オーサー・ビジット校外編」(主催・朝日新聞社、出版文化産業振興財団)の第4回は、『鴨川ホルモー』『鹿男あをによし』などの青春ファンタジーで人気の作家、万城目(まきめ)学さんを迎え、東京・ブックファースト新宿店内のカフェで開かれました。六つの班に分かれた22人の中高生は、万城目作品の好きなフレーズを入り口に、その作品世界を語り合う読書会を行い、後半には万城目さんのトークセッションなどで、読書の楽しさを満喫しました。


グループに分かれて行われた読書会に加わり、議論に参加する万城目学さん(中央)

 サークルの同級生に一目ぼれした『鴨川ホルモー』の主人公の男子大学生は、人知れず失恋した上に、自分を振った女性とその彼氏との痴話ゲンカに巻き込まれるという踏んだりけったりの目にあう。しかし、物語終盤、主人公はこう宣言する。

 「許す――。(中略)俺(おれ)はすべてを許す。俺は空を見上げた。蒼天(そうてん)を胸いっぱい受け入れた」

 このくだりが好きという数藤光太郎くん(高3)は「寛大さに、同じ男として感動しました」。主人公は失恋後9日間、携帯の電源を切り、大学にも通わず「物忌み」する。「僕だったら1年ぐらい引きこもっちゃうかも」と数藤くんが告白すると、高田有梨子さん(高3)ら女子たちが「それ、ちょっとめんどくさい!」と切れ味よくつっこみ、テーブルは爆笑に包まれた。


 後半は万城目さんとの質疑応答の時間に。中高生の多くが気になっていたのが、『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』で、娘の「かのこ」の名の由来を父親が「鹿に言われたから」と語る場面。参加者たちはこのくだりを読んだとき、人間の言葉を操る鹿が奈良に赴任してきた男性教師を振り回す『鹿男あをによし』を連想したようだ。

 「かのこちゃんのお父さんは『鹿男……』の男性教師と同一人物なんですか?」の問いに、万城目さんはイエスもノーも言わず「わざとちゃんと書いてない」とポツリ。「全部書ききらずに読み手にある程度委ねる。そのほうが読む側は絶対に楽しいから」とも付け加えた。

 参加者からは変わった「お願い」も。『鴨川ホルモー』では、サークルの部員たちが極寒の真夜中に「ドライブウェイに春が来りゃ/イェ・イェ・イェ イェイイェイ」と歌いながら全身全霊で踊る「神聖な」儀式のシーンがある。女子生徒に「知らないので歌ってみてください」と頼まれた万城目さんは、「歌はちょっと……」としどろもどろになりながらも、曲はアパレル企業の古いCMソングだと解説した。

 若い読者との交流を満喫した万城目さんは、「中学生ぐらいだと理解できない本も多く、読書は決して簡単な作業じゃない。でも好きになれれば何十年と続く最高の娯楽になる」と話し、「今はその種まきの時期。スラスラ読める本もいいけど、少し背伸びをした作品にも挑戦してほしいですね。何年かたって読み直すと、わからなかったところもすごくよくわかる。それがまたうれしい」と笑顔を見せた。

 (文・中津海麻子 写真・吉永考宏)

鈴木朗くん(中3)

「万城目さんがサークルで体験したことがそのまま小説に使われているなんて、びっくりしました」

政谷薫さん(高1)

「前半の読書会は初対面の人ばかりだったけれど、本好きという共通項があったので、すぐに盛り上がりました」

八尾奈々子さん(高1)

「先の先を考えながら小説を組み立てていくことを、万城目さんがパズルゲーム〈ぷよぷよ〉の上達に例えたのが印象的でした」

万城目学さんの著書紹介
『鴨川ホルモー』
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角川文庫
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『鹿男あをによし』
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幻冬舎文庫
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『プリンセス・トヨトミ』
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文芸春秋
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『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』
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ちくまプリマー新書
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『ホルモー六景』
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角川書店
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