どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

オーサー・ビジット

オーサー・ビジット校外編

◆小説の中に自由な自分 川上弘美さん@イオンモールKYOTO内Kotoホール(京都)

グループ課題の結果発表をする川上さん

 『神様』は、三つ隣の部屋に越してきた「くま」と「わたし」が、散歩のようなハイキングのようなことをして親睦を深める不思議な物語だ。

 「くまと散歩って、ありえへん!」。女子高生のツッコミに、ある班ではどっと笑いが起こる。しかし、この作品を書いてから18年後の昨年、川上さんが手掛けた『神様2011』に話が及ぶと、みんなは少し改まった顔つきに。

 わたしとくまは同じように散歩に出る。でも、その道中では放射性物質の除染が始まっていた。川で取った魚は今度も干物にするが、くまは言う。「食べないにしても、記念に形だけでもと思って」

 大部分は同じ文章でつづられている二つの作品。だが、伝わってくる印象は大きくかけ離れている。女子中学生がつぶやいた。

 「私たちが二つの物語がまったく違う作品に感じたように、福島で原発事故にあった人たちには、きっと同じ風景が以前とは全然違って見えてるんやないかな」


 読書会に先駆けて、好きな登場人物のプロフィルを考える、という宿題が出ていた。終盤、川上さんはこんな追加の課題を出した。

 「みんなが経歴を考えた登場人物たちが、今朝からお昼過ぎまでどんなふうに過ごしてきたか。班ごとにストーリーを作ってみて」

 小4のさよと仄田(ほのだ)くんが不思議な夜の世界に迷い込み、冒険する『七夜物語』。料理上手の大ネズミ、グリクレルが食事会を開くという展開を考えた班では、さよたちに加え、夜の世界の館に咲く「野バラ」も招かれるという設定にした。「でも野バラは館から出るのが嫌だと招待を断ります」の発表に、「野バラを『登場人物』として見るなんて思いつかなかった」と川上さん。「植物に人格を持たせたり、ありえないことを考えたり、現実を疑ったりすることから小説は生まれる。しっかり作品になっていますね」

 質問タイムでは、創作のコツや秘密に迫ろうと次々に手が挙がった。「作家をしていてつらいことは」の問いに、川上さんは「ない」と即答。そしてこう続けた。「作家になる前は、いろんなことがうまくできず、いつも緊張していた。でも小説の中では自由に暴れることができる。どんな自分でもいいんだと思える。苦しさはあるけれど、それ以上の書く幸せを感じているんです」

 大好きな作家から直接聞く、小説を書くことのすてきな“効用”。参加者たちの想像力も、大いに刺激されたに違いない。

 (ライター・中津海麻子 写真家・桑原英文)

木下竣登(しゅんと)さん(高2)

「表現に行き詰まったとき、他の人の文章をまねしてみると新しい表現が見えてくるという話が印象的でした」

竹村佳那子さん(大1)

「人と一緒に本について語ることに少し違和感を感じていましたが、実際やってみると新しい視点が生まれました」

川上弘美さんの著書紹介
『神様』
出版社:
中公文庫
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『神様 2011』
出版社:
講談社
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『七夜物語(上)』
出版社:
朝日新聞出版
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¥1,890(税込)
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『七夜物語(下)』
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朝日新聞出版
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『どこから行っても遠い町』
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新潮文庫
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『真鶴』
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文春文庫
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