どくしょ応援団

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オーサー・ビジット

オーサー・ビジット校外編

◆相関図作り自分探ろう 冲方丁さん@東京堂書店神田神保町店内・東京堂ホール(東京)

 ときは江戸時代。囲碁衆として幕府に仕えながら、その境遇に飽き足らず、算術や星に魅せられ、やがて改暦の大命を受ける――。『天地明察』は、度重なる挫折を乗り越え、生涯をかけて「天」に挑んだ渋川春海の姿を描く長編時代小説だ。

 「何度失敗してもあきらめない春海ってすごいな」「うん、かっこいい」。瞳を輝かす男子中学生たちに、女子は「えんさんを始め、支えてくれる人がいたから頑張れたんだと思う」と相づちを打つ。「えん」は若い春海がほのかな恋心を抱いた女性で、不器用な春海を励まし続ける。すると、もう一人の女子がうっとりした表情で「やっぱ恋愛って大事だよね」。同じ物語でも、男子と女子では見える風景が少し違うようだ。

 読書会が進む中、冲方さんが「各班で登場人物の相関図を作ってみよう」と呼びかけた。「相関図って何?!」「どこから描き始めるの?」と戸惑う参加者たち。水戸光圀の苦悩と波乱の人生を描いた長編『光圀伝』を読んだ班は、登場人物が多い上に血縁などが複雑なため、四苦八苦だ。

 しかし30分後には「力作」が出そろった。『天地明察』組のある班は、登場人物の会話を抜き出して関係性を表現。北極星の高度から位置を測量する旅をともにした御典医、伊藤重孝の「頼みましたよ」、春海が「頼まれました」と返す短い会話から、世代や立場を超えた強い信頼関係を、えんにかける「私より先に、死なないでくれ」という言葉からは、つらい経験をした春海の切なる思いを読み取る。「単なる人間関係ではない『感情の相関図』で、これ自体が小説のプロットになっている。うまい!」と冲方さん。「どこかで使わせてもらっちゃおうかな」といたずらっぽくつぶやくと、どっと笑いが起きた。


 創作活動の秘密に迫ろうと質問も続々。「SF作品が多かったのに、なぜ時代小説を書こうと思ったのですか」という問いには「春海も光圀も、書きたいと思った人物がたまたま江戸時代の人だったから。近未来の人物ならばSFになる」とし、「あらゆる時代に通じる人間性や普遍性を描きながら、その時代独自の個性をとらえる。それが僕の理想」と語った。そして最後にはこんな「宿題」が。

 「みんなが挑戦した人物相関図は、物事を分類したり体系立てたりして理解することにとても役立つ。ぜひ自分自身の相関図を作ってみて。今の自分の姿、置かれている状況はもちろん、過去や将来も見えてくるはず」

 (ライター・中津海麻子 写真家・御堂 義乗)

広瀬龍太さん(中1)

「作品の中で疑問に感じていたことを、読書会で投げてみたら色んな意見をもらえた。読み返したくなりました」

菅野拓己さん(高3)

「『人間も物事も相対的に見ることが大事』という冲方さんの言葉が、強く印象に残りました」

冲方丁さんの著書紹介
『光圀伝』
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角川書店
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『天地明察(上)』
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角川文庫
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『天地明察(下)』
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角川文庫
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『黒い季節』
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『もらい泣き』
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『テスタメントシュピーゲル 1』
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