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池田清彦

「まじめで従順」の危うさ 池田清彦

 日本の自殺者は1998年以後急速に増加して、毎年3万人の大台を維持し続けている。自殺率は米国の2・1倍、英国の3・5倍(世界保健機関=WHO=のデータから)で、先進国では異常な高率だ。うつ病の患者も増加を続けており、いったい日本人の精神構造はどうなっているのだろうか。

 まじめだけれども不寛容な人がどんどん増加しているせいだ、と私は思う。少しでも悪いことを徹底的に排除しようとするあまり、社会も個人もかえって不健康になっているみたいだ。

 免疫学の世界的権威の一人、奥村康先生は『「まじめ」は寿命を縮める 「不良」長寿のすすめ』(宝島社新書)と題する本の中で、医者の健康管理と栄養指導に従ったまじめグループよりも、健康診断さえ受けない不良グループの方が病気にかかりにくく、長生きし、自殺も少なかった、とのフィンランドでの調査結果を紹介している。

 日本人はまじめすぎてガンになりやすいと先生は言う。ガン細胞をやっつけるNK細胞の活性は、まじめで従順な人より、ちょっと不良でよく笑う人の方が高いらしい。コレステロール値や血圧が少々高いからといって、薬で無理に下げるとかえって寿命を縮めるようだ。先生はタバコが肺ガンの「原因」だという説もあやしいと言う。先生の話を信じる限り、タバコよりもまじめの方が体に悪そうだ。

 室井尚さんは『タバコ狩り』(平凡社新書)で、ここ数年の間で急激に強くなったタバコバッシングの社会的背景を分析している。室井さんによれば、東京都新宿区のように区内全域を路上禁煙にしている国は、世界中でも日本くらいしかないそうだ。

 私はタバコを吸わないので、個人的に困ることはないが、タバコを吸う人が少数者になった途端に国を挙げてバッシングするのはやり過ぎだ、との室井さんの意見には賛成したい。

 それにしても、何であれ世間の風に従順で、それに逆らう少数派をみんなでいじめる、という日本人の感性はどこからきたのか。内田樹さんの『日本辺境論』(新潮新書)は、自分では世界標準を決して作ろうとせず、その時々で一番正しそうな風に乗り遅れまいとするのが、辺境人たる日本人の特性である、との仮説を駆使して、日本人の様々な行動パターンを分析して、なかなかスリリングだ。

 元来、ほどほどでも一向に困らない日本人が、時に、過度に排他的になるのはなぜか。この本をヒントに考えてみよう。

 (早稲田大学教授〈生物学〉)

『「まじめ」は寿命を縮める 「不良」長寿のすすめ』
著者:
奥村康
出版社:
宝島社新書
価格:
¥700(税込)
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『タバコ狩り』
著者:
室井尚
出版社:
平凡社新書
価格:
¥714(税込)
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『日本辺境論』
著者:
内田樹
出版社:
新潮新書
価格:
¥777(税込)
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