どくしょ応援団

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ブックサーフィン

十代、こんな本に出会った

杉山愛さん

『竜馬がゆく』『星の王子さま』 杉山愛さん

勝負師から「私」に戻る時間

 「テニスが好き、強くなりたい」の一心で突っ走っていた10代。正直なところ、たくさん本を読んだとは言えません。何しろ学校が終わると週に5日はテニススクールでしたし、14歳から海外遠征も始まりましたから。

 ただ、遠征に行くと、チームの先輩選手たちがよく本を回し読みしていたんです。中でも読書家だったのが遠藤愛(まな)選手で、朝食が済むとラウンジで何か読んでいた。声をかけると、「司馬遼太郎、面白いよ。読んでみる?」と。そういう流れで出会ったのが『竜馬がゆく』です。しかも、ページをめくった瞬間からのめりこんでしまった! 難しそうに見えて読みやすく、何よりも坂本竜馬のパーソナリティーにほれ込みました。

 やるぞという時の行動力、ちょんまげにはかま姿が当たり前という時代に、新しいスタイルを取り入れたフレキシビリティー、奥さんのおりょうさんへの愛情表現もステキで……好き勝手な竜馬像を描いていますが、それまで手が出なかった時代小説の扉を開けてくれた本でもあります。グランドスラムに参戦していましたから、18、19歳の頃でしょうか。

 現役時代の私にとって読書は、リラックスのひとつでした。好きな音楽をかけながらバスタブにつかって読む。「ガハハハ」と笑える本、群ようこさんや宮本輝さんの作品も好きでした。プロの世界は「結果を残してなんぼ」、感情を押し殺して勝負に徹する。でも、そういう自分とコートを離れた時の自分、このバランスを保つのが難しいんですね。当時は、勝負師・杉山愛から一人の人間に立ち戻るために読んでいた、というようなところがあるかもしれません。

<え・米田民穂>

 そういう意味で、10代の頃から今でも読んでいるサンテグジュペリの『星の王子さま』は、ピュアな気持ちを思い出させてくれる一冊です。私は「いつも心に真っ白な画用紙を用意していたい」と思っているんですね。偏見を持ちたくない、自分の物差しだけで判断したくない。『星の王子さま』は、何かに固執しそうになった自分をリセットしてくれる本です。

 今秋の引退セレモニーで、選手仲間が「愛という一人の人間の生き方に支えられた」というメッセージをくれました。なによりうれしかった! 本を読んで自分を取り戻し、どう生きていくかということに向き合ってきた時間は、やっぱり大切だったんでしょうね。

 (文・安里麻理子 写真・吉永考宏)

◆おすすめは

 本は自分を映す鏡ですね。疲れていると、つい癒やし系の本に手が伸びる。壁にぶち当たると、「他の人はどうやって乗り越えたんだろう?」という本が読みたくなる。私も現役時代に1度、自分のテニスを見失って、もがき苦しみました。そんな壁を感じた時の参考になりそうなのが、『イチローに学ぶ「天才」と言われる人間の共通点』(児玉光雄著、KAWADE夢文庫)。本屋さんへ行くと自分の精神状態が分かって面白いですよ。

 それから『あしながおじさん』(J・ウェブスター著、松本恵子訳、新潮文庫)は、中学生の頃に英語版で繰り返し読みました。こういう典型的なハッピーエンドストーリーもステキですよね!

取材協力:東京ベイコート倶楽部 ホテル&スパリゾート

すぎやま・あい  元プロテニス選手 1975年生まれ。自己最高ランキングは女子テニス協会のダブルス1位、シングルス8位。
『竜馬がゆく(全8巻)』
著者:
司馬遼太郎
出版社:
文春文庫
価格:
¥660(税込)
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『星の王子さま』
著者:
サン=テグジュペリ
訳:
内藤濯
出版社:
岩波少年文庫
価格:
¥672(税込)
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『イチローに学ぶ「天才」と言われる人間の共通点』
著者:
児玉光雄
出版社:
KAWADE夢文庫
価格:
¥500(税込)
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『あしながおじさん』
著者:
J・ウェブスター
訳:
松本恵子
出版社:
新潮文庫
価格:
¥420(税込)
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