どくしょ応援団

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十代、こんな本に出会った

『パパラギ』『もの食う人びと』 村治佳織さん

村治佳織さん

未知の世界、1対1で教えてくれる

 私にとって読書は、脳のごはん、栄養をつけてくれるもの。10代の好奇心を満たしてくれたのも本でした。

 本は、自分が体験できない世界のことも、直接会えない人のことも、一対一で教えてくれる。中学3年生の時、E・ショイルマンの『パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長(しゅうちょう)ツイアビの演説集』(ソフトバンク文庫)を読んで、そう実感しました。

 「西洋人=現代人」という視点から、文明社会に警鐘を鳴らした原著は、1920年初版。自然にそむいての繁栄がいかに危ういものか、1世紀近く前の人が警告していたことに驚きました。

 また高校生の頃、本屋さんで手にした辺見庸さんの『もの食う人びと』(角川文庫)も衝撃的でした。世界には、残飯を口にしてようやく生きる人がいる……。読まなければ知りえなかった現実です。

 ただ、今思えば、どこか羽目をはずせない、大人びた10代でした。2、3歳からギターに親しみ、中学生でデビュー後は毎年のようにCDを発表。恵まれていたものの、常に大人に囲まれながらの音楽活動で、自分の居場所を見失ったような感覚に陥ったことも。

<え・米田民穂>

 そういう時は図書館へ行って、週刊誌「アエラ」の「現代の肖像」シリーズを読みました。少し先を生きている人たちの人生に触れて、自分の芯を強くする。そんな意識が働いたかもしれません。

 そして19歳の時、クラシック・ギターの名教授、アルベルト・ポンセ先生に師事するため、パリのエコール・ノルマル音楽院に留学。ギターのルーツがあるヨーロッパで過ごした2年間は、私に大きな転機をもたらしました。

 日本での音楽活動を大切にしながら、ヨーロッパで暮らす道を考えよう……。「能動的に自分の人生を作っていきたい」と、考え始めたのです。

 実現するまで10年近くかかりましたが、実際にスペインで暮らしてみると、空気が乾燥しているからギターはよく鳴るし、何より居心地がいい! 人々は気さくで、楽しいことに目がなく、人生を謳歌(おうか)している。もうひとつの居場所を見つけた!という感じです。

 守られていた環境から一歩踏み出す時は、不安も伴うんですね。私の場合は、やっぱり本を開いて、先人たちの生き方をふり返りました。一対一で教えてくれる本は、これからも私の味方です。

 (文・安里麻理子 写真・吉永考宏)

◆おすすめは

 「きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ」という一文で始まる『ユルスナールの靴』(須賀敦子著、河出文庫・672円)は、小説家の金城一紀さんから紹介された本です。幸い私の場合はギターが〈靴〉になりましたが、何かと「自分の靴探し」を迫られる10代の背中を押してくれる一冊ではないでしょうか。

 また、20代で渡仏し、非常に濃い人生を送られている女優の岸恵子さんの『30年の物語』(講談社文庫・600円)もおすすめです。少し先を生きている方々のお話を読んでおくと、「私の選択はこれでいいのか」と迷った時の助けになる。頭にストックしておくといいですよ。

むらじ・かおり  1978年生まれ。92年、東京国際ギターコンクールで優勝。日本とスペインの半々生活。
『パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長(しゅうちょう)ツイアビの演説集』
著者:
エーリッヒ・ショイルマン
出版社:
ソフトバンク文庫
価格:
¥630(税込)
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『もの食う人びと』
著者:
辺見庸
出版社:
角川文庫
価格:
¥720(税込)
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『ユルスナールの靴』
著者:
須賀敦子
出版社:
河出文庫
価格:
¥672(税込)
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『30年の物語』
著者:
岸恵子
出版社:
講談社文庫
価格:
¥600(税込)
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