どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

ブックサーフィン

読むぞ! ホップ ステップ ジャンプ

池田清彦

学校が教えない大事なこと 池田清彦

 卒業式の季節になった。学校で学んだ知識は、社会に出て生活していくための基礎学力として役に立つことは間違いないが、学校では教えてくれない大事なこともある。

 榊原英資(さかきばらえいすけ)さんの『君たちは何のために学ぶのか』(文芸春秋)は、グローバリゼーション時代のプロフェッショナルの条件を説いてなかなか刺激的だ。榊原さんは自分の体験に基づいて、国際的に通用する人材になるための方途について極めて具体的に語っている。そういう生き方に憧(あこが)れる若者にとって、本書はとても役に立つだろう。

 この世界を貫く原理はマーケットである。稀少(きしょう)な能力は高く売れ、並の能力は買いたたかれる。従って、他人がまねのできない特技をもっていない人は、高収入を得ることができない。これがこの本の第一のメッセージである。なるべく若いうちに留学して異国の文化に触れて、英語のスキルを高め、世界で通用するスペシャリストになろう。そう言って榊原さんは若者にハッパをかける。

 しかし、人間の能力は様々で、すべての人が榊原的なスペシャリストになれるわけではない。秋山利輝さんの『丁稚(でっち)のすすめ』(幻冬舎)は、同じくスペシャリストを目指すにしても、別の道があることを教えてくれる本だ。秋山さんは家具作りのスペシャリスト。家具職人を養成するために丁稚制度を導入し、弟子を徹底的に鍛える。本書はその記録である。

 榊原さんが「空気を読むな、自己主張しろ」と言うのに対し秋山さんは「我を捨てて師匠に一切逆らわずに修業に励め」というわけだから、主張は百八十度反対である。丁稚の間は、男女とも丸刈り、起床は5時前、ケータイも恋愛も禁止というすさまじさである。それで一人前の職人になれば、榊原さんの言うマーケットでの勝者になれる。スペシャリストになる方法は人それぞれである。

 問題は、頑張っても(あるいは頑張りたくなくて)、マーケットの勝者になれない(むしろなれそうもない)人はどうするかである。

 竹田青嗣さんの『中学生からの哲学「超」入門』(ちくまプリマー新書)は、そんな人のための本だ。マーケットでの勝者になれるのは2割ぐらいの人間だけだ、と竹田さんは恐ろしくも本当のことを言う。マーケットで勝つことだけが至上の価値だとすると、8割の人は不幸になる。さてどうするか。本書は回答を教えてくれないが、回答への道筋は教えてくれる。

 (早稲田大学教授<生物学>)

『君たちは何のために学ぶのか』
著者:
榊原英資
出版社:
文芸春秋
価格:
¥1,350(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp

『丁稚のすすめ』
著者:
秋山利輝
出版社:
幻冬舎
価格:
¥1,470(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp

『中学生からの哲学「超」入門』
著者:
竹田青嗣
出版社:
ちくまプリマー新書
価格:
¥840(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp