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十代、こんな本に出会った

『きたかぜとたいよう』 書家・紫舟さん

紫舟さん

「太陽なら何て?」いつも想像

 イソップ童話の『きたかぜとたいよう』(西村書店など)は、子ども時代からずっと、とても好きなお話のひとつです。幼い頃この本を読み、「太陽のように温かくて大きな心は、人の気持ちをも動かすんだな」と、ボンヤリひとごとのように考えた記憶があります。それから十代になって繰り返しこの本のことを思い出し、いろんな場面で「こういう時、太陽なら何て言うだろう?」と、想像する自分がいました。

 そんなふうに、本に書かれた事柄を自らの問題として考えるようになって初めて、その本を「読んだ」ことになるのだと、今ではしみじみ思います。ですからこの本は、私にとってまぎれもなく「十代で出会った本」なんです。

 『竜馬がゆく』(司馬遼太郎著、文春文庫)も十代で読んだ本ですが、あの頃は竜馬さんの行動面ばかりに目がいっていました。それが大人になり、書家となって、NHK大河ドラマの題字を書くというお話から、あらためて伝記や小説を読み返したところ、どうしても自分の書で竜馬さんがのこした言葉を表したくなった。

 そこで誰に頼まれたわけでもなく、竜馬さんの言葉を筆で懸命にたどりました。この時、ようやく私は、同志や家族の思い、その悲しみまでも一身に背負うことにした、竜馬さんの人間としての器の大きさ、深さ、そして、その限りないやさしさが読めたのではないかと思います。

<え・米田民穂>

 「やさしさ」と言えば、小学校の教科書で読んだ、司馬遼太郎さんの「いたわり、他人の痛みを感じること、やさしさは、訓練をして身につけなければならないものだ」というメッセージは忘れられません。その頃の日常には「あの人、やさしいよね」といった会話があちこちにありましたし、やさしさとは生来身についているかそうでないかだと思っていました。でも私だって訓練すれば身につくのだ、と教えてくれたこの言葉は、今は『二十一世紀に生きる君たちへ』(世界文化社)で読み返すことができます。

 ところで、「読む」という行為には自信が持てなかった私ですが、人からすすめられた本には必ず目を通してきました。その人は、「あなたへの答えがここにあるかもしれないよ」と考えてすすめてくれるのでしょう。ですから、誰かに手渡された本は、ぜひ「読む」ことをおすすめします。

 (文・安里麻理子 写真・吉永考宏)

◆おすすめは

 人は誰しも、挫折や失望を味わうと迷路に入りこんでしまう。時には自分の箱に閉じこもり、鎖国状態に陥ることも。人生を変えたい、自分の人生を手に入れたい、そう願っている人に贈るとしたら、私は『自分の小さな「箱」から脱出する方法』(アービンジャー・インスティチュート著、大和書房・1680円)を選びます。

 また、文章で自分の思いを伝えたい時には、何よりも推敲(すいこう)が大切ということを、大江健三郎さんから学びました。『同じ年に生まれて』(大江健三郎・小沢征爾共著、中公文庫・580円)は対談なので読みやすく、大江さんの言葉の力を存分に受けとめることができると思います。

ししゅう  大学卒業後、会社勤務を経て書家に。NHK大河ドラマ「龍馬伝」の題字などを手がける。
『きたかぜとたいよう』
著者:
バーナデット・ワッツ
訳:
もきかずこ
出版社:
西村書店
価格:
¥1,365(税込)
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『竜馬がゆく(1〜8)』
著者:
司馬遼太郎
出版社:
文藝春秋
価格:
¥660(税込)
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『二十一世紀に生きる君たちへ』
著者:
司馬遼太郎
出版社:
世界文化社
価格:
¥1,260(税込)
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『自分の小さな「箱」から脱出する方法』
著者:
A・インスティトゥート
出版社:
大和書房
価格:
¥1,680(税込)
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『同じ年に生まれて』
共著:
大江健三郎・小沢征爾
出版社:
中央公論新社
価格:
¥580(税込)
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