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本田由紀

親子のごちゃごちゃを考える 本田由紀

 人間だれしも、生物学的な親がいなければ存在できませんし、多くの場合は両方あるいは片方の親と人生の初期を一緒に生活します。ところがなかなか、親と子の関係ってものは難しい。近くにいる時間が長いだけに、関係は良くも悪くも濃密になりがちです。また年齢や経済面を含むいろいろな力の差もあるだけに、親が子に及ぼす影響も相当なもの。逆に子どもの目からは親の限界も丸見えだったりして、でも自分のルーツでもありますから、じれったいような口惜しいような情けないような、ごちゃごちゃな気持ちやふるまいになることもある。

 湊(みなと)かなえさんは、そういう親子間のごちゃごちゃをグロテスクに描き出すのが上手です。映画にもなった『告白』(双葉文庫)もそうでしたが、新作の『夜行観覧車』(双葉社)でも、親からの期待に応えられない子どもの鬱屈(うっくつ)や、見栄(みえ)を子どもに投影する親のエゴがこれでもかと書かれていて、じぶんちのことを振り返る参照基準として格好です。

 よりデータに即して現代の親子関係がはらむ問題を浮き彫りにしているのが、精神科医の原田正文さんが書かれた『完璧(かんぺき)志向が子どもをつぶす』(ちくま新書)です。子どもに完璧を求める親、「いい子」を演じる子ども、どちらも結局苦しいことになってしまう現実を示した上で、原田さんは「100点中30点分くらいはどうでもいい」子育てと、親たちがそれぞれの子育てについてみんなで話し合える場を広げることを勧めます。どちらも、密閉された圧力釜みたいになりがちな親子関係から、ぷしゅーっと空気を抜いて楽になったほうがいいよっていう提案だと思います。

 他方で、「お前の好きなようにしていいよー」って言いながら目が笑っていないような親、あからさまに強制はしないけれど子どもが自分から親の敷いたレールの上を歩くように誘導する親が、時にどんな帰結をもたらすかをまざまざと指摘しているのが、『暴力は親に向かう』(二神能基、新潮文庫)です。怖いですけど。そして二神さんも原田さんと同様に、「家族をひらく」こと、子育てにたくさんの大人を巻き込むことを提唱します。

 これらの本を、自分で読むのもいいけれど、家の中の目につくところにさりげなく置いといてみましょう。親も読んでくれたら、そしてもし、ごちゃごちゃな日々の何かが変わったら、いいんだけどなあ。おせっかいですかね。

(東京大学教授・教育社会学)

『夜行観覧車』
著者:
湊かなえ
出版社:
双葉社
価格:
¥1,575(税込)
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『告白』
著者:
港かなえ
出版社:
双葉文庫
価格:
¥650(税込)
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『完璧志向が子どもをつぶす』
著者:
原田正文
出版社:
ちくま新書
価格:
¥777(税込)
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『暴力は親に向かう』
著者:
二神能基
出版社:
新潮文庫
価格:
¥580(税込)
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