どくしょ応援団

本を読もう。何を読もう? 迷ったら「どくしょ応援団」へ。親子で、ひとりで、夢中になれる本との出会いがここに!

ブックサーフィン

読むぞ! ホップ ステップ ジャンプ

本田由紀

動物を通して知る人間 本田由紀

 みなさん動物は好きですか?

 好きな人は多いでしょう。CMにも待ち受け画面にもカレンダーにも、可愛い動物の赤ちゃんや、珍しくて面白い動物がてんこ盛りですもんね。どうして人間はこんなに動物が気になるんでしょう。もしかしたらそれは、動物が人間にとって「物言わぬ他者」だからじゃないかと思います。動物には動物の言葉があるのかもしれませんが、とりあえず人間には理解不能ですから、「物言わぬ」ことにほぼ等しい。だからこそ、人間と動物との間には、時に言葉によって邪魔されない直接的な共感が生まれる瞬間もあります。

 幸田文さんの『幸田文 どうぶつ帖(ちょう)』(平凡社)には、飼われている動物と人間の感情的な交流や、動物園にいる動物への鋭い観察がちりばめられていて、人間と動物との良い関係についてのお手本になります。

 でも、動物が「物言わぬ」ことに乗じて、人間は自らのエゴによって彼らを踏みにじることもあります。気まぐれで飼い始める、世話をしきれなくなったり飽きたりして捨てる、捨てられた動物たちが生き延びようとしてその土地の生態系を壊してゆく、あるいは捕らえられてシステマティックに「殺処分」される、といった現象をぐいぐい記述しているのが、小林照幸『ボクたちに殺されるいのち』(河出書房新社)です。

 動物は人間にとって「他者」ですから、きれいごとの陰で、優位に立ちやすい人間によって冷酷な行為がなされることもある。それを直視した上で、人間と動物との真摯(しんし)な共存をどのように図ってゆけるかを、小林さんは問いかけています。

 また人間は「他者」であるはずの動物に対して、自分自身の醜い姿を投影することもあります。オーウェルの名著『動物農場』(岩波文庫など)で、人間を追い出して農場を占拠した動物の間に何が起こったか。豚たちが詭弁(きべん)を弄(ろう)して「下層動物」を支配し、その労働の産物を独り占めして敵であったはずの人間とも手を結び始める。すごくブラックで面白い寓話(ぐうわ)ですが、そんな役割を豚に与えてしまっていることは、豚に対して失礼な話でもあります。動物には種を保存する本能はあっても、このような邪悪さはないでしょう。

 人間が、「物言わぬ他者」たる動物を、どう扱いどう描くかということに、人間という種や、その中の個々人の本性が映し出されているのだと思います。私たちは、「他者」――それは動物に限りません――を通して、自分自身を知るのです。

 (東京大学教授〈教育社会学〉)

『幸田文どうぶつ帖』
著者:
幸田文
出版社:
平凡社
価格:
¥1,680(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp

『ボクたちに殺されるいのち』
著者:
小林照幸
出版社:
河出書房新社
価格:
¥1,200(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp

『動物農場』
著者:
ジョージ・オーウェル
出版社:
岩波文庫
価格:
¥588(税込)
この商品を購入するヘルプ
Amazon.co.jp