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本田由紀

そもそも恋愛とは何ぞや 本田由紀

 みなさーん、恋してますかーっ? 同性同士や二次元萌(も)えまで含めれば、多くの人にとって恋愛は、万葉のころから変わらない重大関心事です。恋愛に消極的な若者が急増中! とかいう調査結果が報道されるのも、社会にとっても恋愛が一つの機能として組み込まれていることの表れでしょう。

 そもそも恋愛とは何ぞや。特定の誰かや何かに強く心惹(ひ)かれるわけは永遠の謎です。だからこそ人間は、恋愛に絶対的な根拠を求めようとします。よしもとばななさんの『High and dry(はつ恋)』(文春文庫)では、他の人には見えない妖精や光が見えるふたりが恋に落ちます。「別々の人間がたまたまひとつになった、それは本当に美しく、ありえないはずの瞬間だったのだ」。不思議な力に導かれて運命の相手に出会う、そんな恋愛はまさに「ありえない」からこそ、夢見ちゃうんですかね。

 でも恋愛はそういう棚ボタみたいなもの(だけ)ではありません。精神障害とともに生きている人たちの恋愛を当事者が語った、浦河べてるの家『べてるの家の恋愛大研究』(大月書店)のパワフルさはすごい。「幻聴さん」にジャックされて相手を振り回す、実った恋をあえて壊す、ふたりでひきこもる等々のすったもんだエピソード満載ですが、それでも互いの「誤作動」と取っ組み合いながら自分も相手もメリメリと変わっていく恋愛は、何だか新鮮で、しかも懐かしい感じがします。

 まあ、それもそのはずで、現代の恋愛は、運命でも取っ組み合いでもなく、しばしば複数の相手たちとのあいまいで不安定な関係のプロセス自体を楽しむ行為になっていると、谷本奈穂さんは『恋愛の社会学』(青弓社)で指摘しています。誰とノリが合うのかを探し求めて迷ったり揺れたりすること自体が恋愛の神髄であって、最終的に誰かと「結ばれる」ことさえ必ずしもゴールとして目指されなくなっているのだそうです。谷本さんは、そのような恋愛はショッピングと同じ「ゼイタクな消費」であると喝破します。ゼイタクというのは、恋愛が多数派の特権になっており、そこに加われない人々も「目をそらせない」ようにさせる支配力をもっていることも意味しています。

 そういう「空気」に捕らわれすぎたらつまんなくね? って思います。大事なことは、自分以外の存在に自分を開けることなのかもって思えば、それが恋愛であろうとなかろうと、全然OKなんじゃないでしょうか。

 (東京大学教授 教育社会学)

『High and dry(はつ恋)』
著者:
吉本ばなな
出版社:
文春文庫
価格:
¥780(税込)
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『べてるの家の恋愛大研究』
著者:
浦河べてるの家
出版社:
大槻書店
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¥1,680(税込)
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『恋愛の社会学』
著者:
谷本奈穂
出版社:
青弓社
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