どくしょ応援団

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十代、こんな本に出会った

『青い鳥』『知と愛』 渡辺えりさん

渡辺えりさん

私が目指す芸術、教えてくれた

 小学生の頃から学芸会といえば脚本を書き、「えりちゃんの劇は面白い!」ってほめられ、おだてられて今に至る私です。高1にしてすでに「私が進むべき道は舞台芸術だ!」って思い込んでいたから、入部したての演劇部でずいぶん生意気な口もききました。

 私、当時「アングラ」って呼ばれてた、新しくて熱い演劇がしたかったんです。なのに、先輩たちがやっていたのは、「うちは女子校だから男役を出しとけばウケる」みたいな恋愛もの。山形育ちで、実際にはアングラは観(み)てなかったんですけど、新聞の劇評を読んで脳内劇場は妄想でいっぱいでしたから、「そんな発想じゃダメだ!」って、激論になって。「じゃあ、女子校でできる戯曲って何さ」と、東京のいろんな劇団に勢いで質問の手紙を出しまくったところ、ある劇団が教えてくれたのが、メーテルリンクの『青い鳥』(新潮文庫など)でした。

 読んでみたら、これが絶望的なお話でね。幼い兄妹の「おなかすいたね」で始まって、最後まで空腹がついて回るんです! ところがこの2人は、夢を見ておなかいっぱいにしていくんですね。私と同じだ!って思いました。人は貧しくても絵や芝居を見て幸せになれる、芸術は人生を満腹にする。そこに共感したし、初めて私に戯曲の構造を教えてくれたのもこの本でした。

中学の同級生と(前列右、本人提供)

 それからもう一冊、忘れられない本があります。高1の時、表紙に引かれて買った『知と愛』(ヘルマン・ヘッセ著、新潮文庫)。ずいぶん影響を受けました。

 私が読んだのは古い角川文庫版で、「ナルチスとゴルトムント」という副題がついてました。青年ナルチスは知の象徴、秩序や規律を重んじ聖職者になる。一方、愛に生きるゴルトムントは、純潔や服従を好まず彫刻家になる。同じ修道院に育ちながら正反対の道を歩んだ2人が再会し、そして――。お互いが片割れだったんだとか、人間は知と愛のどちらが欠けても生きていけないんだとか、考えるほどに泣けて泣けて……。

 男同士の話だけど、どこかエロチックで、芸術をめぐるやりとりも印象的でした。「芸術は君の人生に何をもたらしたのか」という問いに、「無常の克服でした。人間生活の道化芝居と死の舞踏から、何かが後に残って、永続する」ってゴルトムントが答えるとか。これだ、私が目指す芸術は!と、バイブルみたいに思ってました。

 こうしてみると、今の私の下地を作ったのは10代で読んだ本。本は読んでおくもんですね。

(聞き手・安里麻理子 写真・吉永考宏)

◆おすすめは

 爆撃で左腕を無くされた漫画家の水木しげるさん、徴兵忌避を試みた俳優の三國連太郎さんらの戦争体験がつづられた『昭和二十年夏、僕は兵士だった』(梯久美子著、角川書店・1785円)は、女優の小泉今日子さんに紹介され夢中で読みました。戦争の話は遠くなりましたが、こういう青春もあったのだと知っておいてください。

 『アルジャーノンに花束を』(ダニエル・キイス著、小尾芙佐訳、早川書房・861円)は、知的障害のある青年を手術で天才に生まれ変わらせた経過を描いたサイエンスフィクション。偏見や差別、称賛と孤独など、人間のあらゆる境遇を考えさせられて、泣けて仕方なかった。残酷で愛の濃い本です。

わたなべ・えり  劇作家・演出家・女優 1955年、山形県生まれ。「劇団3○○(さんじゅうまる)」時代の83年に『ゲゲゲのげ』で岸田戯曲賞。4月1日〜24日、東京で上演される「トップ・ガールズ」に出演。
『青い鳥』
著者:
メーテルリンク
出版社:
新潮文庫
価格:
¥420(税込)
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『知と愛』
著者:
ヘルマン・ヘッセ
出版社:
新潮文庫
価格:
¥660(税込)
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『昭和二十年夏、僕は兵士だった』
著者:
梯久美子
出版社:
角川書店
価格:
¥1,785(税込)
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『アルジャーノンに花束を』
著者:
ダニエル・キイス
訳:
小尾美佐
出版社:
早川書房
価格:
¥861(税込)
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