どくしょ応援団

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十代、こんな本に出会った

『はてしない物語』 バイオリニスト・宮本笑里さん

宮本笑里さん

がんばる主人公に自分重ねた

 中1の夏、オーボエ奏者だった父・宮本文昭の仕事の都合で、わが家はドイツに渡りました。私は英語ができないのにインターナショナルスクールに入学して、なかなか周囲になじめなかった。

 見かねた音楽の先生が、7歳のころから習っていたバイオリンを「みんなの前で弾いてみたら?」って。イタリアの作曲家ビターリの「シャコンヌ」を演奏すると、みんなが笑顔になって拍手してくれた。バイオリンを通して人とつながる幸せを感じたのはこの時です。

 とはいえ、ふだんは英語での授業についていくのに必死で、バイオリンの練習はしたりしなかったり。ある日、ついに父の堪忍袋の緒が切れました。「本気で練習する気持ちがないならやめなさい!」

 バイオリンを手放す――。みんなの笑顔を見た後で、その選択は考えられませんでした。かといって、学業もおろそかにできません。

 「勉強とバイオリンを両立させよう」。それからの私は友達の誘いも断り、学校から帰ると辞書を片手に5時間勉強、そしてバイオリンです。すると、真夜中であろうと突然、部屋のドアがバーン!と開いて、「今のところ、もう一度!」と父が現れる。おかげで毎晩、ベッドに入るのは午前3時ごろでした。

8歳のころ。本格的な練習は中学生になってから(本人提供)

 そんな慌ただしい毎日の中で、自分への「ごほうび」だったのが、読書です。

 『はてしない物語』(M・エンデ作、上田真而子(まにこ)・佐藤真理子訳、岩波少年文庫ほか)は、「1日4ページまで」と決めて、がんばる主人公の姿に自分を重ねながら、じっくりストーリーを味わいました。

 『ぼくらの七日間戦争』(宗田理(そうだおさむ)著、角川文庫ほか)で始まる『ぼくらの』シリーズは、クラスメートたちと遊べなかった分、冒険気分を思いっきり楽しみました。

 深夜の特訓は、帰国して私が音大の付属高に入ると自然消滅したのですが、自分を追い込むクセがついたのか、気がつけば1日に16時間練習していた、という時期も。努力の成果はすぐに出ないけれど、必ず未来の力になる。それを教えてくれたのが父であり、今も私を練習へと駆り立てる原動力になっています。

 (聞き手・安里麻理子 写真・吉永考宏)

◆おすすめは

 「歩行祭」という学校行事を舞台に、高校生の友情や秘められた人間関係をリアルに描いた『夜のピクニック』(恩田陸著、新潮文庫・660円)、将来への不安を支え合う大学生の日常を描いた『オレンジデイズ』(北川悦吏子著、角川文庫・620円)は、どちらも学生時代ならではの切なさが味わえて、前向きな気持ちになれます。

 そういうプラス思考の作品とは対照的に、人間の暗い一面をのぞき見るドキドキ感からはまってしまったのが乙一(おついち)さんです。短編集『ZOO』(集英社文庫・1巻480円・2巻440円)は、読み出したら止まりませんよ。

みやもと・えみり  1983年東京都生まれ。6月29日東京・サントリーホールでリサイタル。報道番組「NEWS ZERO」カルチャーキャスターも。
『はてしない物語(上)』
著者:
ミヒャエル・エンデ
出版社:
岩波少年文庫
価格:
¥756(税込)
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『ぼくらの七日間戦争』
著者:
宗田理
出版社:
角川文庫
価格:
¥580(税込)
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『夜のピクニック』
著者:
恩田陸
出版社:
新潮文庫
価格:
¥660(税込)
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『オレンジデイズ』
著者:
北川悦吏子
出版社:
角川文庫
価格:
¥620(税込)
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『ZOO』
著者:
乙一
出版社:
集英社文庫
価格:
¥480(税込)
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