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本田由紀

戦い方は人の数だけ 本田由紀

 「なぜ日本の若者は声をあげないのか」という問いを、最近よく目にします。確かに、ロンドンでもウォール街でも若者が格差社会にNO!を叫んでいるのに、日本ではそのような抗議運動が広がる様子はありません。勤労感謝の日の「就活ぶっこわせデモ」は健闘しましたが、もっともっと広がりが欲しかった。

 どうも昔の雰囲気とは違うようです。1985年刊行の宗田理『ぼくらの七日間戦争』(角川文庫)――初々しい宮沢りえさんが出演した映画が有名です――は、かつての学生運動世代が大人になって体制に順応している状況下で、彼らの子どもたちが親と学校に反逆するという内容です。でも、廃工場に立てこもるというその「戦い方」に対して、今の若い人なら、「はぁ? そんなことしてなんになるの」と言うのでは? それほどに、さめた現実主義が広がっているようにも見えます。

 でも考えてみれば、デモや立てこもりだけが戦いの方法ではありません。そんな派手さはなくとも、今の若者もすでに十二分に戦っているのかもしれない。たとえば、橋口昌治『若者の労働運動』(生活書院)で紹介されている若者たちのユニオン(個人で参加できる労働組合)では、自分たち自身の戦い方を模索しています。そこでは、職場の違法行為を正す交渉にとどまらず、引きこもり経験者を含む多様なアイデンティティーを持つ人たちが、互いを認め合いつつ生きる場所を作る試みが繰り広げられています。

 あるいは、フィルムアート社+プラクティカ・ネットワーク編『アートという戦場』(フィルムアート社)が描く、写真や映画、身体表現、社会起業など、広い意味での多種多様な「アート」も、新しい感性と行為のあり方を主張する、激しい戦いと考えられます。それらが人々に与えた揺さぶりは、波状に伝わって何かを変えてゆくのです。

 だから戦い方なんて、人々の数だけあるはず。周りを広く見渡したとき、あなたに宿る考え、あふれる感情……。そのベクトルを現実の世界へとまっすぐ差し込んでくれること、それがあなたの戦いなのです。

 (東京大学教授〈教育社会学〉)

『ぼくらの七日間戦争』
著者:
宗田理
出版社:
角川文庫
価格:
¥580(税込)
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『若者の労働運動』
著者:
橋口昌治
出版社:
生活書院
価格:
¥2,625(税込)
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『アートという戦場』
編:
フィルムアート社+プラクティカ・ネットワーク
出版社:
フィルムアート社
価格:
¥2,100(税込)
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