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本田由紀

中央・地方、依存の果て 本田由紀

 あなたはどこで生きていますか。ビルが立ち並ぶ都会? それとも田んぼを貫く国道に量販店と飲食店が点在する地方? どちらにしても、日々の生活環境にいびつさを感じ取っているのではないでしょうか。

 この国では、「中央」と「地方」の間には複雑な相互依存の歴史があります。高原基彰さんが『大震災後の社会学』(遠藤薫編著、講談社現代新書)の中で述べているように、戦後日本の「自民党型分配システム」は、公共投資による再分配を通じて、「自主性も、独自の創造性や生産性も必要とされない」地方を作り出しがちでした。それは、地方からの資源なしには成り立たない脆弱(ぜいじゃく)な中央と表裏一体の関係でした。近年の「地域主権」の推進も、振興のノウハウが足りないことによる「空虚なボトムアップ」にすぎない場合が多いと指摘されています。

 その果てに今の地方はどうなっているか。一方では、特に大震災後、地域共同体の「絆」がたたえられていますが、他方の極では、奥田英朗『無理』(文芸春秋)が露悪的に描きだす地方像も否定しがたいリアリティーをもっています。低調な経済や文化の隙間に、刹那(せつな)的な享楽、閉じた人間関係、怪しい商売が根を広げてゆく、空っぽな「ゆめの市」。「遠くに見えるドリームタウンの観覧車も、全体が灰色で、工場の重機か何かのように映った。(略)人工のショッピングモールには、文化など芽生えようがない」

 でも今私たちは、こうした状況で自分だけの生き残りを図ることにも、ただ無力感に打ちひしがれていることにも、うんざりし始めています。原発事故があらわにした中央と地方のゆがんだ関係に、改めてNOを掲げる動きも強まっています。

 「私たちはいま、静かに怒りを燃やす東北の鬼です」という武藤類子さんの叫び(『福島からあなたへ』大月書店)は、多くの人々の心を揺さぶるでしょう。地方が自信と誇りを取り戻すために、何が可能なのか。それは、たまたま今いる所が地方か中央かを問わず、ひとりひとりの人間の、生きる場との向き合い方を問うことに他なりません。

 (東京大学教授〈教育社会学〉)

『大震災後の社会学』
編著:
遠藤薫
出版社:
講談社現代新書
価格:
¥840(税込)
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『福島からあなたへ』
著者:
武藤類子
出版社:
大月書店
価格:
¥1,260(税込)
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『無理』
著者:
奥田英朗
出版社:
文芸春秋
価格:
¥1,995(税込)
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